著者
大矢 英世 大竹 美登利 天野 晴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.164-173, 2014-11-01 (Released:2017-11-17)
被引用文献数
1

The aim of this study is to shed light on the process whereby home economics education is introduced and established in boys' preparatory schools, and to suggest how improvements can be made in home economics education in these schools. Semi-structured interviews were carried out with ten home economics education teachers at boys' preparatory schools, and the data were analyzed using M-GTA (the modified grounded theory approach). The results are as follows; the departure point of the process of stabilizing home economics education in boys' preparatory school is the reality that the subject is considered "unacceptable". However, through the trial and error process of creating teaching materials and lessons in line with the actual situation of boys' school, and emphasizing the importance of home economics education, changes were noted with respect to students' attitude, cooperation of other teachers, and environment. More specifically, three factors are extracted. They are raising the awareness of pupils who are studying the subject, understanding and cooperation by teachers of other subjects, and improvements in the educational environment. Further, the circular nature of these three elements proved to be an important factor in establishing home economics education. Creating this flow may thus be regarded as enabling home economics education to obtain a sure footing.
著者
大竹 美登利 中山 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.148, 2011

目的:世界経済の急速な悪化によって、日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。そこで、2010年の家政学会では、収入階層が時間配分に与える影響について分析した。その結果、収入階層と時間量には一定の関係があったが、必ずしも収入が高いほど労働時間が長くならず、土日では収入階層が高いほど労働時間が短く家事時間や自由時間が長くなる傾向にあった。そこで今回は同様のデータを使用し、生活の質を規定すると考えられる余暇活動の内容が収入階層によって相違するかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。<BR>方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、収入階層による相違を分析した。<BR>結果:収入階層による時間量の相違が明らかになった夫妻と子どもの世帯で、収入階層別に、夫妻のインターネットの利用、学習研究活動、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行の余暇活動の頻度を分析したところ、どの活動においても、収入階層が高いほど頻度が高くなる傾向にあり、特に妻パート世帯ではその傾向が明らかとなった。そこで、夫婦と子どもの妻パート世帯の高校生を同様に分析した結果、親と同様に、収入階層が高いほど様々な余暇活動が活発に行われていた。逆に言えば、親世代の社会的文化的貧困さが、子ども世代にも再生産されていることが明らかとなった。
著者
桑田 百代 伊藤 セツ 大竹 美登利
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.446-449, 1977-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

以上, 疲労自覚症状調査を生活時間とのかかわりで検討してきたが, 生活時間の上からみても, 共働き家庭では妻の労働負担によって家庭が維持されており, それは集約的に疲労の自覚症状となって反映されている.特に乳幼児をかかえた共働き妻は平均年齢がいちばん若いにもかかわらずとびぬけて疲労訴え率が高いが, これはその妻の生活時間構造にみあうものである.平日の訴え率は高い順に共働き妻, 夫, 非共働き夫, 妻で, この傾向は1967, 1971, 1975年の3回にわたる調査で同じである.全労働時間においても, 稲葉らの第1回の調査時点から, 共働き妻がいちばん多いことは変わらず, 19年を経過しても, 共働き妻は収入労働に家事労働の時間的負担が加わって, 疲れきった毎日を送っていることがわかる.各群の訴え率は, 平日, 休日とも3回の調査を通じてA>C>B型であるが, 共働き妻のA群の訴え率は回を重ねるごとに朝夕の差が大きくなっている.また, 自律神経失調症状を表わすといわれるC群は, 平日, 休日とも朝夕の訴え率が増加している.
著者
鄭 暁静 大竹 美登利
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.95-104, 2018

<p>  Currently, in Japan and Korea, family characteristics and values are undergoing diversification. This is thought to affect students' attitudes toward family and home life. Accordingly, it is necessary to incorporate this situation into the teaching of home economics, in which students study the family and home life. </p><p>  Therefore, in this study, we conducted a questionnaire survey of high school students in Japan and Korea to clarify the structure of learning about gender equality in home economics education and how gender roles are influenced. </p><p>  It was discovered that, the greater the effect of learning about gender equality in home economics education, the more the students are faithful to school life, the more they emphasize the stability of life and work in the future, and the more they highlight the relationship between married couples in both countries. Furthermore, it became apparent that this consciousness has an influence on Japanese male students in that they take a positive stance about women's social participation.</p>
著者
中野 葉子 大竹 美登利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.34, 2006

