著者
野口 悟司 相木 一輝 藤井 雄介 藤原 道隆
雑誌
第96回日本医療機器学会大会
巻号頁・発行日
2021-12-10

2019年3月に名古屋大学附属病院が国立大学附属病院として初めてJCI(Joint Commission International)に認証された.医療機器はJCIでは「施設の管理と安全性」に分離され,主な項目は,医療機器は病院全体を通して購入から廃棄まで計画に沿って管理されているか,また,すべては台帳化され適宜・適正に更新されているか,その他,すべて機器を対象にした管理体制等を審査される.我々は当審査を受審するにあたり,数々の書類や設備を整え教育を受け準備をおこなった.しかし,本審査の目的は,評価されることにより,本来の「医療の質と患者安全の提供」を具現化することで,実際に患者にとって安全な医療機器を提供の是非を再認識するに至った.それらを実施するには臨床工学技士だけの業務範疇に止まらず,診療現場の医師や看護師,事務部門の理解と協力を無くしては対応できないと判断し,当院はそれらのことを総合的にマネジメントする医療機器総合管理部を創設した.人員構成は医療機器管理責任者(医師)を中心に専属臨床工学技士に加え,管理課職員とした.主な業務として,新規購入機器の選定と更新機器の購入計画の調整と実施,医療機器に関するインシデント報告と不具合報告の同時入力のシステムを作り,事例の対応.また,創設当初から院内の医療機器の実態把握を目的に,各部署の棚卸の実施を段階的におこない,現在,50部署の内42部署を実施した.棚卸をおこなったことで,部署の器材庫などに未使用の機器もあり,実施した部署の全体像が確認できた.また,台帳上の14,000台以上に及ぶ医療機器の点検について,コメディカルだけではなく医師や看護師の協力を得るため,当院独自の機器のリスク度や管理体制を考慮し点検クラス分類をおこない,それに準じた方法を検討して実施に向けている.今回,我々は医療機器総合管理部の創設の意義と,JCIの再審査に鑑み病院全体の医療機器を対象におこなった2年の活動の経過と課題を報告する.
著者
伏見 了 野口 悟司 船越 文男 高階 雅紀 中田 精三 田野 保雄
出版者
一般社団法人 日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.648-651, 2000-12-01 (Released:2022-02-17)
参考文献数
8
被引用文献数
10 6

Detergents contained enzymes that claim stronger washing ability and less damages are used widely for washing out blood or minute tissues adhered to various operation apparatus. It is known that enzyme protein shows maximum activity at 40℃ and is more stable when stored at the lower temperature. However, detergents contained enzymes are stored at room temperature in the most of operation theaters, and furthermore they are transported from manufacturers to any of distribution route in nonrefrigerated condition. When we measured Protease activities at 4℃ and 40℃ during 161 days storage period, the activity at 4℃ was stable but at 40℃ decreased 38.0% in average. In comparison of Protease activities at 20℃ and 40℃, the latter showed twice higher activity. When we studied the correlation between temperatures and the washing ability of detergents contained enzymes using Adenosine triphosphate as the marker, the washing ability at 40℃ was stronger than that at 20℃.
著者
花村 亮 伏見 了 中田 精三 野口 悟司 高階 雅紀 水谷 綾子 門田 守人 川本 武
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

〔目的〕すべての消毒薬には蛋白質変性作用があることから,血液などで汚染された器械は十分に洗浄された後に消毒薬による処理やオートクレーブなどによる滅菌を行うことが公的機関から勧告され,成書にも記載されている.しかし,現実には汚染器械をそのまま,または簡単な洗浄の後に消毒薬に浸漬している施設が非常に多い.そこで,血液および血液成分を塗布した汚染モデルを用いて一次消毒された汚染物がその後の洗浄においていかに障害となるかを明らかにしたので報告する.〔材料〕高,中,低レベル消毒薬として日常広く使用されている8種類を用い,浸漬洗浄用洗剤には1%の酵素洗剤とアルカリ性洗剤を使用した.汚染モデルにはTOSI^【○!R】(Pereg社)を使用して洗浄後の残存蛋白質をニンヒドリン反応で確認した.〔方法および成績〕1mlの血液と4mlの消毒薬を混合すると血液中蛋白質が寒天状または遠心分離によって沈殿物を形成するほどに変性した.消毒薬未処理のTOSI^【○!R】は20分間の酵素およびアルカリ洗剤による浸漬洗浄で付着蛋白質が分解されるのに対して,消毒薬処理(30分間の浸漬)によって変性した蛋白質はほとんど分解されずに残存した.消毒薬処理したTOSI^【○!R】をウォッシャーディスインフェクタで洗浄した結果,グルタールアルデヒドおよびフタラール処理で変性蛋白質は残存していた.また,超音波洗浄した結果グルタールアルデヒド,過酢酸,フタラール,塩化ベンザルコニウムで処理した場合に変性蛋白質が残存した.〔結論〕消毒薬の作用によって血液中蛋白質が変性し,しかもこの変性蛋白質は酵素およびアルカリ性洗剤の分解作用を受けないことから洗浄の大きな障害となる.したがって,一次消毒は禁止すべきと思われる.