著者
岩下 恵子 長嶋 等
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-87, 2008-07-31
参考文献数
24
被引用文献数
1

肝毒性を示すマイコトキシンのルブラトキシンB は脂肪肝を引き起こす.そこで脂肪蓄積メカニズムを解明するために,ルブラトキシンB で24 時間処理したマウス肝臓において蓄積した脂肪滴のタイプや,脂質合成系酵素であるグルコース- 6 -リン酸脱水素酵素(G6PD)と脂肪酸合成酵素の活性を調べた.オイルレッドO 染色では,ルブラトキシンB 処理したマウスから多数の小滴性の脂肪滴が観察された.脂肪酸合成のためのNADPH を供給するペントースリン酸回路において極めて重要な働きをするG6PD の活性は,ルブラトキシンB 処理によって顕著に上昇した.予想に反して,ルブラトキシンB は脂肪鎖を伸長させる脂肪酸合成酵素の活性を下げた.脂肪酸合成酵素は脂肪酸合成における律速酵素ではないので,ルブラトキシンB で処理されたマウスの活性でも脂肪蓄積には十分なのかもしれない.
著者
久城 真代 鄭 雅志 Thammawong Manasikan 小澤 徹 中川 博之 長嶋 等 岡留 博司
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.173-178, 2014

ゼアラレノン(ZEA)は小麦の主要な自然汚染物質であり、同じくフザリウム属菌産生カビ毒の一種であるデオキシニバレノール(DON)との共汚染が起こりやすい。小麦加工後のZEAの残存率を明らかにし、DONの残存率と比較するため、人工的にフザリウム属菌に罹病させた国産軟質小麦を用いて製粉を行い、小麦半加工製品(小麦粉)でのZEAの濃度変化を解析した。穀粒を製粉に供し、3種類のブレーキ粉(1B、2B、3B)、3種類のミドリング粉(1M、2M、3M)ならびに外皮分画(大ふすま、小ふすま)を得た。ストレート粉は6種全ての粉から調製し、ヒトの可食部となる上質粉は1B、1M、2Bと2Mから調製した。単一試験室で妥当性確認された、多機能カートリッジ精製とHPLC蛍光検出を用いる分析法にて、ストレート粉、上質粉、大ふすま、小ふすまに含まれるZEAを定量した。DONについても同様に定量を行った。ストレート粉におけるZEAの残存率は50%未満であり、DONの残存率より低かった。上質粉でのZEAの残存率はさらに低く、粉の分画によりZEAが効率的に減衰することが示された。
著者
ホッセン シャリフ Md. 吉田 めぐみ 中川 博之 長嶋 等 岡留 博司 中島 隆 久城 真代
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.77-82, 2012-07-31
参考文献数
17
被引用文献数
2

国産秋まき小麦の製粉過程におけるフザリウム属マイコトキシン・ニバレノールの動態を解析した.ニバレノール濃度が異なる2種類の小麦子実を用いてそれぞれ試験製粉を行い,6つの粉画分(ブレーキ粉:1B,2B,3B,ミドリングス粉:1M,2M,3M)と2つの外皮画分(大フスマと小フスマ)を得た.また可食部となる上質粉は1B,1M,2Bおよび2Mより,また末粉は3Bおよび3Mより作製した.上記4種類の試料(上質粉,末粉,大フスマおよび小フスマ)についてHPLC-UV法によりニバレノール含量を分析した.その結果,ニバレノール濃度が異なる2種類の小麦子実試料ともに製粉画分におけるニバレノールの分布は類似のパターンを示した.
著者
後藤 哲久 長嶋 等 吉田 優子 木曽 雅昭
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.83, pp.21-28, 1996-07-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
23
被引用文献数
6 17

市販録茶試料7茶種85点の8種のカテキン類とカフェインの含有量を測定した。玉露,抹茶は煎茶,玉緑茶と比較してやや多くのカフェインを含む一方総カテキン量は少なかった。同じ茶種の中では,上級茶は一般に下級茶より多くのカフェインを含み総カテキン量は低かった。個々のカテキン類の中では,エピガロカテキンガレート(EGCg)の含有量が最も多く,総カテキン量の50~60%を占め,エピガロカテキン(EGC)と合わせた量は総量の約80%であった。遊離型カテキン(EC,EGC)の含有量は,エステル型カテキン(ECg,EGCg)の,煎茶,玉緑茶では半分以下,玉露,抹茶では1/3以下であった。玉露,抹茶では多くの試料からカテキン(C)が検出されたが,それ以外の微量カテキン類はほとんど検出されなかった。ほうじ茶のカテキン類は,加熱による変化を受けるためか量的にも少なく,その組成も他の茶種と大きく異なっていた。