<br><b>【目的】</b><br> 実験・実習などの体験的学習が多い被服や食物の領域に比べ、家庭経営領域は、生徒の関心が薄く、学習意欲も低い。現在は「家庭基礎」2単位を洗濯する学校も多く、家庭科の授業時数は少ない。そこで、生徒が興味関心を持って、楽しみながら短時間で学習でき、多様な学校での実施が可能な「生活設計ゲーム」を開発し、授業実践を行って、そのゲームから生徒が学ぶ内容を明らかにすることを研究の目的とした。<br><b>【新たな教材の開発】</b><br> 本研究では、「仮想生活ゲーム」(社団法人損害保険協会)のゲームを基にして、「生活設計ゲーム」を開発した。「仮想生活ゲーム」は、夫妻と2人の子どもの4人家族に設定され、生活の中でのリスクを体験しながら、そのリスク回避のために損害保険に入ることが有効であるとの認識が得やすいゲームとなっていた。大変わかりやすい教材であったが、損害保険に特化しているので、家族や就労、生活スタイルの相違によって、収入や支出が多様であり、また、生活のリスク回避として、様々な社会保障のしくみがあることなど、より総合的な生活運営の仕組みを学べるゲームを開発したいと考えた。<br> そこで、プリテストをしながら、「仮想生活ゲーム」を改良し「生活設計ゲーム」を完成させた。改良の主な点は、(1)多様な家族構成・就労形態の7つの家族パターンの設定および決め方、(2)家計費目毎の予算を立てやすいように選択肢を設定、(3)あらゆる計算を簡単に、(4)見やすいプリント冊子の作成、(5)イベント内容の精査、(6)言葉表現を簡単でわかりやすく、(6)2時間で実施可能なこと、(7)おみくじカードなどの教材キットの工夫である。<br><b>【本ゲームで生徒が学ぶ内容の検証】</b><br><b>1.方法:</b>都立5校(普通科3校、職業科2校)で「生活設計ゲーム」を実践し、その前後に、(1)家族に関する意識、(2)就業形態の指向、(3)生活設計への興味関心、(4)社会保障・資産の優先順位、(5)家庭経営の学習意欲、(6)ゲームの感想に関するワークシートを記入してもらい、このデータを分析した。<br><b>2.結果:</b>ゲーム実施によって(1)「家族に関する意識」は子どもを持つことへの負荷を感じるものが増加し、(2)常勤を希望する生徒が増加し、逆に、フリーターに対するプラスイメージが減少し、大変さを認識する生徒が増えた。(3)社会保障・資産に関しては貯金や社会保険、生命保険への期待が高まり、(4)「生活設計への興味関心」は増加し、(5)「家庭経営領域の内容」については、「正社員とフリー他の違い」「社会保障制度」「子育てに関するサービスやそれにかかる費用」などに関しての学習意欲が高まった。性別、学科別による相違は少なかったが、自分が取り組んだ家族パターンによって生徒の感想に相違があった。すなわち、一人暮らしやDINKSの家族だった生徒は子どもは居た方が良いという記述が、子どものいる家族であった生徒は預貯金の大切さに関する記述が、子どもの居ない家族であった生徒は保険や社会保障の大切さに関するの記述が多かった。<br><b>【まとめと今後の課題】</b><br> 将来の「家族に関する意識」では結婚願望が増加し、「就労形態について」では常勤志向が高まり、「社会保障・資産の優先順位」では社会保障を大切と思うものが増え、「生活設計への興味関心」は高まった。また「家庭経営領域」に対する学習意欲も向上した。「学科」「実施方法」によってこれらの傾向に相違は少ないことから、汎用性のあるゲームといえよう。なお、ゲームのなかで、就労形態や社会保障の種類と内容などを適宜説明する必要があり、これが、労働や社会保障の理解を促すが、一方で、教員がそれらを十分理解している必要もあり、教員向けの詳しいマニュアルの作成が今後の課題として残された。
著者
林 隆子 川端 博子 石川 尚子 大久保 みたみ 大関 政康 大竹 美登利 唐沢 恵子 斉藤 浩子 高崎 禎子 武田 紀久子 山形 昭衛
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.361-369, 1992

