- 著者
-
鎌田 元一
吉川 真司
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1993
1)陰影ある古文書原本の調査寺社・図書館・博物館などに所蔵される古文書原本を調査し、詳細な調書を作成した。また調査した古文書については陰影の写真を収集した。これにより東大寺文書・東寺文書・栄山寺文書の大多数の調査を終了した。2)古代官印制度に関する検討律令を中心とする官印制度を検討した。大宝令制の内印が諸国への下達文書、外印がその案文に捺される印章で、養老令制と異なっていたこと、大宝元年に内印の様が諸国に領下されたことなどが明らかとなった。3)諸国印の変遷に関する検討諸国印の印影を広く収集・検討し、その変遷を探った。その結果、天平年間の諸国印が大宝四年鋳造のものと考えられること、大宝四年の国印鋳造が律令制国名表記の公定と一体の作業として行なわれたと見られること、国印の改鋳は八世紀中期を初発とするも国によって差があったこと、などが明らかになった。4)外印請印に関する検討主として儀式書を用い、外印請印の作法を検討した。外印請印は律令の「監印」に淵源したこと、曹司における文書行政の一環として平安時代中期まで政務空間を移すことなく行なわれたこと、などが明らかになった。5)平安時代の倉印に関する検討平安時代の倉印について、文献史料・印影の双方から検討を加えた。10〜11世紀の大和倉印の変遷が明瞭になり、また倉印は畿内近国の受領が京にあって執務する際に用いられたことが推定されるに至った。