著者
山名 裕介 浜野 龍夫 山元 憲一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.299-306, 2005 (Released:2005-07-20)
参考文献数
12
被引用文献数
14 12

伸縮する成体マナマコの体長を正確に測定するために,麻酔方法を検討した。未変性エタノールの 10% 海水希釈液にメントールを飽和溶解させ,これを濾過して基準液を作成した。基準液の 40% 海水希釈液が,成体マナマコに対して効果的な麻酔剤であった。この麻酔液に浸漬したナマコは,体色型,体サイズ,水温に関係なく,体長変化が止み,口縁触手が弛緩して伸び,かつピンセットで体表を突付いても無反応な状態となった。麻酔時の体長は変動幅が小さく,新測定基準として有効と考える。
著者
山元 憲一 半田 岳志
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.11-18, 2012-03-20 (Released:2015-03-23)
参考文献数
9

トラフグの口腔内圧,鰓腔内圧,口腔と鰓腔の圧差,胃内圧,口からの吸入水量,口からの排出水量および胃の膨張度合いを連続測定した。色素を鰓腔へ注入し,胃から採水して,水の移動を観察した。これらの結果から,鰓換水および胃の膨張機構を解析し,モデル化した。トラフグは,口腔内圧,鰓蓋内圧およ口腔と鰓腔の圧差を利用し,口腔弁,鰓蓋弁および食道括約筋を能動的に開閉することによって,胃の膨張および膨張からの収縮を行っていることが明らかとなった。
著者
山元 憲一 半田 岳志 茅野 昌大 藤本 健治 原田 裕子 丸岡 詳治
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.183-188, 2002-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11
被引用文献数
2

換水量を連続して直接測定する装置で, 酸素飽和の状態において水温16.0±0.1℃でマナマコ, Apostichopus japonicusの換水を調べた。換水は, 一回の大きな呼出と複数回のほぼ等間隔に行われる吸入を一周期として行っていた。1換水周期での呼出時間は10.6±1.3sec/cycle, 呼出水量 (Vcy, ex) は95.5±20.0ml/cycle/kg, 一分間当たりの呼出回数は0.7±0.1stroke/minおよび一分間当たりの呼出水量は67.5±18.8ml/min/kgであった。1換水周期での吸入時間 (Tin) は79.5±26.3sec/cycle, 吸入水量 (Vcy, in) は95.8±26.4ml/cycle/kg, 吸入回数 (If) は10.3±2.9stroke/cycle, 吸入一回当たりの吸入量は9.8±1.8ml/stroke/kg, 吸入一回当たりの吸入時間は7.8±1.6sec/strokeであった。Vcy, inとVcy, exの関係は, Vcy, ex=0.27Vcy, in+69 [R2=0.12] あるいはVcy, in=0.48Vcy, ex+53 [R2=0.13] で表された。IfとTinの関係は, Tin=8.2If-4.3 [R2=0.84] , IfとVcy, inの関係は, Vcy, in=7.0Tin-27 [R2=0.61] で表された。
著者
山元 憲一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.313-316, 1992-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
2

マナマコの1型であるクロナマコの酸素消費量は酸素飽和度が低下しても18.1℃では38.1%まで, 14.0℃では38.4%まで, 9.9℃では27.5%まで, ほぼ正常状態での値を維持し, さらに低下すると著しく減少した。酸素消費量は水温を徐々に低下させるとそれに伴って減少したが, 徐々に上昇させた場合および各水温に順応させた場合には, 水温の上昇に伴って増加し, それぞれ水温22.0あるいは23.0℃のところで最大となった。しかし, さらに水温が上昇すると減少した。
著者
山元 憲一 半田 岳志 藤本 健治
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.67-74, 2005-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

呼吸樹での換水運動から, マナマコのアカ, アオ, クロの高水温に対する抵抗性の違いを12, 22, 28℃から水温を上昇させて調べた。各水温から水温を上昇させてもアカ, アオ, クロはいずれも同様に, 水温28℃では, 換水量, 呼出1回の水量, 吸入1回の水量, 呼吸数および呼吸1回の吸入回数はほぼ同じ値を示した。22℃および12℃でも, 呼吸1回の吸入回数はほぼ同じ値を示したが, 換水量, 呼出1回の水量, 吸入1回の水量および呼吸数は水温の上昇に伴って増加した。これらのことから, 水温上昇に伴う換水運動の変化はアカ, アオ, クロに差違がないことが明らかとなった。しかし, 高水温に対する抵抗性はアオとクロがほぼ同じで, アカがそれらよりも弱いことが明らかとなった。
著者
野田 幹雄 大原 啓史 浦川 賢二 村瀬 昇 山元 憲一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-16)
参考文献数
47
被引用文献数
3 7

多種混生のガラモ場に出現したアイゴ成魚を昼間水中銃で採集し,胃と腸の内容物の分析と餌としての大型褐藻類の評価をした。胃内容物の重量組成では大型褐藻類が夏に 45% と秋に 74% を占め,ホンダワラ類数種の選択的採餌が示唆された。動物も胃で夏に 18% と秋に 14% を占め,固着動物が優占し,腸内容物の分析では浮遊性動物も重要であった。また,固着動物及び小型甲殻類の各々と大型褐藻類の摂取量の間に相関はなかった。本種は動物性餌料を重要な栄養源としながらも,大型褐藻類自体の採餌のために藻場を利用すると考えられた。
著者
山元 憲一 半田 岳志 西岡 晃
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.319-323, 2006-09-20
被引用文献数
7

リシケタイラギを用いて、換水および鰓繊毛運動に及ぼす低酸素の影響について水温20℃で調べた。換水運動は、酸素飽和の状態では入水口と出水口を時々開いて換水を行う断続型を示し、酸素分圧が60mmHgより低下するとそれらを常時開いている連続型に変化した。換水量は、酸素分圧の低下に伴って435ml/min/kg から酸素分圧54.9~38.7mmHgで1,862~1,888ml/min/kgへ4.3倍増加し、1.9mmHg以下に低下すると著しく減少した。小片の移動速度は、酸素分圧を14.0mmHgに低下するまでは酸素飽和の状態と同じ値を示し、2.0mmHg以下に低下すると著しく減少した。結果から、リシケタイラギは、低酸素になると換水運動を変化させ、著しい低酸素になると鰓の繊毛運動の活動度が低下して酸素摂取に必要な水量の換水が出来ずに窒息死すると推測した。