著者
門脇 基二
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.41, 2017 (Released:2018-02-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1

米は日本人の主食である。従って、そのおいしさについては誰もが専門家だが、なぜか健康への機能性についてはあまり好ましい話題に上ることが多くない。特に白米についてはそうだ。米はデンプン食品と言われ、食事中最大のエネルギー供給源であるが、実はタンパク質供給源としても重要な食品である。我が国における食品群別一日タンパク質摂取量では、米・米加工品は肉類、魚介類に次ぐ第3 位を占めていることは意外に知られていない。そこで私どもは、これまで全く解明のメスが入っていない米タンパク質の機能に注目してみた。研究開始当初は精製タンパク質が入手できず、基礎的知見も十分でなかったため、まず米タンパク質の消化性という基礎的・栄養的研究から始めた。その結果、米胚乳タンパク質のひとつである難消化性タンパク質プロラミンが、調製処理や炊飯処理によってその消化性が大きく低下することを初めて発見した1)。この成果は、従来米タンパク質の栄養上の低品質が植物タンパク質固有の性質に由来するとみなされていたのが、実は炊飯等の加工処理によって初めて生成するものであるという新しい理解へ導くに至った。 次に、米タンパク質の新規機能性の探索を広汎に推進した。米タンパク質の機能性に関する報告はそれまでほぼ皆無であったため、マイクロアレイによる網羅的解析を試みたが簡単ではなかった。そこで、先行研究が多く存在している大豆タンパク質を参考に、米胚乳タンパク質が大豆タンパク質と等価の血漿中性脂肪・コレステロール低下作用を有していることを明らかにした。次いで、糖尿病に対する米タンパク質摂取の効果について検討を行ったところ、消化管ホルモンであるインクレチンのひとつ、GLP-1 の分泌促進作用があることが示された2)。また、非肥満2 型糖尿病モデルGK ラットおよび肥満2 型糖尿病モデルZDF ラットの長期試験において、米タンパク質が糖尿病性腎症の進行を遅延させる機能を有していることを証明した3)。この成果はタンパク質摂取量の制限のみに注目している現在の慢性腎疾患の食事療法に一石を投じるものであり、今後は量の制限だけでなく、タンパク質の種類にも注目した治療法が広がることになるであろう。特にこの米タンパク質はリン、カリウムなどのミネラルが極めて少ないことから、透析患者への副作用のないタンパク質栄養剤として有効であることがヒト試験により証明された。 米はユネスコ無形文化遺産登録により評価された「和食」の中心に位置する食品であり、日本人の健康維持に大きく寄与している食品である。これまでその米、特に白米には明確な機能性が報告されてこなかったが、新たな発見を契機として、今後更なる機能性の発見につながっていくことが期待される。
著者
門脇 基二 藤村 忍
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

A.オートファジーに対するアミノ酸のシグナリング機構の解析1)アミノ酸シグナルのターゲットとしてのLC3の解析:肝細胞でオートファジー開始段階のマーカータンパク質であるLC3の不活性型(I型、遊離型)から活性型(II型、膜結合型)への変換がアミノ酸の刺激に応じて抑制的に制御することが示され、アミノ酸作用のターゲットがオートファゴソーム上のこの分子であることが証明された。細胞内分画をしたところ、細胞質画分にもII型の存在が認められた。この予想外の結果を追求したところ、Phase Partition法および特異的な酵素Atg4B法によるLC3のlipidationを検討したところ、いずれも否定的な結果となり、この細胞質に存在するLC3-II(LC3-Ils)は通常のもの(LC3-IIm)とは違う新しい型であると結論した。B.食品成分によるオートファジーの調節1)ビタミンCのオートファジー活性化機構アスコルビン酸(AsA)のオートファジー促進作用はアミノ酸の共存下でのみ証明された。その作用機構として、デヒドロアスコルビン酸(酸化型)も同様に効果を示したことから、その還元性は直接関与しない可能性が示された。また、AsA合成不能のODSラット肝細胞を用いて、細胞内AsAをゼロにした状態でも細胞外AsAはオートファジー促進能を維持し、またAsAの細胞内への特異的輸送を阻害してもその促進能は影響しなかったことから、AsAは細胞外から作用している可能性が示された。2)抗酸化剤とオートファジーの関係AsAとともにビタミンEも促進能を示したが、アミノ酸の共存は影響せず、両者の作用は異なることが示された。上記のAsAの結果から、単純に抗酸化性が有効であるとは考えられなくなった。さらに茶成分であるEpigallocatechin gallateにもこの促進能が認められ、広汎な食品成分にオートファジーの制御物質が存在することが強く示唆された。