- 著者
-
酒井 章吾
- 出版者
- 日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.1201, 2017 (Released:2017-04-24)
【はじめに,目的】超音波診断装置では,骨格筋量の指標である筋厚測定に加え,骨格筋の質の指標となる筋エコー輝度(以下,筋輝度)の測定が可能である。筋輝度は筋内脂肪などの非収縮性組織を反映し,筋輝度が筋力と負の相関を示すことが報告されている(Fukumotoら2011)。筆者らは骨格筋の質的評価が重要であると考えている。足関節内反捻挫では,受傷時の急激な伸張による筋損傷や疼痛による不動,関節の腫脹などによって神経筋の活動が低下し,長腓骨筋に代表される足関節外反筋の筋力低下が生じるとされる(Konradsen 1998)。本研究の目的は,足関節内反捻挫を繰り返した脚の筋力,筋厚,筋輝度を足関節内反捻挫の既往のない脚と比較することで,その特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,足関節内反捻挫を繰り返し受傷した経験(受傷回数7.3±2.9回)を持つ男性(I群)7名7脚(年齢22.0±1.3歳,身長170.4±5.9cm,体重62.5±9.3kg)と内反捻挫の既往がない健常男性(N群)6名12脚(年齢21.8±1.5歳,身長174.5±10.6cm,体重61.0±10.7kg)とした。足関節外反筋力の測定は,Biodex System3(Biodex Medical Systems)を使用し,等速性(120°/s)の求心性・遠心性筋力の最大値を体重で除した値を算出した。超音波診断装置(Noblus;Hitachi,Ltd)による長腓骨筋の評価は,腓骨頭と外果を結んだ線の近位25%の部位で長腓骨筋の画像を描出した後,筋厚および筋輝度を算出した。筋輝度はImage J(NIH社製)を用いて,0から255の256階調で表記される8bit-gray-scaleによって算出され,値が大きいほど非収縮性組織が多いことを示す。統計学的解析は,SPSS statistics20にて,筋力,筋厚,筋輝度の比較に対応のないt検定を使用した。危険率5%未満を有意とした。【結果】足関節の求心性外反筋力(Nm/kg)はI群0.34±0.11,N群0.53±0.18,遠心性外反筋力はI群0.48±0.13,N群0.72±0.25であり,I群で求心性36%,遠心性33%の有意な低下を示した(p<0.05)。筋厚(mm)はI群24.59±1.7,N群26.28±2.8であり有意な差はなかった。筋輝度はI群102.96±16.97,N群77.46±5.34であり,I群で25%の有意な高値を示した(p<0.01)。【結論】N群に比べI群では有意に筋力が低値を示したにも関わらず,筋厚は群間で差がなかった。I群では長腓骨筋内の筋内脂肪などの非収縮性組織の割合の増加が,足関節外反筋力の低下に関与している可能性が示唆された。