高齢者を対象とする日常着についての調査より, 高齢者の衣服の着方について以下のような特徴がみられた.<BR>(1) 男性は, 上半身に肌着シャツ, 外衣シャツ, ジャケットかジャンパーの着用が一般的であるが, 5・6月ごろの気温の変化には, 肌着シャツの重ね着で対応していることがわかった.下半身には, パンツ, ズボン下にズボンを着用している.<BR>(2) 女性は, 上半身に肌着シャツ, ブラウス, セーター類を着用している例が最も多かった.上半身用衣服には前あき型で七分袖のものが多く, 肌着シャツの重ね着は男子と同様であった.また, 下半身には, パンツ, 長パンツやズボン下そしてズボンかスカートを着用している.夏に向けてスカート・ワンピースの着用が増すが, パンツ類の着用は依然として多く, 足腰の冷えと着衣の関連性をうかがわせる結果であった.また, 服種は男性のものにくらべ女性のほうが多い.<BR>(3) 高齢者用衣服の素材には, 下着類に綿, 外衣に化学繊維が多く使用され, 天然繊維を志向する若者と対照的である.素材に関する知識は一般に低かった.<BR>(4) 着衣の種類より推定した衣服の熱抵抗と衣服重量より, 高齢者は, 若者にくらべ厚着の傾向がみられるが, 衣服の着方に個人差が大きい.<BR>以上の結果より, 高齢者のよりよい衣生活をめざして次のような点が望まれる.<BR>服種の多様化 : 高齢者の日常着の種類をみるとき, 男性では, ジャケットやジャンパーの着用が多い.それにくらべて女性はカジュアルなセーター類の着用が多い.男性は, 習慣的に外出用としてこの種の衣服を着用していると考えられるが, 家庭内ばかりでなく近所等に出かけるときにも, 軽量で伸縮性に富む衣服の着用が勧められる.女性については, 若年者にくらべ衣服の種類が少ないが, 夏になるとスカートやワンピースの着用者も増えるなどおしゃれに無関心でないことが推察される.そこで, ファッション性を取り入れた衣服の供給が望まれる.たとえばキュロットスカートなどは活動がしやすい衣服の例として考えられる.<BR>衣服の着方と形・素材の工夫 : 男女とも, 体温調節のため厚着傾向の人が多数を占めていたが, 少ない枚数でも重ね着をすると同効果が得られるような衣服, とくに下着類の充実が求められる.すなわち, 腰, ひざやひじの冷えを防ぐよう局所的に厚手のものにするなど構成と形の工夫, 熱抵抗性の高い布素材の利用, また, 重ね着をしても活動に支障をきたさないような伸縮性素材の使用などが考えられる.一方で着衣の量に個人差が大きいことから, 季節を問わず, 保温性の高いものから低いものまで多種多様な衣服の供給が望まれる.<BR>表示の改善 : 素材についての知識は一般に低いので, 組成や洗濯表示を見やすく, わかりやすい大きさで表示されるよう改善を促す必要がある.
著者
青木 幸子 大竹 美登利 長田 光子 神山 久美 齋藤 美保子 田中 由美子 坪内 恭子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<br><br><目的><br>&nbsp;&nbsp; 2008年は「子どもの貧困元年」であるといわれる。それは子どもの貧困問題に関する政策論議が具体化したことに由来する。翌2009年の厚生労働省の調査によれば、子どもの貧困率は15.7%であり、約6人に1人の割合で貧困状態にあることが明らかになった。これはOECD調査においても「相対的貧困率」が加盟国34カ国中29位(ワースト6位)、「子どもの貧困率」は25位(ワースト10位)、「一人親家庭の子どもの貧困率」は33位(ワースト2位)という深刻な事態にあることを認識させた。さらに厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査の概況」によれば子どもの貧困率は16.3%を示し、確実に格差が拡大していく傾向を窺わせている。<br>&nbsp;&nbsp; 子どもの貧困は、学習面や心身の発達に影響を及ぼし、加えて経済的な理由から友人と同じ行動が取れないなど友人関係にもひずみをきたし、不登校や引きこもりの原因になっているともいわれている。また、経済的な理由から進学をあきらめざるを得ない者もおり、更なる格差を生み出す土壌ともなっている。このように現下の社会・経済状態は、貧困の連鎖を断ち切る抜本的な政策が求められている。<br>&nbsp;&nbsp; この政策のひとつに学校教育への期待がある。学校教育の一教科として生活の自立と共生を目標とする家庭科においては、生徒が貧困の連鎖について理解し、自己責任ではまかないきれない連鎖の経路を断ち切り、自らの人生を自己選択することができる力を育成するなど、たくましく生きる力を育んでいかなければならない。<br>&nbsp;&nbsp; そこで本研究では、貧困に対する理解、貧困に陥らないための知識と方法、不測の事態に備える力など、生活を創る主体としてたくましく生き抜く力を育てる家庭科の学習内容について提案することを最終目的に、まず高校生の生活実態や福祉制度への理解、将来の生活への意識を把握することを目的とする。<br><br><方法><br>1.&nbsp;調査の方法<br>調査対象;都立高等学校6校、有効回収数406票<br>調査時期;2015年1~3月<br>調査方法;家庭科教員に調査票の配布、回収を依頼した。<br>2.&nbsp;分析方法<br>調査対象校を4年生大学進学率の傾向の違いにより3群に分類し(80%以上をA群、21~79%をB群、20%以下をC群)、分析した。<br><br><結果と考察><br>1.&nbsp;&nbsp;高校生の日常生活の特徴として看過できない実態は、欠食率、栄養バランス、家庭の食卓状況の3点である。なかでもC群の欠食率がもっとも高く、とくに果物の摂取不足は80%以上であり、それは手作りの食事の摂取状況とも関連している。<br>2. アルバイトの経験については、アルバイトを禁止している学校がある一方で、アルバイトに精を出さざるをない状況の生徒もいる。とくにC群の生徒にアルバイト経験者が多い。<br>3. 授業以外の学習時間にも3群間には大きな差があり、通塾率との関連が推測される。また、ボランティア活動や地域での活動、家事手伝いについては3群間に顕著な差はなく、消極的な関与実態が明らかになった。<br>4.&nbsp;生活上のリスク管理に必要な福祉制度の項目に関しても、総体的に理解不足である。しかし、困難を克服し、希望は叶えられるとする将来の生活への見通しについてはおおむね肯定的に捉えている。 <br>5.&nbsp;以上の結果から、3群間での生徒の実態と意識を比較すると、C群の生徒に欠食率、アルバイト経験率が高く、将来の生活への経済的・職業的不安が強い傾向が明らかになった。
著者
遠田 瑞穂 吉野 真弓 佐藤 麻子 大竹 美登利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.117-126, 2001
参考文献数
15

