著者
有村 達之 小牧 元 村上 修二 玉川 恵一 西方 宏昭 河合 啓介 野崎 剛弘 瀧井 正人 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.259-269, 2002-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究の目的は,アレキシサイミア評価のための改訂版 Beth Israel Hosoital Psychosomatic Questionnaire構造化面接法(SIBIQ)の開発である.SIBIQはアレキシサイミア評定尺度である改訂版BIQの評定に必要な面接ガイドラインと評定基準を含む半構造化面接である.心療内科を受診した45名の患者にSIBIQを実施し,良好な内的一貫性(α=0.91)と評定音間信頼性(ICC=0.82)を得た.また,アレキシサイミア評価の質問紙であるTAS-20との間に正の相関(r=0.49)があり収束妥当性が支持された.因子分析では(1)アレキシサイミア,(2)空想能力の二因子が抽出された.
著者
小牧 元 小林 伸行 松林 直 玉井 一 野崎 剛弘 瀧井 正人
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近年、ストレスに対する生態防御の観点から、免疫系と視床下部-下垂体-副腎系との関連が注目されてきた。特にサイトカインの一種であるインターロイキン‐1β(IL-1β)がこの免疫系と中枢神経系を仲介する、主要な免疫メディエーターの一つであることが明らかになっている。このIL-1βの同系に対する賦活作用には、視床下部の室傍核(PVN)におけるCRFニューロンの活動が促される必要があるが、血中のIL-1βがいかにして同ニューロンを刺激するのか未だ確定した結論には到っていない。我々は視床下部の終板器官(OVLT)が、その血中のIL-1βが作用する主なゲートの一つである可能性を、同部位にIL-1レセプター・アンタゴニストを前処置することにより確認したところ、血中IL-1β投与によるACTHの上昇は有意に抑制された。一方、一酸化窒素(NO)が脳内でニューロトランスミッターとして働いていることが判明し、特に、NOがアストロサイトからのPGE2産生やCRFやLHRH分泌調節に直接かかわっている可能性がある。そこで、マイクロダイアリシスを用いて、同部位のNO産生との関わりをさぐるために、L‐Arginineをチューブ内に流し、IL-1βによるPGE2産生の変化を見たところ、有意な抑制傾向は認めなかった。しかし、フローベの長さの問題、L‐Arginineの濃度の問題もあり、容量依存生の確認、他の部位との比較まで至っておらず、結論は現在まで至っていない。今後、容量、他のNO産生関連の薬物投与も試みて、確認して行く予定である。
著者
岡本 敬司 野崎 剛弘 小牧 元 瀧井 正人 河合 啓介 松本 芳昭 村上 修二 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.369-375, 2001-06-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16

栄養状態の回復期にカルニチン欠乏および高CPK血症をきたした神経性食欲不振症を報告した.症例は30歳女性.入院時体重は19.6kg(-57%標準体重).入院時より高度の肝機能障害を認めたが, 栄養状態の改善に伴い入院30日目には正常化した.しかし, そのころよりCPKが上昇しはじめ, 入院時は正常範囲にあった血清カルニチン濃度が正常の半分以下まで低下した.その後, 摂食量の増加にもかかわらず, 血清カルニチン濃度はわずかに上昇したのみで, CPKも漸減しただけであった.そこでカルニチン製剤を投与したところ, CPK, カルニチンともに速やかに正常化した.神経性食欲不振症の栄養状態の回復期におけるCPKの上昇とカルニチンの関連を考察した.
著者
野崎 剛弘 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.20-28, 2013-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

生活習慣病の一つである2型糖尿病では,食事や運動といった薬物以外の自己管理に委ねる割合が高い.自己管理の成否には,患者の心理社会的要因が少なからず影響を及ぼす.したがって,心身両面から患者を理解し治療していくという心身医療(心身医学的アプローチ)は,糖尿病の臨床において大きな効果を発揮する.本稿では,まず2型糖尿病患者に対する心身医療について述べ,次に2型糖尿病患者の血糖コントロールに影響を及ぼす心理・社会的因子を縦断的に調査した自験例を紹介し,最後に通常の内科的治療では血糖コントロールが不良であった患者が心身医療によって良好な血糖コントロールとなり維持している症例を提示する.
著者
野崎 剛弘 小牧 元 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.231-241, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
69

