著者
玉那覇 康二
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.55-65, 2013-01-31
参考文献数
21

沖縄県は,日本列島の南に位置しており亜熱帯気候による自然毒食中毒は,気候や自然環境が反映されており,全国と異なっている.<br> 沖縄県で発生している2001年から2010年までの 10年間の食中毒事例を見ると,自然毒食中毒の年平均は24%であり,更に自然毒食中毒のうち,動物性自然毒食中毒が91%と大半を占めている.<br> 動物性自然毒のほとんどがサンゴ礁に生息する魚介類によるシガテラ食中毒である.シガテラ以外にも,ウリ科植物によるククルビタシン中毒,熱帯性キノコであるオオシロカラカサタケや麻薬成分を含有する幻覚性キノコによる食中毒も発生しており,これらについても事例を紹介する.
著者
岩下 恵子 長嶋 等
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-87, 2008-07-31
参考文献数
24
被引用文献数
1

肝毒性を示すマイコトキシンのルブラトキシンB は脂肪肝を引き起こす.そこで脂肪蓄積メカニズムを解明するために,ルブラトキシンB で24 時間処理したマウス肝臓において蓄積した脂肪滴のタイプや,脂質合成系酵素であるグルコース- 6 -リン酸脱水素酵素(G6PD)と脂肪酸合成酵素の活性を調べた.オイルレッドO 染色では,ルブラトキシンB 処理したマウスから多数の小滴性の脂肪滴が観察された.脂肪酸合成のためのNADPH を供給するペントースリン酸回路において極めて重要な働きをするG6PD の活性は,ルブラトキシンB 処理によって顕著に上昇した.予想に反して,ルブラトキシンB は脂肪鎖を伸長させる脂肪酸合成酵素の活性を下げた.脂肪酸合成酵素は脂肪酸合成における律速酵素ではないので,ルブラトキシンB で処理されたマウスの活性でも脂肪蓄積には十分なのかもしれない.
著者
ホッセン シャリフ Md. 吉田 めぐみ 中川 博之 長嶋 等 岡留 博司 中島 隆 久城 真代
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.77-82, 2012-07-31
参考文献数
17
被引用文献数
2

国産秋まき小麦の製粉過程におけるフザリウム属マイコトキシン・ニバレノールの動態を解析した.ニバレノール濃度が異なる2種類の小麦子実を用いてそれぞれ試験製粉を行い,6つの粉画分(ブレーキ粉:1B,2B,3B,ミドリングス粉:1M,2M,3M)と2つの外皮画分(大フスマと小フスマ)を得た.また可食部となる上質粉は1B,1M,2Bおよび2Mより,また末粉は3Bおよび3Mより作製した.上記4種類の試料(上質粉,末粉,大フスマおよび小フスマ)についてHPLC-UV法によりニバレノール含量を分析した.その結果,ニバレノール濃度が異なる2種類の小麦子実試料ともに製粉画分におけるニバレノールの分布は類似のパターンを示した.
著者
岡野 清志 富田 常義 久米田 裕子 松丸 恵子 一戸 正勝
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.107-114, 2008-07-31
被引用文献数
1 4

