著者
涌井 架奈子 松井 成明 安田 政実 伊藤 仁 平林 健一 梶原 博 村上 優 佐藤 慎吉 長村 義之
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 = THE JOURNAL OF THE JAPANESE SOCIETY OF CLINICAL CYTOLOGY (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.269-274, 2008-07-22
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

<b>目的</b>: 子宮体部明細胞腺癌 (以下, 体部明細胞腺癌)における腫瘍細胞の出現パターンについて検討を行った.<br><b>方法</b>: 当院で組織診, 細胞診のいずれからも体部明細胞腺癌と診断された 6 例 (純粋型 3 例, 混合型 3 例) を対象とした. 細胞材料は全例エンドサイトで採取されたものを用い, 1) 細胞集団の出現パターン, 2) 散在性裸核細胞に着目した検討を行った.<br><b>成績</b>: 腫瘍細胞は大型乳頭状集団, 11.4%; 小型乳頭状集団, 41.8%; シート状集団, 38.0%; 重積性集団, 8.9%の出現率を示していた. ミラーボール集団はみられず, 基底膜様物質の出現はわずかであった. 一方, 類内膜腺癌においては小型乳頭状集団, 重積性集団が比較的高い頻度で認められた. 散在性裸核細胞は明細胞腺癌 6 例すべてに認められ, 平均 10 個, 核面積は平均 138.1&mu;m<sup>2</sup>を示していた. また, これらを類内膜腺癌に出現する散在性裸核細胞と比較した場合, 出現数, 核形態に相違を認めた.<br><b>結論</b>: 子宮体部明細胞腺癌は主だった 5 つの出現パターンを示す腫瘍細胞が混在し, 特に小型乳頭状集団, シート状集団, 散在性裸核細胞に留意することが重要と考えられた. また, 散在性裸核細胞は類内膜腺癌と比較して, 出現数, 核形態に相違があり, 両者の鑑別に有用な情報を与えるものと考えられた.
著者
平園 賢一 篠塚 孝男 伊藤 仁 川井 健司 堤 寛 長村 義之
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.37-41, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
5

今回われわれは, 子宮頸部の神経内分泌細胞癌2例を経験し, 検討したので報告する.症例は32歳と50歳の主婦. ともに子宮頸部Ib期の臨床診断にて, 広汎子宮全摘および所属リンパ節郭清施行後, 50Gyの外照射を行ったが6ヵ月から1年で血行転移を来し, 化学療法 (CAP) を施行したが効果なく術後2年足らずで死亡した. 細胞像は, 孤立散在性または集団状に出現し, いわゆる対細胞もみられた。細胞はリンパ球よりやや大きく円形ないしは楕円形で大小不同を認めた. 細胞質は乏しく裸核状のものも多く, 核クロマチンは中等度増量し粗大顆粒状, 核小体は著明ではないが出現する場合は数個認められた. 組織像は, 主に小型で未分化な腫瘍細胞が充実性シート状に配列し, 一部カルチノイドにみられるような索状およびロゼット形成が認められ, 腺癌病変も一部に認められた. また腫瘍細胞に一致してグリメリュウス, 神経内分泌マーカーであるクロモグラニンA, NSE, Leu 7, 上皮性マーカーであるサイトケラチン, EMAが陽性を示した. 電顕的には細胞質に神経内分泌顆粒が認められた.
著者
平園 賢一 篠塚 孝男 藤井 明和 堀 貞明 伊藤 仁 川井 健司 佐藤 慎吉 長村 義之
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.1069-1074, 1992
被引用文献数
3

パルボウイルスB19 (以下B19) は伝染性紅斑, いわゆるリンゴ病の病原体であり, 成人でも風邪様症状や関節炎を起こし, 特に妊婦が妊娠初期から中期にかけて感染すると胎児水腫などを引き起こし流早死産になることが明らかになってきた. 現在, 産科的に風疹やサイトメガロウイルスにつぐ重要なウイルスとして注目されている.<BR>〈症例〉胎齢25週2日の男児死産児. 母親は28歳, 保母. 妊娠10週頃に伝染性紅斑に患, 妊娠22週の超音波検査にて胎児水腫を指摘され当院産科を受診し, B19感染による非免疫性胎児水腫が疑われた. 25週2日子宮内胎児死亡のため人工中絶となった.<BR>〈剖検〉全身浮腫と著明な胸腹水の貯留を認めたが外表奇形, 内臓奇形はみられなかった. 剖検時の腹水細胞診では細胞の変性強く核内封入体を有した感染細胞は明らかでなかったが, 酵素抗体間接法 (B19に対するモノクロナール抗体) により感染細胞の細胞質に特異抗原を認めた. また諸臓器 (肝, 脾, 肺, 腎, 骨髄, 胎盤など) に核内封入体を有する感染赤芽球が多数認められ, 酵素抗体法にて陽性が認められた. また胎児胸腹水のPCR法分析および組織電顕にてB19を確認した.<BR>〈考察〉本邦の妊娠可能女性の50%から80%はB19抗体陰性といわれており, 感染時に定形的な紅斑を示さないことが多いとされる. またB19IgM陽性妊婦の約10%に胎児水腫が発症したとの報告があり, その致死率も高い. 早期診断のためにも簡便でかつ臨床応用可能な細胞診は有用であると思われた.
著者
垰田 高広 原 康 増田 弘行 根津 欣典 山王 なほ子 寺本 明 竹腰 進 長村 義之 多川 政弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-7, 2006-01-25

正常ビーグル犬における下垂体切除後の飲水量と尿量の顕著な増大を主徴とする尿崩症様症状は, 術後2週間以内に自然消退することが報告されているが, その機序についての詳細は明らかにされていない.そこで, 健常犬に対して下垂体切除を行い, 下垂体切除が高張食塩水負荷による血清ナトリウム濃度, 血清浸透圧の上昇に対するアルギニンバソプレッシン(AVP)分泌動態に及ぼす影響について調査した.さらに下垂体切除後の間脳視床下部組織における室傍核および視索上核のAVP産生および分泌細胞である大細胞性ニューロンの細胞数を計測することにより, 下垂体切除がAVP産生能に及ぼす影響についても検討した.高張食塩水負荷試験の結果では, 下垂体切除後においても血漿AVP濃度は食塩水負荷に反応してわずかな上昇を示したが, その割合は対照群と比較して大きく低下しており, 1ヶ月および3ヶ月間の観察期間内では臨床的に尿崩症様症状を抑制するものの, 急激な食塩水負荷に反応できるほど回復していないものと考えられた.間脳視床下部の室傍核と視索上核の免疫組織化学的調査では, 下垂体切除によってAVP陽性細胞数が減少する傾向が示された.これらの結果から, 下垂体切除により大細胞性ニューロンの機能的, 数的減少が認められたこととなり, 術後におけるAVP分泌能の回復は臨床的な術後尿崩症様症状の改善と関連していないことが示唆された.