著者
中村 美詠子 尾島 俊之 野田 龍也 亀山 良子 福川 康之
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

フード・インセキュリティは物理的、社会的、経済的に食料アクセスが阻害された状態であり、近年、非伝染性疾患との関連が注目されている。本研究は日本におけるフード・インセキュリティの構成要素、該当状況、栄養状態、関連疾患について調査した。観察研究の結果 (1)多忙、遅いあるいは不規則な夕食等の時間的要因が主要な構成要素の一つであること、(2)日本人一般労働者や大学生に少なからず存在すること、(3)栄養摂取の乏しさやメンタルヘルスの低さに関連していることが明らかにされた。食環境対策推進においてはライフスタイルにおける時間的要素の変革が必要だろう。
著者
遠又 靖丈 辻 一郎 杉山 賢明 橋本 修二 川戸 美由紀 山田 宏哉 世古 留美 村上 義孝 早川 岳人 林 正幸 加藤 昌弘 野田 龍也 尾島 俊之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.679-685, 2014 (Released:2014-12-11)
参考文献数
10

目的 介護保険の統計資料を用いた研究において,健康日本21(第二次)の目標である「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」は,2011年から要介護 2 以上の認定者数が 1 年ごとに 1%ずつ徐々に低下した場合(健康寿命延伸シナリオ)に2020年に達成されうることが報告されている。本研究は,この健康寿命延伸シナリオを達成した場合の介護費・医療費の節減額を推定した。方法 要介護認定区分別の介護費・医療費(人口一人あたりの平均)の基礎資料として,介護給付費実態調査と宮城県大崎市の調査データを用いた。2011~2020年の自然経過(現状シナリオ)の要介護認定者数は,将来の人口構成が「日本の将来推計人口」のとおりで,年齢階級別の要介護認定者(要介護 2 以上で区分別)の出現割合が2010年と同じである場合とし推定した。次に,健康寿命延伸シナリオ達成による要介護認定者の減少人数を算出した上で,介護費・医療費の推定節減額を算出した。結果 各年次の要介護 2 以上の減少分がすべて「認定なし」に移行すると仮定した場合,2011~2020年の累計で 5 兆2,914億円が節減されると推定された。さらに要介護 2 以上の減少分がすべて「要介護 1」に移行すると仮定した場合,同期間の累計で 2 兆4,914億円が節減されると推定された。結論 健康日本21(第二次)の達成によって約 2 兆 5 千億円~5 兆 3 千億円の介護費・医療費の節減という,健康づくり政策の投資効果の目安が明らかとなった。
著者
久保 慎一郎 野田 龍也 明神 大也 東野 恒之 松居 宏樹 加藤 源太 今村 知明
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.11-19, 2017 (Released:2019-10-19)
参考文献数
3
被引用文献数
2

背景・目的 レセプト情報・特定健診等情報データベース (NDB) に含まれるレセプトデータは1カ月単位で発行される診療報酬請求データであり、患者単位での分析を行うには2種類の個人情報由来のIDを用いて「名寄せ」と呼ばれる紐づけ処理が必要であるが、その処理法についての十分な検討は未だなされていない。本研究では、NDBにおける2種類のIDが変化するパターンを整理し、名寄せを行う上での留意点を明らかにした。方法 2013年度のNDBデータを用い、名寄せの支障となる過誤の整理と、過誤が発生する件数と頻度の検証を行った。結果 2種類のIDはライフイベントによって変化するため過誤が発生しやすい。扶養の同性双子や、同性同名・同一出生日・同性患者が存在した場合、別人物を同一人物と誤認する第一種過誤が発生しやすい。また転職や離職、定年等で「保険者番号」「被保険者証等記号・番号」が変化し、養子や結婚による改姓や医療機関による氏名の表記ゆれによって同一人物を別人としてしまう第二種過誤が発生する。1年間の追跡だけで概ね11%のIDが変わる可能性があり、コホートから脱落する。追跡対象者の0.8%はID1とID2が同時に変わる可能性があり、1年あたり1%程度の対象者は追跡が困難な状況となると見積もられた。考察 名寄せの問題点として、2種類のIDがライフイベントに応じて変化することと、名寄せキー変数に乏しいことが挙げられる。名寄せ精度の検証については匿名でも同一人物であるコホート集団があれば、教師データとなりうる。今後、名寄せの精度を向上させる必要がある。