著者
野田 幹雄 北山 和仁 新井 章吾
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.5-13, 2002-07-15
被引用文献数
15 5

アイゴ科魚類は、インド・太平洋の熱帯・亜熱帯水域に分布の中心をもち、全世界で27種が知られている。いずれの種も植食性で、緑藻・紅藻・褐藻類に属する糸状の微小藻類や葉状・樹枝状・膜状の芝生状の海藻類を主要な食物源とするグループである。アイゴ科魚類の中でもっとも広範囲の緯度(本邦中部域からオーストラリア南部)にわたって分布するアイゴもその例外ではないと考えられている。また、アイゴ科魚類はシンガポール・フィリピン・パラオ・ハワイなどの熱帯地方や地中海東部のイスラエルにおいて重要な水産資源であり、上述した食性上の特性から低蛋白質餌料による低コストでの養殖の可能性が検討され、各地で増養殖に対する研究がさかんに行われている。本邦でもアイゴ科魚類は沖縄県では水産上重要な有用種である。一方、本邦温帯域では藻食性魚類の採餌活動が天然藻場の衰退に深く係わるとともに、藻場造成や海藻養殖の成否にも大きな影響力をもつことが近年指摘されており、その原因種の一つとしてアイゴが注目されている。実際、本種がコンブ目とヒバマタ目の大型褐藻類を採食することは、野外での行動観察や水槽内での採餌実験において確認されている。しかし、自然条件下での本種の食性については極めて断片的な知見が散見されるにすぎず、定量的に調査された報告は見あたらない。
著者
野田 幹雄 大原 啓史 浦川 賢二 村瀬 昇 山元 憲一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-16)
参考文献数
47
被引用文献数
3 7

多種混生のガラモ場に出現したアイゴ成魚を昼間水中銃で採集し,胃と腸の内容物の分析と餌としての大型褐藻類の評価をした。胃内容物の重量組成では大型褐藻類が夏に 45% と秋に 74% を占め,ホンダワラ類数種の選択的採餌が示唆された。動物も胃で夏に 18% と秋に 14% を占め,固着動物が優占し,腸内容物の分析では浮遊性動物も重要であった。また,固着動物及び小型甲殻類の各々と大型褐藻類の摂取量の間に相関はなかった。本種は動物性餌料を重要な栄養源としながらも,大型褐藻類自体の採餌のために藻場を利用すると考えられた。
著者
桐山 隆哉 野田 幹雄 藤井 明彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.431-438, 2001-12-20
参考文献数
9
被引用文献数
22

藻食性魚類7種(メジナ,ブダイ,アイゴ,ニザダイ,ウマヅラハギ,カワハギ,イスズミ)にクロメを投与し,摂食状況を観察したところ,ブダイ,アイゴ,イスズミの3種がクロメをよく摂食した。<BR>これら3種の摂食痕は,口器の形状を示す弧状の痕跡の形や大きさ,中央葉部や茎部等の厚みのある部位の縁辺や摂食面に残る痕跡に相違があり,魚種による特徴が認められた。<BR>これらのことから,海中林において葉状部が消失する現象が発生した場合,残された痕跡が新しければその特徴を比較検討することで,魚類の摂食の有無や摂食した魚種の推定が可能であると考えられた。
著者
野田 幹雄 田原 実 片山 貴之 片山 敬一 柿元 晧
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.37-46, 2002-03-25
被引用文献数
10

1996年2月から2年間にわたり瀬戸内海中部水域の4地点に設置された4種類の付着基質の餌料培養効果が比較された。使用した付着基質は、マガキ殻、アコヤガイ殻、砕石のいずれかを集積した塊をポリエチレンメッシュ(目合20×25mm)で覆い、直径15cm、長さ30cmのパイプ状にしたものと同サイズの円柱状コンクリートである。メッシュパイプの基質は、内部に多くの空隙をもつ点に特徴があった。24ヵ月浸漬後の付着動物相の比較では、どの基質もフジツボ類とホヤ類が優占したが、コンクリート区に比べ内部空隙のある基質では十脚類と軟体動物(腹足類と二枚貝類のみ)が着生量および出現種ともに増加した。付着動物量の経月変化の比較でも、内部空隙のある基質で付着動物と餌料動物の着生量は高い状態で推移し有意差が認められた。この傾向は特に十脚類で明瞭であった。このような付着動物相の相違は、基質構造の相違に由来することが示唆された。