著者
木田 秀幸 今野 武津子 高橋 美智子 近藤 敬三 飯田 健一 佐藤 繁樹 須賀 俊博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.312, 2008

〈緒言〉<I>Helicobacter.pylori</I>(<I>H.pylori</I>)は、グラム陰性の螺旋様桿菌で胃内に感染し胃炎、消化性潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫などの上部消化管疾患の病態に関与していることが明らかになっている。<I>H.pylori</I>の診断方法としては、血清及び尿中抗体測定(抗体)、便中抗原測定(HpSA)、尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ試験、病理組織学的検査、細菌培養などがある。唯一の直接的証明法である<I>H.pylori</I>の分離培養は、特異性に優れ菌株保存が可能なため抗菌薬の感受性検査や遺伝子学的解析を行うためには不可欠である。培養に用いる検体は胃粘膜生検が一般的であるが、我々は胃粘膜生検の他に胃液を検体とした<I>H.pylori</I>培養を1997年より行なっている。この10年間の培養経験と成績を報告する。<BR>〈対象と方法〉1997年3月から2008年3月までに腹痛を主訴に、当院小児科を受診し上部消化管内視鏡検査を施行した小児を対象とした。また、血清<I>H.pylori</I> IgG抗体(血清抗体)あるいは便中<I>H.pylori</I>抗原(HpSA)陽性患児とその家族も対象とした。<BR>患児95例は内視鏡検査と胃粘膜生検を施行し、その家族で<I>H.pylori</I>陽性の有症状者(既往も含む)にはインフォームドコンセント(I.C.)を得た後、82例に対し内視鏡下生検あるいは胃液を採取し培養を施行した。除菌後の検体を含む延べ培養総数は、289例(胃液培養111例、胃粘膜培養178例)であった。培地は<I>H.pylori</I>の選択分離培地である「ニッスイプレート・ヘリコバクター寒天培地」(日水製薬株式会社)を用い、微好気条件下で35℃(2005年10月までは37℃)ふらん器にて最大1週間の培養を行なった。結果の判定は、発育したコロニーのグラム染色を行い、グラム陰性螺旋菌であることを確認、ウレアーゼ試験、オキシダーゼ試験、カタラーゼ試験陽性となったものを<I>H.pylori</I>培養陽性とした。<BR>〈結果〉HpSA又は血清抗体陽性群78例の胃液培養では、68例が陽性で10例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は抗体陽性群118例の胃粘膜培養では、103例が陽性で15例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は血清抗体陰性群では胃液培養、胃粘膜培養共に全例が培養陰性であり特異度は100%であった。培養結果とHpSA及び血清抗体が不一致となった25例中9例に雑菌発育が認められ培養不可能であった。胃液と胃粘膜の雑菌発育に大きな有意差は認められなかった。1998年までは、HpSA又は血清抗体やウレアーゼ試験との不一致例が検体56例中18例(32%)、雑菌発育8例(14%)と培養成績に良好な結果が得られなかった。不一致18例中7例(39%)の原因は雑菌発育によるものであった。しかし、1999年以降の不一致は、検体233例中7例(3%)、雑菌発育2例(1%未満)と培養成績が明らかに向上した。<BR>〈結語〉我々は、胃液を検体とした<I>H.pylori</I>の培養を1997年から試行錯誤の中行なってきた。1998年以前の培養成績と他の検査方法との不一致や雑菌発育は、培地の使用方法や培養条件、検体処理方法等、様々な要因が示唆された。<BR>胃液検体は胃粘膜検体と比較しても十分な培養成績を得ることができた。また、胃液採取は、内視鏡を用いた胃粘膜採取と比較し患者への侵襲性が小さく、採取部位による影響も受けないことからも有用性が高いと考えられる。
著者
齋藤 光正 飯田 健一郎 Villanueva Sharon Y. A. M. 麻生 達磨 宮原 敏 尾鶴 亮 金丸 孝昭 瀬川 孝耶 吉村 芳修 池尻 真美 荒牧 夏美 日高 悠介 Chakraborty Antara Widiyanti Dian Muslich Lisa Tenriesa Amran Muhammad Yunus Gloriani Nina G. 小林 好江 福井 貴史 増澤 俊幸 柳原 保武 吉田 眞一
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

