著者
野川 茂
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.1442-1444, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
5

パーキンソン病は,中脳黒質ドパミン神経細胞減少による運動障害であるが,近年多彩な非運動症状を来す症候群として理解される.レボドパ補充療法が有効であるが,進行期には嚥下障害のため内服が困難となり悪循環を呈する.また,咳嗽反射の低下のために不顕性誤嚥を繰り返し,栄養障害による免疫力低下も関与して誤嚥性肺炎を発症する.最近では,PEGによる栄養管理や薬物投与,貼付剤治療も行われ,効果を発揮している.
著者
野川 茂
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.18-28, 2016 (Released:2016-02-26)
参考文献数
42
被引用文献数
6 8

要約:トルーソー症候群は「悪性腫瘍に合併する凝固能亢進状態とそれに伴う遊走性血栓性静脈炎」をさすが,脳梗塞の発症を機に初めて悪性腫瘍が発見されることも少なくない.このため,本邦では「悪性腫瘍に合併するDIC に伴う血栓症および非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)に起因する全身性(とくに脳)塞栓症」として理解されつつある.原因となる悪性腫瘍は,白血病を除けば,肺癌,膵癌,胃癌,卵巣癌(ムチン産生腫瘍)などの腺癌が圧倒的に多い.頭部MRI では多発性塞栓症を呈することが多く,約半数にNBTE が認められるが,経胸壁心エコーでの検出率は低く,経食道心エコーが診断に有用である.また,CA125 やCA19-9 などの高分子ムチンが,腫瘍マーカーあるいは塞栓形成物質として注目されている.治療では,ワルファリンの効果は不確実とされ,出血がコントロールされていれば,未分画ヘパリン静注やヘパリンカルシウム皮下注が用いられる.
著者
香月 有美子 鈴木 重明 高橋 勇人 佐藤 隆司 野川 茂 田中 耕太郎 鈴木 則宏 桑名 正隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.102-106, 2006 (Released:2006-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

Good症候群は胸腺腫に低γグロブリン血症を合併し,多彩な免疫不全状態を呈するまれな疾患である.我々はGood症候群に重症筋無力症(MG)を同時期に合併した症例を経験し,その免疫機能に関して評価した.症例は58才男性.四肢筋力低下,易疲労感のため受診し,抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性,胸腺腫からMGと診断.末梢血リンパ球数は正常であったが,著明な低γグロブリン血症(IgG 283 mg/dl, IgA 17 mg/dl, IgM 1 mg/dl)を認めた.拡大胸腺摘出術,副腎皮質ステロイド投与によりMGは寛解を維持しが,免疫グロブリンの定期的な補充にもかかわらず,呼吸器感染症やカンジダ症を繰り返した.経過中,副腎腫瘍,膵頭部癌と肝転移巣が判明し,細菌性肺炎により死亡した.免疫学的検討では,末梢血中のCD19+ B細胞が欠損していたが,各種マイトジェンに対するリンパ球増殖能は保たれていた.リコンビナントAChR蛋白により誘導されるT細胞増殖反応は低い抗原濃度でも観察され,MG患者に特徴的なパターンを示した.B細胞と結合する自己抗体を検出したが,本例では検出されなかった.Good症候群では免疫不全や自己免疫を含む多彩な免疫異常を呈することが示された.