Several industrial arts and home economics textbooks in junior high school have been analyzed as to text, illustrations, photos and charts. Their expressions have been discussed with gender perspectives. Only home economics area has been analyzed and it was divided into 5 sections home life, nutrition, clothing, housing and nursing. Each section was divided into subgroups ; cover, back cover, frontispiece and so on. Summary of the results is shown as follows, 1. There are little expressions in the text that are recognized to be gender biased. 2. Illustration and photos have gender biased ones regarding roles for each gender, particularly in home life area. Gender biased expressions were also observed in covers and frontispieces, in terms of colors. 3. It seemed characteristic that some photos have gender biased expressions that are typically seen in society.
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 坂田 隆 山崎 泰央 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.288, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 東日本大震災では、多くの被災者が仮設住宅への転居を余儀なくされた。本研究は、仮設住宅への転居が住民の食生活に与えた影響を明らかにすることを目的とした。方法 震災後、石巻市市街地の仮設住宅に入居した60代女性(食生活改善推進員、震災前は同市雄勝地区)を対象に、震災前後の食生活(料理の種類、保存食、食事形態)について聞き取り調査を行う(2015年3、9、12月)とともに料理の画像記録を依頼した。結果 震災前に比べ、仮設住宅での料理の種類の減少や食事形態に変化が見られた。その原因として、1.地元で採(獲)れた大豆や米から味噌、柿やハモの乾物等の保存食を作り、これを利用して柿なますや雑煮等の郷土料理が作られていたが、食材の入手・保存場所の確保が困難になり、保存食を作ることが少なくなった。2.台所が狭くなり、保管・使用にスペースが必要な蒸し器やすり鉢を使う料理が減った。3.食卓が狭くなり、食器の種類や数も減ったため料理の盛り付けは銘々盛りから大皿盛りへと変化した。日常的に行われてきた食生活が震災を機に失われつつある。石巻の気候・風土を反映する多くの食材を活用した料理を記録として残し、継承していくことが求められている。本研究はJSHE生活研究プロジェクトの活動として実施し、科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成26年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。
著者
大森 和子 加藤 悦 伊藤 セッ 大竹 美登利 好本 照子 阿部 和子 天野 寛子 宮崎 英子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.206-212, 1979-02-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

The purpose of this paper is to analyze the present state of the managerial housework on food, clothing, housing, and childcare, and to clarify wives overall evaluation of housework. The results of analysis were as follows : 1) 65% of wives went shopping for food everyday, because it is their daily routine.2) Husbands of most wives helped with some housework, like making the bed, shopping for food and so forth. Husbands of employed wives helped more then those of non-employed wives.3) Though many wives valued housework highly, they thought that employment and hobbies were also important. Wives who valued housework very highly believed that children under three years old should be brought up by their mothers.
著者
大竹 美登利 中山 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.148, 2011 (Released:2011-09-03)

目的:世界経済の急速な悪化によって、日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。そこで、2010年の家政学会では、収入階層が時間配分に与える影響について分析した。その結果、収入階層と時間量には一定の関係があったが、必ずしも収入が高いほど労働時間が長くならず、土日では収入階層が高いほど労働時間が短く家事時間や自由時間が長くなる傾向にあった。そこで今回は同様のデータを使用し、生活の質を規定すると考えられる余暇活動の内容が収入階層によって相違するかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。 方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、収入階層による相違を分析した。 結果:収入階層による時間量の相違が明らかになった夫妻と子どもの世帯で、収入階層別に、夫妻のインターネットの利用、学習研究活動、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行の余暇活動の頻度を分析したところ、どの活動においても、収入階層が高いほど頻度が高くなる傾向にあり、特に妻パート世帯ではその傾向が明らかとなった。そこで、夫婦と子どもの妻パート世帯の高校生を同様に分析した結果、親と同様に、収入階層が高いほど様々な余暇活動が活発に行われていた。逆に言えば、親世代の社会的文化的貧困さが、子ども世代にも再生産されていることが明らかとなった。
著者
小野 恭子 大竹 美登利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.25, 2009

