著者
野村 岳志
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.613-621, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

緊急時の外科的気道確保としての輪状甲状膜穿刺・切開は種々の気道管理ガイドラインの最後の手段の一つである.手技自体は喀痰吸引などを目的に計画的に行う輪状甲状膜切開と同じであるが,施行する環境は大きく異なる.SpO2モニターが低音調で頻脈,不整脈,あるいは徐脈を告げ,アラーム音が鳴り響く中での手技である.時間的余裕はなく,数分で心停止となる.このような状況下での緊急輪状甲状膜切開はやはり手技自体の成功率が下がる.そのため換気不可能となった場合は人員を集め,生理学的状態を考えながら換気不可能に対処するタスクチームを編成する必要がある.確実な輪状甲状膜切開と同様に,二人法のマスク換気,薬剤の投与,除細動器・救急カートの準備,確実な記録記載などを行うことも重要で,タスクチームとしての対処が患者の生命予後を左右する.
著者
野村 岳志
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.612-618, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1

腹直筋鞘ブロック,腹横筋膜面ブロック,傍脊椎ブロックは胸壁,腹壁の体性痛管理に用いられている.特に超音波ガイド法の普及によって安定した効果発現と合併症の低下を認め,近年広く普及してきた.硬膜外ブロックに比べて鎮痛作用は劣るものの創痛管理中の副作用は少ない.最近推奨されている多様性(multimodal)疼痛管理の一法として,これらのブロックを併用すると,早期離床に向けた優れた術後痛管理が可能となる.しかし,比較的簡便な手技とはいえ,コンパートメントブロックのため局所麻酔薬の1回投与量は多い.異所投与では効果不十分で,局所麻酔薬中毒の可能性のみ高くなる.より安定した手技となるよう解剖学的構造や超音波画像の理解が重要である.
著者
清野 雄介 野村 岳志
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.125-129, 2020-01-01

高拍出性心不全は,体血管抵抗の低下,水分貯留と血管内容量の増加,心拍出量の増加が特徴であり,甲状腺中毒症,敗血症,チアミン欠乏症,慢性貧血,動静脈瘻,慢性肺疾患,肝疾患,Paget病などが原因で発症する。心拍出量が増えているにもかかわらず生体の酸素需要を十分に満たせないために,組織低酸素になるとされる。血流の供給不足は通常の心不全と同様の神経体液性因子の反応をまねき,レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系やアドレナリン作動性神経系の活性化,抗利尿ホルモンの過剰分泌をきたす。高拍出性心不全に確立した治療法はないが,高心拍出状態の原因疾患の治療および水分貯留の解除と体血管抵抗の制御が必要となる。
著者
須釜 淳子 石橋 みゆき 大田 えりか 鎌倉 やよい 才藤 栄一 真田 弘美 中山 健夫 野村 岳志 山田 雅子 仲上 豪二朗 佐藤 直子 柴田 斉子 長谷 剛志 深田 順子 三鬼 達人 有田 弥棋子 浦井 珠恵 大川 洋平 北村 言 臺 美佐子 高橋 聡明 玉井 奈緒 飛田 伊都子 野口 博史 松本 勝 三浦 由佳 向井 加奈恵 麦田 裕子 吉田 美香子 倉智 雅子 白坂 誉子 山根 由起子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.790-810, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
58

目的:本資料は,日本看護科学学会より公開した「看護ケアのための摂食嚥下時の誤嚥・咽頭残留アセスメントに関する診療ガイドライン」の要約版である.方法:本診療ガイドラインは,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,研究エビデンスと益と害のバランス,患者の価値観などに基づき作成された.結果:身体診査技術を用いた系統的アセスメント,反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,フードテスト,頸部聴診法,超音波診断装置による嚥下観察,内視鏡による嚥下観察に関するクリニカルクエスチョンをもとに,10の推奨が作成された.8つの推奨はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)2Cとして評価され,残りの2つはGRADEなしとして評価された.結論:看護ケアのためのアセスメントに焦点を当て,最新の知見を盛り込んだ信頼性の高い診療ガイドラインが作成された.本資料は要約版であり,臨床実践への活用が期待される.
著者
野村 岳志
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.123-132, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
41

肺エコー診断が集中治療領域に浸透してきている。肺エコーの利用といえば胸腔内の液体貯留の確認のみと考えられていたが,プロトコール化されたアーチファクト画像の理解により種々の病態が把握できるようになった。肺をエコーで診るというより,胸膜の動きと種々のアーチファクトを組み合わせて肺の状態を把握すると考えたほうが分かりやすい。そしてベッドサイドで短時間に種々の病態が診断できるようになり,不安定な患者状態のpoint-of-care診断に占める肺エコー診断の役割が増している。今後,異常呼吸音,副雑音などを聴診技法で教育するように,肺エコーも教育が必須となる診断技法と考える。この総説では,基本的な知識と主に診断に用いられる所見,肺エコーでの代表的な診断法,またピットフォールなどについて解説する。