著者
一ノ瀬 俊明 陳 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.216, 2011

世界最速の都市化、自然条件の多様性というバックグラウンドを持つアジア地域の都市を対象に、環境配慮型都市デザインを実現するための研究を推進してきた。都市の物理的な形態、取り巻く自然条件の優位性、特有の政治・社会体制を最大限生かしたデザインを、日本国内では困難な社会実験(顕)などを通じて得られた知見(実証結果)をもとに提示し、グローバルな都市デザインへの貢献、都市計画のパラダイムシフト、低炭素都市実現への革新的ロードマップの提示をめざすものである。今日、経済的利潤の最大化よりも、よりよい環境の創造を優先させた都市計画の事例は存在せず(先進各国では実質的に不可能)、実現するとしたら、土地利用、都市計画における政策的トップダウンが有効であるアジア(中国など)をおいてほかにないとの考えのもと、数値シミュレーションではなく、実地で効果が検証できれば、都市計画の汎世界的なパラダイムシフトへ近づけるものと考えられる。これは、都市の普遍的な技術システム研究とは異なり、また、上記の視点は日本特有のものである。<BR> 手法としては、フィールド観測と数値シミュレーション、ワークショップが中心となる。その過程で、都市計画・建築計画に環境研究の結果を活かすために、その重要な要点を地図上に表現したもの(環境アトラス)を作成し、これをベースとした解析・議論を進める。たとえば、都市の自然を活かした暑さ対策は、その地域(都市)特有の自然条件、気候条件(海風や山風、緑地や河川)を活用するという意味では、特殊素材などの導入に比べ、空間スケールの大きな対策となりうるが、どこでも同じようにできるというものではない。またこの過程では、市民・行政官・専門家(研究者・デザイナー)がラウンドテーブルで、観測・シミュレーション結果、学術資料をもとに、都市環境に配慮した都市開発プランを討議し、合意形成を進めていくことが必要となる。このアプローチの有効性を確認し、普及させていくことにこの研究の意義がある。<BR> わが国と体制・制度・自然条件の異なる中国の都市において、制度的有利性に依拠した形での、新たな都市開発の方向性を模索し、都市の熱環境の悪化防止、あるいは改善を実現するような都市計画が具体の都市において実現することをめざし、武漢を対象として、数値計算や野外観測の結果にもとづき、来る3月にまちづくりワークショップを開催する。ここでは、「ヒートアイランド緩和策」を盛り込んだ市街地の整備プランなどの提案を行う。当日はその結果について報告する。<BR><BR>謝辞:本発表は、科研費基盤研究B「中国におけるクリマアトラスを通じた都市熱環境配慮型都市開発の実現」(代表・一ノ瀬俊明)の研究成果の一部である。
著者
一ノ瀬 俊明 花木 啓祐 泉 岳樹 陳 宏
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

華中科技大学と共同で、中国・湖北省・武漢市の長江両岸地区(武昌と漢口)において再開発が想定される地域を対象に、夏季と冬季の集中気象観測、ならびに街区スケールの気流等に関する数値計算を行った。観測からは、河道上の風速が強まるのと連動し、直交する街路上の風速が強まり、同期して気温の変動が生じていることが示された。また、気象観測や数値計算の結果にもとづき、ヒートアイランド緩和策を盛り込んだ市街地の整備プランを提案した。