〔目的〕商品経済が発展した今日、多重債務などの金融に関連する諸問題は、私たちに身近な生活問題となっている。そうした商品経済社会や金融経済社会は子どもたちにとっても遠い存在ではなく、カードや携帯電話やインターネットなどの普及により、知らずに金融商品を利用していることも多い。そうした現代では、子どもたちが主体的な経済生活を行うために、金融知識の学習や、実践力を身につけることが求められていると言えよう。多重債務などの消費者被害に巻き込まれる第1の要因は、必要最低生活費が保証されないことである。すなわち、生活の経済的な側面を主体的に営むためには、生活費の意味や構造を学ぶことが必要と考える。家庭科では、経済に関する学習として、これまで消費者教育を基軸に据え、消費者被害にあわないため、あるいは巻き込まれた場合の対処方法を学習するノウハウを学習することが多かった。そこで本研究では収支バランスを取り上げ、生活費の構造を学ぶこととした。 今回は、子どもたちも関心が高く、選択幅と金額幅が大きい衣服の購入を教材とした。その際、子どもたちが身近で具体化できる題材として、今度行く移動教室でのハイキング場面で着用する衣服を選び、各人が必要とした購入金額合計額から、被服費が高い場合低い場合によって、食費や娯楽費などの他の費目の金額を節約したりする必要があることを確認し、生活費には収支バランスがあることを学ぶ授業を展開した。〔方法〕1.授業展開 小学校5年生1クラス(男子19名・女子20名)を対象に、2008年7月に行った。授業の流れは、_丸1_移動教室に持っていた服を振り返り、良かった所と改善できるところを考え、ワークシートに記入する。_丸2_各班に1セットずつ用意されている長袖メリヤスシャツ、長ズボン、レインウェアー、それぞれ価格・機能・デザインがそれぞれ異なる3種ずつ、計9種のカードから、それぞれ1枚、3種選択する。_丸3_選択した理由とその合計金額をワークシートに記入する。_丸4_ある生活費の例を提示し、被服費が増加すると食費、娯楽費などの他の支出を減少させなくては、収支のバランスがとれないことを確認する。_丸5_購入を決定した服の購入金額を3パターンに分け、金額が高い場合と低い場合によって、外食や遊園地などに行ける回数といった子どもたちに身近に感じられる具体的な食生活と娯楽内容3パターンを示したプリントを提示し、金額の増減の具体的イメージを確認した。_丸6_授業全体の感想を、ワークシートに記入する2.分析データ ワークシートの記入内容と、授業を記録したビデオの児童の発言や呟きをおこしたプロトコルから、児童の学びの内容を分析した。〔結果〕1.服を選択した理由として、男子は「デザイン」を女子は「活動的機能」を最も多く挙げていた。各班で、自分と友だちの選択理由を確認したその結果、自分はあげておらず友だちがあげていたものは「価格」であるとする児童が38%と最も多く、この活動によって「価格」が選択要素のひとつであることを気づくことになった。2.生活費の収支バランスの学習をした後には、被服費が増えると食費や娯楽費など他の支出を減らさないといけないことに気づいた児童が23%いた。収支のバランスを取るために、被服費を減らすことを考えた児童が25%、被服費ではなく食費や娯楽費を減らすことを考えた児童が23%いた。3.授業全体の感想からは、「洋服などを買うときに大きなサイズを買って長持ちさせる」など今後の被服購入について記述してあるものが67%と一番多かった。次に「バランスを考えながら生活しなくてはいけないことがわかった」や「洋服を買うときには、ほかのことも考えて買わなくてはいけない」など収支バランスに関するものも54%書かれていた。被服費を減らすことだけでなく、収支バランスについての考えも書かれていることより、収支バランスを理解できたことがわかった。
著者
杉浦 なぎさ 藤田 智子 大竹 美登利 菊地 英明
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