わが国に輸入される生落花生のうち,主要輸入国の試料について,年間,約2,300-3,000 検体について2002 年から2006 年までのアフラトキシン(AF)検査の結果をとりまとめた.5年間の調査期間において,中国,南アフリカ,米国およびパラグアイ産の落花生についてAFB<sub>1</sub>,B<sub>2</sub> が検出されるものとAFB<sub>1</sub>,B<sub>2</sub>,G<sub>1</sub>,G<sub>2</sub> が検出されるものと比較するとともに,わが国のAFB<sub>1</sub> 単独10 μg/kg 規制した場合と,国際的に採用されているB 群,G 群AF を総量15 μg/kg で規制した場合を想定して検査試料数に対する規制値を超える試料の比率を集計した.結果として,試料数の多かった中国産落花生ではAFB<sub>1</sub> 単独規制では0.4-0.8 %が規制値を超え,AFBG 総量規制では0.4-1.1 %が規制値を超えていて,ほとんど同様であった.南アフリカ産落花生でも同様で,AFB<sub>1</sub> 単独規制では0.3-1.0 %,AFBG 総量規制で0.3-1.2 %が規制値を超えていた.輸入落花生由来菌につき,AF汚染の原因となる<i>Aspergillus</i> section <i>Flavi</i> に所属する菌について形態的,AF およびシクロピアゾン酸の産生性,heteroduplex panel analysis(HPA)による識別を検討したところ,中国産AFBG 検出試料の汚染原因は<i>A. parasiticus</i> であったのに対し,南アフリカ産AFBG 検出試料から分離した菌株には<i>A. prasiticus</i> のほかに小型の菌核を多数形成し,AFBG 群を産生する非典型的な<i>A. flavus</i> が存在した.この菌種はsection <i>Flavi</i> に関するHPA においてAfF4 に属する菌株であった.
著者
杉浦 義紹
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.49-61, 2012-07-31
被引用文献数
2

フザリウム属菌はごくありふれた糸状菌で,世界的に広く作物畑に分布している.その中のいくつかの菌種はトリコテセン類,ゼアラレノン,フモニシン類などのカビ毒を産生することで知られ,それらはヒトや動物のカビ毒中毒症と係わりがある.1980年以来,数種のフザリウム属菌の化学的な特徴を研究して来た.その研究にはフザリウム・クロックウェレンスの植物病原性とフザリウム・ソラニのマウス病原性も含まれている.本総説ではこれまでの実験的なフザリウム研究の概略とその研究中に得た経験をいくつか紹介する.
著者
伊藤 綾子 渡辺 康 中島 正博
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.7-13, 2008-01-31
被引用文献数
1

チョコレート中のアフラトキシン(アフラトキシンB<sub>1</sub>, B<sub>2</sub>, G<sub>1</sub>, G<sub>2</sub>;AFs)分析法を確立し、室内再現精度の確認を実施した。チョコレート中のAFsは、アセトニトリル-メタノール-水(60+10+40, v/v/v)で抽出し、イムノアフィニティカラムにより精製後、蛍光検出HPLCにて定量を行った。試料にAFs標準液を0.1および10.0 μg/kgの濃度となるように添加し、日内および日間における繰り返し試験を行った結果、全てのAFsにおける回収率は90-97 %、併行再現性の相対標準偏差は1.7-3.3 %、日間再現性の相対標準偏差は0-4.1 %、異日分析における室内再現性の相対標準偏差に対するHorRatは、全て0.2以内であった。以上の結果から、チョコレート中のAFsは本法により精度良く分析できる事が確認された。
著者
作田 庄平
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.79-86, 2010-07-31
被引用文献数
16 4

<i>Aspergillus parasiticus</i>によるアフラトキシン生産あるいは<i>Fusarium graminearum</i>によるトリコテセン生産に対する阻害活性を指標として,微生物の代謝物および精油を対象に活性物質の探索を行った.その結果,放線菌の生産するアフラスタチン類,ブラストサイジンAおよびS,ジオクタチンAがアフラトキシン生産を強く阻害することを見出した.また,精油成分であるディルアピオール,アピオールおよびスピロエーテルがアフラトキシンG<sub>1</sub>を特異的に阻害することを見出し,さらにスピロエーテルはトリコテセン生合成の鍵酵素であるTRI4の酵素活性を阻害しトリコテセン生産を抑制することを示した.また,特異的なトリコテセン生産阻害物質として精油からプレコセン類およびピペリトンを単離した.得られた阻害物質はアフラトキシンあるいはトリコテセン汚染防除剤開発におけるリード化合物として有用であり,それらの作用点はより効果的な薬剤を得るために重要であるばかりでなく,カビの二次代謝産物生産調節機構を解明する上での貴重な情報を与える.