著者
可知 悠子 前田 基成 笹井 惠子 後藤 直子 守口 善也 庄子 雅保 廣山 夏生 瀧井 正人 石川 俊男 小牧 元
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.215-222, 2006-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
27
被引用文献数
4

本研究の目的は, 摂食障害とアレキシサイミア傾向の関連を, 健康な対照群との比較から検討することである.68名の摂食障害女性患者〔神経性食欲不振症制限型(AN-R)28名, 神経性食欲不振症むちゃ食い/排出型(AN-BP)25名, および神経性過食症排出型(BN-P)15名〕と236名の女子学生を対象に, 日本語版Toronto Alexithymia Scale-20 (TAS-20)ならびに日本語版Eating Attitude Test-26 (EAT-26)を用いて自己記入式質問紙による調査を施行した.その結果, 摂食障害患者においては病型に関係なくアレキシサイミア傾向が強いことが明らかになった.また, TAS-20の下位尺度である"感情の同定困難"と摂食障害の症状の重症度との間に関連が認められた.以上により, 摂食障害患者の治療においては, アレキシサイミアを考慮したアプローチが重要あることが示唆された.
著者
有村 達之 小牧 元 村上 修二 玉川 恵一 西方 宏昭 河合 啓介 野崎 剛弘 瀧井 正人 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.259-269, 2002-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究の目的は,アレキシサイミア評価のための改訂版 Beth Israel Hosoital Psychosomatic Questionnaire構造化面接法(SIBIQ)の開発である.SIBIQはアレキシサイミア評定尺度である改訂版BIQの評定に必要な面接ガイドラインと評定基準を含む半構造化面接である.心療内科を受診した45名の患者にSIBIQを実施し,良好な内的一貫性(α=0.91)と評定音間信頼性(ICC=0.82)を得た.また,アレキシサイミア評価の質問紙であるTAS-20との間に正の相関(r=0.49)があり収束妥当性が支持された.因子分析では(1)アレキシサイミア,(2)空想能力の二因子が抽出された.
著者
小牧 元 小林 伸行 松林 直 玉井 一 野崎 剛弘 瀧井 正人
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近年、ストレスに対する生態防御の観点から、免疫系と視床下部-下垂体-副腎系との関連が注目されてきた。特にサイトカインの一種であるインターロイキン‐1β(IL-1β)がこの免疫系と中枢神経系を仲介する、主要な免疫メディエーターの一つであることが明らかになっている。このIL-1βの同系に対する賦活作用には、視床下部の室傍核(PVN)におけるCRFニューロンの活動が促される必要があるが、血中のIL-1βがいかにして同ニューロンを刺激するのか未だ確定した結論には到っていない。我々は視床下部の終板器官(OVLT)が、その血中のIL-1βが作用する主なゲートの一つである可能性を、同部位にIL-1レセプター・アンタゴニストを前処置することにより確認したところ、血中IL-1β投与によるACTHの上昇は有意に抑制された。一方、一酸化窒素(NO)が脳内でニューロトランスミッターとして働いていることが判明し、特に、NOがアストロサイトからのPGE2産生やCRFやLHRH分泌調節に直接かかわっている可能性がある。そこで、マイクロダイアリシスを用いて、同部位のNO産生との関わりをさぐるために、L‐Arginineをチューブ内に流し、IL-1βによるPGE2産生の変化を見たところ、有意な抑制傾向は認めなかった。しかし、フローベの長さの問題、L‐Arginineの濃度の問題もあり、容量依存生の確認、他の部位との比較まで至っておらず、結論は現在まで至っていない。今後、容量、他のNO産生関連の薬物投与も試みて、確認して行く予定である。
著者
岡本 敬司 野崎 剛弘 小牧 元 瀧井 正人 河合 啓介 松本 芳昭 村上 修二 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.369-375, 2001-06-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16

栄養状態の回復期にカルニチン欠乏および高CPK血症をきたした神経性食欲不振症を報告した.症例は30歳女性.入院時体重は19.6kg(-57%標準体重).入院時より高度の肝機能障害を認めたが, 栄養状態の改善に伴い入院30日目には正常化した.しかし, そのころよりCPKが上昇しはじめ, 入院時は正常範囲にあった血清カルニチン濃度が正常の半分以下まで低下した.その後, 摂食量の増加にもかかわらず, 血清カルニチン濃度はわずかに上昇したのみで, CPKも漸減しただけであった.そこでカルニチン製剤を投与したところ, CPK, カルニチンともに速やかに正常化した.神経性食欲不振症の栄養状態の回復期におけるCPKの上昇とカルニチンの関連を考察した.
著者
瀧井 正人
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.12-19, 2013-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
21

1型糖尿病は,若年発症,インスリン注射の必要性,少数派ゆえの周囲の無理解など,病気に関する負担は大きく,心理社会的問題の頻度は高く概して重篤である.1994年以降に当科を受診した,心理社会的問題を抱えた1型糖尿病患者約250名のうち,実に約7割が摂食障害を併発していた.若い1型糖尿病女性の約1割に摂食障害が併発しているといわれており,血糖コントロールの著しい悪化,糖尿病合併症の早期の発症・進展など医学的な問題も大きい.一方,インスリン注射の不適切な使用などによる自己破壊的行動は,1型糖尿病におけるもう一つの重大な問題である.本稿では,これらの2つの問題を中心に,その病態と治療・対策について述べた.
著者
波夛 伴和 瀧井 正人 高倉 修 森田 千尋 河合 啓介 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.857-863, 2015-07-01 (Released:2017-08-01)