<strong>【目的】</strong><br /><br /> 男女が協力して生活することの重要性が謳われている現代において、男女がともに家庭科を学ぶ意義を感じられることは重要である。しかし、高校生は、家庭科の必要性は「現在」ではなく、「将来」の家庭生活にあると感じており(中西 2006)、中学生においても「現在」学ぶことに意味があると感じられるかは疑問である。また、高校生において、家庭科の有用性を認知することが食生活行動に結び付いていることが明らかにされており(藤田 2012)、実感をともなう学びにすることこそ、子どもたちが生活実践につなげるために有効なのではないかと考えられる。本田(2004)は、「子どもが学習にどのような意味や意義を感じているか」を「学習レリバンス」と定義し、学習そのもののおもしろさを示す「現在的レリバンス」と、学習が将来何かに役立つ感覚を示す「将来的レリバンス」の2つがそろうことで、男女ともに学習を長期にわたって継続したいと思えることを明らかにした。本研究では、中学生が家庭科を学ぶ意義を感じているかを明らかにするとともに、家庭科を学ぶ意義の感じ方の違いに着目して、生活実践行動を分析する。<br /><br /><strong>【方法】</strong><br /><br /> T大学附属中学校2年生、3クラス89名(男性31名、女性58名)を対象に、アンケート調査を行った。実施時期は、9月(単元前)、10月(単元後)、1月(単元後の追跡調査)の計3回である。単元については、2時間×3回の計6時間の授業構成として、「洗剤や柔軟剤の性質の理解を踏まえた選び方」「消費者が洗剤購入に必要な情報を考える」など実験や実習を取り入れた。3回の調査すべてに回答した86名(男性31名、女性55名)を分析の対象とする(有効回答率96.6%)。また、授業者が積極的に授業に取り組んでいると思う生徒を有意抽出してもらい、各クラス男女1名の計6名(男性3名、女性3名)にインタビュー調査を行った。10月に2回(単元途中と単元後)実施した。<br /><br /><strong>【結果】</strong><br /><br /> 学習レリバンスに関しては、家庭科全般と洗濯の学習において、「好き・おもしろい」を現在的レリバンス、「将来、役に立つ」を将来的レリバンスとして、単元学習後に聞いた。まず、家庭科全般に対して肯定的に回答をした生徒は、現在的レリバンスは5割以上、将来的レリバンスは9割以上であった。一方で、洗濯の学習に対して肯定的に回答をした生徒は、現在的レリバンスは40%に満たず、将来的レリバンスは9割以上であった。<br /><br /> 中学生の生活実践状況は、洗濯物を「しまう」は男女ともに実践度が高かったが、「洗う」は低かった。次に、学習レリバンスの感じ方による生活実践行動の違いをみるため、一要因の分散分析を行った。その結果、家庭科全般、洗濯の学習ともに「好き・おもしろい」と思う人ほど、学習後、有意に生活実践得点が高かった。<br /><br /> また、質問紙の自由記述(家庭科の学びの中で自分が成長できたと思う点)やインタビュー調査(授業でおもしろかったこと・新たに気付いたこと)から、中学生は洗剤のパッケージデザインを通し、消費者の立場からデザインや表記の仕方を工夫することで、洗剤の表記にも様々なアイデアがあることに気付き、「おもしろさ」を感じていた。また、実験を通して、洗剤の液性によるダメージの受け方や量による汚れの落ち方の違いを目で見て、「実際にお店で洗剤を見比べたい」「洗濯をおこなってみたい」など、科学的知識を基に自分の生活で試したいと考えており、「役に立つ」感覚が育まれたと考えられる。以上のように、授業で「おもしろい」「役に立つ」と感じることは、中学生の生活実践につながるきっかけになると考えられる。<br /><br /> 本研究は,東京学芸大学「日本における次世代対応型教育モデルの研究開発」[文部科学省平成28年度特別経費(プロジェクト分)]の研究成果の一部である。
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 山崎 泰央 坂田 隆 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔 奥山 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> JSHE生活研究では、石巻市にて「郷土料理の伝承」「特産物を生かした料理の提案」を目的とした料理教室と料理コンテストを行ってきた。これらの活動による参加者の意識・意欲の変化を明らかにする。<b></b><br><b>方法 </b>郷土料理教室は3回(2012年3月~2013年12月)、わかめ料理コンテストは1回(2014年10月)実施し、それぞれ参加者へアンケート、聞き取りを行った。<br><b>結果 </b>郷土料理教室の1、2回目は仮設住宅入居者を対象として行ったが、以前から郷土料理を作り、食べている参加者が多かったため、3回目は仮設住宅入居者を講師とし、大学生を対象に行った。終了後、大学生からは「石巻の食文化を知ることができた」「家族や友人に教えたい」、仮設住宅入居者からは「若い人たちと話せて楽しかった」「やりがいを感じた」という感想が多く、「郷土料理の伝承」の新たな形としての可能性が感じられた。わかめ料理コンテストは地域住民34組から応募があり、最終審査は10組で行われた。参加者からは「わかめだけでなく、他の石巻の食材も調べた」「参加者同士で意見交換できた」との声も聞かれ、両活動とも郷土料理や特産物に対する関心や愛着、誰かに伝えたいという意欲を生み、さらに地域関係者も含めたコミュニケーションの場となった。<br>本研究は科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成25年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。
著者
鄭 暁静 大竹 美登利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