肥満は先進国のみならず, 発展途上国でも爆発的に増加している. 肥満症は多くの医学的合併症や併存疾患が出現する慢性代謝疾患である. 肥満に関連する健康被害と医療コストは莫大なものとなっている. 肥満症対策は各国での喫緊の課題であり, さまざまな取り組みがなされているが, 十分に成功しているとは言い難い. 一方, 肥満症は非常に複雑な多因子疾患でもある. 肥満症は, 遺伝的, 生物学的, 心理的, 行動的, 家族的, 社会的, 文化的, および環境的要因がさまざまな形で影響し合って発症, 進展する. したがって, その治療は, 肥満症が慢性疾患でありかつ多因子疾患であることを考慮に入れて, 総合的に行われる必要がある. 本稿では, 肥満の生物学的, 心理社会的要因および治療について, 最近の知見と問題点を交えて概説する.
著者
野崎 剛弘 小牧 元 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.134-141, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
6

日本糖尿病学会は, エビデンスに基づく糖尿病診療の推進を目的に, 『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン』を発行している (初版は2004年, 最新版は2013年版). また, 同学会は上記ガイドラインをベースに, 最新の知見を糖尿病現場に幅広く普及させることを目的に, 『糖尿病治療ガイド』も発行している. 一方, 日本糖尿病療養指導士機構から『糖尿病療養指導ガイドブック』が発行されているが, これは糖尿病患者の心理・行動に関する記述に大きくページを割いている. 本稿では, これら糖尿病の診療ガイドラインの最新の内容を紹介するとともに, 糖尿病の心身医学的側面がガイドラインにおいてどのように位置づけをされているかを概説する.
著者
有村 達之 小牧 元 村上 修二 玉川 恵一 西方 宏昭 河合 啓介 野崎 剛弘 瀧井 正人 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.259-269, 2002-04-01
被引用文献数
4

本研究の目的は,アレキシサイミア評価のための改訂版 Beth Israel Hosoital Psychosomatic Questionnaire構造化面接法(SIBIQ)の開発である.SIBIQはアレキシサイミア評定尺度である改訂版BIQの評定に必要な面接ガイドラインと評定基準を含む半構造化面接である.心療内科を受診した45名の患者にSIBIQを実施し,良好な内的一貫性(α=0.91)と評定音間信頼性(ICC=0.82)を得た.また,アレキシサイミア評価の質問紙であるTAS-20との間に正の相関(r=0.49)があり収束妥当性が支持された.因子分析では(1)アレキシサイミア,(2)空想能力の二因子が抽出された.
著者
館 雅之 野崎 剛弘 瀧井 正人 占部 宏美 高倉 修 河合 啓介 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.803-811, 2007-09-01
被引用文献数
1

大量の下剤乱用を10年間にわたり続けていた神経性食欲不振症の遷延例である.このような症例は難治であり予後も不良とされるが,当科で行っている,「行動制限を用いた認知行動療法」が奏効し,退院後3年半経っても順調に推移しているので,報告する.「行動制限を用いた認知行動療法」では,患者が肥満恐怖に向き合い,体重増加を図っていくと同時に,行動制限中に表出してきた患者の問題行動を適宜扱う.本患者は,入院治療の過程で,現実生活でいやなことから逃げるという「葛藤回避」が自分の本質的な問題であることを認めるようになった.その結果,「葛藤」から逃げることなく,実際に体重を増やすことができ,体重のみならず家族や対人関係における認知や行動に変化がみられるようになった.本稿では,治療を通じて,患者の認知や行動が変化していった経緯と治療上の留意点について述べた.
著者
西方 宏昭 野崎 剛弘 玉川 恵一 河合 宏美 河合 啓介 瀧井 正人 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.699-706, 2003-10-01

選択性緘黙と神経性食欲不振症を合併した症例に対し"三匹の猫"の対話ノートを使った非言語的交流技法を導入した.症例は14歳,中学2年の女子生徒.小学6年(12歳)時よりダイエットを開始し,中学1年(13歳)時,3カ月で29kgから22kgに体重が減少.同時期より家庭以外で話せなくなった.近医小児神経科に入院し点滴,経管栄養および抗うつ剤を投与され25kgで退院したが緘黙症状は悪化,体重も再び減少し当科入院となった.入院時身長134.5cm(骨年齢9歳6カ月),体重22.6kg(BM12.5kg/m^2,肥満度-28%).言語的交流がきわめて限られていたため摂食障害患者をモチーフに三匹の猫を作成した.猫たちとの交流を通じ,患者は初めて感情表現を行うことができた.その後は体重を29kgまで増やし退院した.