レプトスピラ症の感染成立から重症化(とくに黄疸発症)に至るまでの病態メカニズムについて次のような新知見が得られた。レプトスピラは、皮膚の角化層が失われると表皮細胞間(あるいは細胞内)を通過して皮下まで侵入し感染が成立する。感染初期は皮下脂肪組織の血管内に定着し増殖する。やがて増殖の場は肝臓が主体となる。肝臓のディッセ腔に達したレプトスピラは肝細胞間に侵入を始め、細胞間接着を剥がして毛細胆管の構築を破壊する。その結果胆汁排泄障害を来たし、黄疸が生ずる。したがって、血管内定着、肝細胞侵入の際の標的分子が明らかになれば、それらのアナログにより重症化への進展を阻止できることが期待できる。
著者
木田 秀幸 近藤 敬三 飯田 健一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.121, 2005

【はじめに】<BR>院内感染対策において臨床検査室は様々な役割を担っている。その中でも感染情報の提供は、治療薬剤選択や院内感染への迅速な対応に不可欠でありリアルタイムな情報が必要とされる。しかし日常業務の中で全ての医師にリアルタイムな情報提供を行なうことは困難であるのが現状である。そこで新しい感染情報提供の方法として株式会社富士通北海道システムズの協力の下、細菌Webの構築を行なったので報告する。<BR>【システム構成】<BR>当院オーダシステム及び検査システム更新(2004年3月1日)に伴い、Webサーバとして検査システムサーバを利用し、クライアントとしてLAN接続されている全てのオーダリング用及び検査システム用PCを使用した。<BR>ソフトウエアは、WebサーバInternet Information Server、情報データベースOracle、WebデータベースMicrosoft Access2002を用いた。クライアントの動作環境はInternet Explorer5.0以上、Adobe Acrobat Reader5.0以上とした。また、書類のスキャニングを行なうために当初設置予定であったレーザープリンタ1台をスキャナー付プリンタへ変更した。<BR>セキュリティ対策としては、ログイン情報、患者情報の暗号化や医師以外の閲覧者をある程度制限することとし、パスワード、ログイン名については検査室で管理することとした。<BR>【方法】<BR>月に1度開催される院内感染対策委員会の資料については、スキャニング後PDFファイルとしてアップロードを行ない、夜間の検査システム日時更新処理中に細菌Webへ反映される。<BR>前日-当日間で最終報告された細菌検査結果を毎日午前7時に情報データベースより自動収集しWebデータベースの自動更新を行なう。臨床サイドは各病棟、診察室に設置してあるクライアントから細菌Webへアクセスし必要な情報を検索する。<BR>【結果】<BR>Web導入以前の感染情報は、医師からの問い合わせや検査技師からの連絡、月1度開催される感染対策委員会報告などに限られていたが、細菌検査室よりリアルタイムな情報をWeb上に公開することにより、必要な感染情報を比較的容易に得ることができ、また無線LANを装備したノート型PCも各病棟等に設置されているため病棟内を移動しながらの検索も可能となった。<BR>「感染委員会提出文書一覧」では委員会に提出された文書を月別に、「その他の文書一覧」ではWeb操作手順書などが添付されている。「リアルタイム集計表示」では様々な検索条件での絞込み機能を持つことにより必要なデータを容易に引き出すことが可能となった。また、システム更新の数か月後に検体検査の最終報告書出力の廃止を行なったが細菌検査の報告書出力も同時に廃止することができ、技師・看護師・事務員等の作業軽減につながった。<BR>【まとめ】<BR>当院の細菌Webは、検査システムとLAN回線を利用することにより、新たなソフトウエアやハードウエアを購入することなく構築することができた。また、クライアントにオーダリング用PCを用いているためWeb参照後のオーダが容易であり対象患者の病室は、オーダシステムにある病棟マップにより確認が可能である。<BR>臨床へ提供する情報としては満足できるものが構築できたと思うが、今後は利用状況などを調査し、より利用されるよう啓蒙していかなければならないと考える。<BR>(尚、本研究は北海道農村医学研究会の助成物件によるものである)
著者
永井 信 中屋 俊介 櫻庭 光夫 飯田 健一 今村 哲理 須賀 俊博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.666-672, 2004 (Released:2005-03-30)
参考文献数
9

当院健診センターは平成10年度より, 胃バリウム検査に加えて希望者を対象とした血清ペプシノゲン値の測定を開始した。過去5年間の併用法発見胃癌数は94例であり, 平均胃癌検出率はバリウム法で79.8%, ペプシノゲン法で71.3%となり, バリウム法が高かった。一方, 両検査法が陽性を示したものは51.1%, バリウム法のみ陽性癌は28.7%, バリウム法陰性でPG法のみ陽性癌は20.2%であり約半数の48.9%がどちらか一方で拾い上げられていたことから, 両法は相補的な関係にあると思われ, 併用法の有用性が再確認できた。PGレベル区分の検討では陽性反応的中率でレベル2以上, 経年変化で特に陰性からレベル2, 4への移行群で高く, より高危険群の設定が可能と思われた。