1.目的 今日、家族・家庭生活には様々な課題があり、日本と韓国はこれらの状況が類似している。家庭科教育はこうした家族・家庭生活に関する課題を主に扱っており、どのような内容を取り上げどのように学ばせるかは、教師の家族・家庭生活意識に影響されることも多い。また、その授業内容や方法によって生徒の学びは相違し、生徒の家族・家庭生活意識に与える影響は大きいと考えられる。そこで、本研究においては、日本と韓国の家庭科教師を対象に、教師の家族・家庭生活意識及び授業実態を調査し、日本と韓国の家族・家庭生活領域の教育の実態の違いを明らかにすることを目的とした。2.研究方法 (1)調査方法:日本の普通科高等学校(2000校)と韓国の一般系高等学校(1500校)の家庭科教師宛にアンケート用紙を郵送し、返送してもらった。 (2)調査期間:韓国は2013年3月上旬発送、日本は5月上旬発送し、それぞれ3週間後を締め切りとして返送してもらった。 (3)調査対象:有効回収数、韓国209名、日本570名であった。 (4)調査内容:学校の雰囲気、男女平等意識、結婚・家族生活意識及び授業の内容など。3.結果 (1)学校の雰囲気は家庭科教師自身の男女平等意識や家庭生活観に影響を与えるものと考えられる。そこで、学校の雰囲気について「周囲と違う意見を言いにくい雰囲気がある」など、9つの項目について尋ね、「全くそう思わない」(1点)、「そう思わない」(2点)、「そう思う」(3点)、「とてもそう思う」(4点)の4選択肢の中から1つを選ばせ、4段階評定尺度によって平均値を出し得点化した。その結果、「教員間の意思疎通がうまく取れている」、「教員会議などで活発な議論が交わされている」、「男性教員の方が女性教員より管理職から信頼されている」の項目においては韓国の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意な差があった。一方、「新しいことをはじめにくい雰囲気がある」の項目は日本の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意差があった。 (2)男女平等意識をはかるため、「能力や適性は男女で異なる」など、11の項目について、4段階評定尺度によって得点化した。その結果、「女性の校長、教頭を増やした方がよい」という項目において、日本の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意差があった。 (3)結婚生活に求めるものの重要度について「精神的な親密さ」など、10の項目について尋ね、4段階評定尺度によって得点化した。その結果、「経済的な安定」以外の全ての項目において韓国の方が得点が高く、中でも「性的満足度」、「子どもを生み育てること」、「趣味が同じであること」、「社会的な地位を築くこと」、「同じ人生観、価値観を持っていること」、「親や周囲の期待に応えられること」の項目で1%水準で有意差があった。 (4)家庭科の授業内容の中で、現在、重点をおいて教えている内容について、複数回答で尋ねた。その結果、韓国は「配偶者の選択と結婚」が75.0%、「妊娠と出産」が63.0%、「家族の関係と家庭の機能」が54.2%など、結婚・家族に関しての内容が多く扱われていた。一方、日本は「食事と健康」が91.7%と突出して多かった。また、今後、重点をおいて教えたい内容について、複数回答で訪ねた結果、日本と韓国両国とも1位は現在と変わらないが、韓国は「高齢者・障害者の問題」、「共生社会と福祉・社会的支援」が、日本は「職業・キャリア教育」、「生活設計」が新たに注目されていた。
著者
林 隆子 川端 博子 石川 尚子 大久保 みたみ 大関 政康 大竹 美登利 唐沢 恵子 斉藤 浩子 高崎 禎子 武田 紀久子 山形 昭衛
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.361-369, 1992-05-15
被引用文献数
6

The survey of the daily clothes of 708 people, from ages 70 to 95,living in Ome City,Tokyo,was conducted from May though August, 1989. We investigated the sorts of daily clothes worn on the day surveyed and the details of each garment. The results were as follows:(1) The most typical ensemble of men's upper garments consisted of an undershirt, shirt and blazer or jacket while the lower one consisted of briefs or undershirt and a blouse and sweater with three-quarter sleeves that were button closing in front. The lower garments were mainly briefs, short or long underwear and trousers or a skirt. Trousers were preferred by elder women, compared to younger women.(3) Man-made fibers were often used for the outer wear of those surveyed.(4) An estimation of the thermal insulation and weight if the garments indicated that the elderly people surveyed wore more clothing than younger people.
著者
武田 紀久子 大久保 みたみ 高崎 禎子 唐沢 恵子 石川 尚子 大関 政康 大竹 美登利 川端 博子 斉藤 浩子 林 隆子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.3-13, 1992

