著者
黒山 政一 熊野 和雄 村瀬 勢津子 朝長 文弥 酒井 糾
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.525-532, 1993

血液透析時の抗血液凝固剤としてヘパリン, 低分子ヘパリン, メシル酸ナファモスタットを使用しているHD施行患者の血清を用いて, 代表的なセフェム系抗生剤であるCPM・CET・LMOXの蛋白結合率を血液透析開始直前から透析終了6時間後まで検討した.<br>抗血液凝固剤としてヘパリンおよび低分子ヘパリンを使用したHD施行患者におけるCPMおよびLMOXの蛋白結合率は透析終了直後に低下し, その後, 経時的に透析前値にまで復した. CETの蛋白結合率は透析終了直後に増加し, その後, 前値にまで復した. CPMおよびLMOXの蛋白結合率は血清中のNEFAと負の相関を, CETの蛋白結合率は正の相関を示した. 一方, メシル酸ナファモスタットを使用した場合の蛋白結合率は, いずれの抗生剤においても, 透析前後で殆ど変動しなかった. HD施行患者における透析前後の経時的なセフェム系抗生剤の蛋白結合率の変動は, 透析施行時の抗血液凝固剤として使用されるヘパリンおよび低分子ヘパリンによりリパーゼが活性化され, 血液中のNEFA濃度が変化したことに関連するものと思われる.<br>セフェム系抗生剤のHD施行患者における透析後の蛋白結合率は, 使用するセフェム系抗生剤の種類, 抗血液凝固剤の種類により大きく変化し, その体内動態に大きな影響を与える可能性がある. HD施行患者へのセフェム系抗生剤の投与に際しては, このような蛋白結合率の変化にも十分考慮した投与設計が必要であろう.
著者
辻 祐一郎 阿部 祥英 三川 武志 板橋 家頭夫 酒井 糾
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.105-110, 2007-11-15 (Released:2008-05-12)
参考文献数
10

A群β溶血性連鎖球菌 (以下,溶連菌) 感染症は,小児科診療上最もよく接する細菌感染症である。その感染後に伴う合併症として,急性糸球体腎炎は,頻度も高く非常に重要な疾患である。しかし,臨床現場では,溶連菌感染後にどのように急性糸球体腎炎を検索し,診断するかは,個々の医師の判断に任されており,種々の方法がみられる。患児側からすると,診断した医師によって検尿の施行時期や回数,診断基準が異なることは混乱をきたす。今回は,小児腎臓病を専門としている医師のみでなく,小児一般臨床を行っている小児科医に対しアンケートを行い,検尿の施行時期,回数,診断基準などについて回答を得た。その回答から,多くの溶連菌感染後急性糸球体腎炎にたいする捉え方があることがわかった。今後,小児における分かりやすい溶連菌感染後急性糸球体腎炎の診断基準の作成や溶連菌感染後急性糸球体腎炎の発症予防を考慮した治療指針などの作成が望まれると思われた。