- 著者
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関戸 英紀
- 出版者
- 横浜国立大学
- 雑誌
- 横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.235-247, 0000
本研究では,質問に対してエコラリアで応じるCA12歳5ヵ月の自閉症男児に対する言語指導について報告する。対象児は,「買い物・トーストづくり」ルーティンの文脈を用いて,五つの型の質問に対する適切な応答的発話の習得を目的とした指導を受けた。「買い物・トーストづくり」ルーティンは,"導入","買ってくる物を決める","買い物をする","トーストを作る","トーストを食べる"の五つの場面から構成された。対象児のほかに,3名の精神遅滞児と1名の指導者がこのルーティンに参加した。その結果から,次のことが検討された。1)ルーティンのスクリプトの理解が深まるにつれて,言語の理解と表出が促進された。2)対象児は,標的行動とした五つの応答的発話のうち三つを獲得することができた。この結果から,応答的発話に困難を示す自閉症児に,共同行為ルーティンの文脈を用いた言語指導を行うことによって,質問に対して適切に応答できるようになると考えられた。3)質問に対してエコラリアを示す自閉症児の適切な応答的発話の習得過程は,最初にエコラリアが消失し,その後誤答をへて,正答が表出されるようになる可能性が示唆された。4)What型,Which型,(Where型),Who型,Whose型,およびHow型の質問に対する応答的発話の習得の順序性に関しては,自閉症児と健常児は同様であると考えられた。