東京多摩西部地区 (青梅市) の高齢者の総合生活調査の一環として食生活調査を行い, 次の結果を得た.<BR>(1) 大部分の人が1日3回の食事と, 1~2回の間食をとっていた.主食としては米飯が最も多かったが, 30%の人は夕食に麺類を摂取していた.また, 1日の平均汁物摂取は, 1.9杯であった.<BR>(2) 緑黄色野菜, 淡色野菜, 果物, 大豆製品, 卵は毎日, 魚, いもなどは週3~4回以上摂取している人が多く, 食品のバランスとしてはほぼ良好であった.酒・牛乳以外のほとんどの食品類において, 女性の摂取頻度は男性よりも高率であった.また, 男女とも自分が食事作りをする人はしない人に比べ, 毎日の摂取頻度が高い食品類が多かった。摂取頻度の高い調理法は, 魚では, 焼き魚, 煮魚, 野菜では煮物, 妙め物であった.<BR>(3) 主食となる料理では, うどん, 寿司, 赤飯が好まれた.主菜は, 男性には刺身, すき焼き等の馳走が, 女性には焼き魚, 卵焼き等の惣菜料理が好まれた.また, 女性は主菜よりも野菜中心の副菜を好む率が高かった.<BR>(4) 自分で調理を担当するのは, 女性は約50%, 男性は約10%であった.<BR>(5) 外食の頻度は月1回以上が46%を占めた.市販のおかずの利用頻度は週1回以上が約60%であり, 利用理由として男性は食品の多様性, 女性は簡便性を挙げていた.<BR>(6) 食事の満足度は97%と高率であった.<BR>(7) 子供と同隣居の高齢者は, 別居の場合よりも, 間食回数, 汁物の摂取量が多く, また, 米飯の摂取頻度や市販のおかず・外食の利用頻度も高かった.<BR>(8) 子供と別居している女性は, 98%が食事作りを担当しているが, 食品の摂取頻度は高く, 市販のおかずや外食の利用頻度は低いなど, 日頃から自分の食生活に留意しているようすがみられた.
著者
村松 泰子 大竹 美登利 直井 道子 福富 護 佐久間 亜紀 中澤 智恵 谷部 弘子 福元 真由美
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ジェンダーの視点からの教員養成のあり方の検討に向け、現状と問題点の把握のため、教員養成系8大学の教員・学生両者を対象に実証的研究を行った。初年次に教員に対する質問紙調査(回答703名)、2年次に学生に対する質問紙調査(回答1209名)を実施、最終年次に両調査の結果を合わせ分析し報告書を作成した。調査内容は、教職観、大学教員の教育活動・学生観、学生の学習活動・大学教員観、教師-学生関係、ジェンダー観などである。結果の一部は、下記の通りである。1)大学教員の7割以上が小学校教師は、経済的に安定・大学院レベルの知識が必要としているが、女性教員の過半は女性向きとし、男性教員の過半はそう思っていない。2)多くの大学教員は、学生の学力・まじめさ・積極性・批判精神・将来性には性別による偏りはないと見ているが、批判精神と将来性は女性のほうが女子学生を高く評価している。3)学生は男女とも、男性教員に「専門的知識の深い人が多い」、女性教員に「まじめな人」「やさしい人が多い」というイメージをもつものが多い。4)一般的なジェンダー観に関して、大学教員では「能力や適性は男女で異なる」に男性の過半数は同意、女性の過半数は不同意など、性別による差が大きい。学生も性別により差が見られる。学生の多くが「男女の違いを認めあうことが大切」としているが、「義務教育でもっと男らしさや女らしさを大切に」教育することには多くが否定的である。5)義務教育段階での教師と児童生徒の関係について「毅然とした態度を取るべき」などの権威的な考え方は、女性より男性教員のほうがやや強く、ジェンダーバイアスが強い教員ほど強かった。学生でも、管理主義的な考え方が男子学生のほうにより強かった。以上の通り、大学教員では、ジェンダーに関わる態度や意識が性別により異なる面があり、学生では男女ともに、意識としては男女平等を志向しながらも、すでにジェンダーを内面化している傾向がうかがえた。
著者
武田 紀久子 大久保 みたみ 高崎 禎子 唐沢 恵子 石川 尚子 大関 政康 大竹 美登利 川端 博子 斉藤 浩子 林 隆子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.3-13, 1992-01-15
被引用文献数
3

第3報では,高齢者の食生活に関する分析を行った.現在70歳の高齢者は,結婚年齢である20代に第二次世界大戦を迎え,子育て期には戦中戦後の食糧難による耐乏生活を経験し,働き盛りの30代には戦後の急激な生活の変化に遭遇したというまさに波乱に富んだ人生を生