生活習慣や治療行動(食事や運動など)は糖尿病患者の病状を左右する重要な要素である.患者を適切な治療行動に導くために,従来,糖尿病治療者は教育・指導に注力してきた.近年では,患者の問題解決能力を尊重して,その能力の発揮を援助する考え方(糖尿病エンパワーメントなど)が紹介され,効果も報告されている.しかし,中には自身の能力を発揮するのが難しい患者も存在する.そのような患者を効果的に援助するためには,より深く患者を理解することが必要である.本稿では,糖尿病患者を理解するためのかかわりについて,筆者の学びの過程を示しながら考察した.患者の大きな変化につながるような言葉や,技法が明確な心理療法に注目が集まりやすいが,その前段階の土台作りの重要性についても強調したい.
著者
有村 達之 小牧 元 村上 修二 玉川 恵一 西方 宏昭 河合 啓介 野崎 剛弘 瀧井 正人 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.259-269, 2002-04-01
被引用文献数
4

本研究の目的は,アレキシサイミア評価のための改訂版 Beth Israel Hosoital Psychosomatic Questionnaire構造化面接法(SIBIQ)の開発である.SIBIQはアレキシサイミア評定尺度である改訂版BIQの評定に必要な面接ガイドラインと評定基準を含む半構造化面接である.心療内科を受診した45名の患者にSIBIQを実施し,良好な内的一貫性(α=0.91)と評定音間信頼性(ICC=0.82)を得た.また,アレキシサイミア評価の質問紙であるTAS-20との間に正の相関(r=0.49)があり収束妥当性が支持された.因子分析では(1)アレキシサイミア,(2)空想能力の二因子が抽出された.
著者
瀧井 正人 野添 新一 小牧 元 古賀 靖之 神崎 健至 田中 弘允
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.823-830, 1995-10-30
参考文献数
22
被引用文献数
3
著者
瀧井 正人 内潟 安子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

前思春期から思春期にかけて1型糖尿病を発症した女性患者は、後に神経性食欲不振症や神経性大食症のような重症の摂食障害を併発するリスクが高かった。摂食障害を併発すると血糖コントロールは著しく悪化し、糖尿病慢性合併症の早期の発症・進展につながる。さらに、1型糖尿病に併発した摂食障害の治療は特に困難であると言われており、成功したとしても概して多大なエネルギーが必要であり、改善までには長期間が必要なことが少なくない。ここで同定されたリスクの高い患者群に対しては、1型糖尿病発症早期から、摂食障害予防のための介入がなされることが必要である。
著者
瀧井 正人 小牧 元 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.443-451, 1999-08-01
被引用文献数
7

症例は29歳, 女性.自発的な治療動機を得させることに重点を置いた外来治療を行い(第1報参照), 入院治療は行動制限を用いた認知行動療法を基本とした.患者は, (1)入院初期には, 治療の主導権を得ようと無理な要求や治療者への非難を繰り返し, (2)次いで, 病的な習癖・考え方に執着する一方, 体重増加を過度に追求し, (3)治療終盤では, 制限解除に対し強い不安を訴えるなど, 変化への不安・抵抗ともいえるさまざまな反応を示した.それらに対する治療介入と, 変化の受け入れの過程を紹介し, 考察した.また, 神経性食欲不振症の治療において非常に有用である反面, 機械的に用いれば副作用も少なくない行動制限について考察し, その活用の仕方を述べた.
著者
館 雅之 野崎 剛弘 瀧井 正人 占部 宏美 高倉 修 河合 啓介 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.803-811, 2007-09-01
被引用文献数
1

大量の下剤乱用を10年間にわたり続けていた神経性食欲不振症の遷延例である.このような症例は難治であり予後も不良とされるが,当科で行っている,「行動制限を用いた認知行動療法」が奏効し,退院後3年半経っても順調に推移しているので,報告する.「行動制限を用いた認知行動療法」では,患者が肥満恐怖に向き合い,体重増加を図っていくと同時に,行動制限中に表出してきた患者の問題行動を適宜扱う.本患者は,入院治療の過程で,現実生活でいやなことから逃げるという「葛藤回避」が自分の本質的な問題であることを認めるようになった.その結果,「葛藤」から逃げることなく,実際に体重を増やすことができ,体重のみならず家族や対人関係における認知や行動に変化がみられるようになった.本稿では,治療を通じて,患者の認知や行動が変化していった経緯と治療上の留意点について述べた.
著者
西方 宏昭 野崎 剛弘 玉川 恵一 河合 宏美 河合 啓介 瀧井 正人 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.699-706, 2003-10-01

選択性緘黙と神経性食欲不振症を合併した症例に対し"三匹の猫"の対話ノートを使った非言語的交流技法を導入した.症例は14歳,中学2年の女子生徒.小学6年(12歳)時よりダイエットを開始し,中学1年(13歳)時,3カ月で29kgから22kgに体重が減少.同時期より家庭以外で話せなくなった.近医小児神経科に入院し点滴,経管栄養および抗うつ剤を投与され25kgで退院したが緘黙症状は悪化,体重も再び減少し当科入院となった.入院時身長134.5cm(骨年齢9歳6カ月),体重22.6kg(BM12.5kg/m^2,肥満度-28%).言語的交流がきわめて限られていたため摂食障害患者をモチーフに三匹の猫を作成した.猫たちとの交流を通じ,患者は初めて感情表現を行うことができた.その後は体重を29kgまで増やし退院した.