著者
青木 忍 天尾 弘実 斎藤 徹 斎藤 学 高橋 和明 多川 政弘
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.569-572, 1991-10-01 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6

モルモットの精巣摘出手術を腹部正中線および陰嚢の2ルートから行って, 手術時間, 術後の経過, 術創の治癒状況を比較し, いずれの手術ルートがモルモットに負担をかけずに, かつ安全に実施できるかを検討した。その結果, 手術時間には, 両者間に有意差は認められなかった。腹部正中線切開法では, 術後の経過が良く, 1週後の術創の治癒状況も良好であった。しかし, 陰嚢切開法では, 鞘膜臓側板や精巣白膜が薄く手術時に精巣実質を傷つけて精巣内容物を周囲に飛散させる危険性が高かった。そして, 治癒状況も不良であり, 5例中4例に陰嚢内化膿が見られた。以上の結果より, モルモットの精巣摘出手術法としては, 腹部正中線切開法が陰嚢切開法より適していた。
著者
伊東 久徳 原 康 吉見 奈津子 原田 恭治 根津 欣典 余戸 拓也 越智 広樹 長谷川 大輔 織間 博光 多川 政弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.701-706, 2008-07-25
参考文献数
28
被引用文献数
2 34

日本において椎間板ヘルニアに罹患した犬の297症例に対して,遡及的に疫学的特徴の検討を行った.診療記録から,犬種,性別,年齢,罹患椎間板,神経学的重症度の診療情報を記録した.罹患部位から132症例の頸部椎間板ヘルニア群と165症例の胸腰部椎間板ヘルニア群に分類した.日本では,頚部および胸腰部椎間板ヘルニアに罹患する主な犬種はダックスフント,ビーグルおよびシーズーであることが確認された.日本特有の犬種である柴犬に関しては,全体に対する割合は少ないながらも,両部位の椎間板ヘルニアに罹患することが確認された.また,日本において本疾患に罹患する犬の性別の分布は,欧米の報告と異なり,雄が雌に対しての2倍の割合であった.主要な3犬種であるダックスフント,ビーグルおよびシーズーにおける検討では,発症年齢は,ダックスフント,ビーグル,シーズーの順番で高い傾向が確認された.そして,シーズーは,3犬種の中で多発性の病変を伴う傾向が見られた.日本の椎間板ヘルニアの疫学的な特徴は,これまでの欧米における報告と類似していたが,日本独自の特徴もまた確認された.
著者
垰田 高広 原 康 増田 弘行 根津 欣典 山王 なほ子 寺本 明 竹腰 進 長村 義之 多川 政弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-7, 2006-01-25

正常ビーグル犬における下垂体切除後の飲水量と尿量の顕著な増大を主徴とする尿崩症様症状は, 術後2週間以内に自然消退することが報告されているが, その機序についての詳細は明らかにされていない.そこで, 健常犬に対して下垂体切除を行い, 下垂体切除が高張食塩水負荷による血清ナトリウム濃度, 血清浸透圧の上昇に対するアルギニンバソプレッシン(AVP)分泌動態に及ぼす影響について調査した.さらに下垂体切除後の間脳視床下部組織における室傍核および視索上核のAVP産生および分泌細胞である大細胞性ニューロンの細胞数を計測することにより, 下垂体切除がAVP産生能に及ぼす影響についても検討した.高張食塩水負荷試験の結果では, 下垂体切除後においても血漿AVP濃度は食塩水負荷に反応してわずかな上昇を示したが, その割合は対照群と比較して大きく低下しており, 1ヶ月および3ヶ月間の観察期間内では臨床的に尿崩症様症状を抑制するものの, 急激な食塩水負荷に反応できるほど回復していないものと考えられた.間脳視床下部の室傍核と視索上核の免疫組織化学的調査では, 下垂体切除によってAVP陽性細胞数が減少する傾向が示された.これらの結果から, 下垂体切除により大細胞性ニューロンの機能的, 数的減少が認められたこととなり, 術後におけるAVP分泌能の回復は臨床的な術後尿崩症様症状の改善と関連していないことが示唆された.