著者
中村 義一 横山 茂之 渡辺 公綱 志村 令郎 饗場 弘二 多比良 和誠
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

近年のRNA研究の大きな発展を支えた背景には、国内のRNAの基礎研究に関して10年余の間継続して実施されてきたRNAに関係する重点・特定領域研究が果たした役割が大きい。このようなRNA研究に対する熱意は、特に若い研究者の間に大きなうねりとなって現れ、平成11年に日本RNA学会が組織された(初代会長:志村令郎・生物分子工学研究所長)。本基盤研究(C)においては、「RNA研究の21世紀への展開」のために推進すべき課題についての調査と討論を重ね、平成13年度発足特定領域研究(A)「RNA情報発現系の時空間ネットワーク」を申請するに至った。その過程で、本基盤研究(C)に参加し、同時に新特定領域研究の総括班に予定するメンバーは、平成12年に開催されたRNA関連の国際研究集会「tRNA Workshop」(4月、ケンブリッジ)、「RNA Society年会」(5月、マジソン)、FASEBシンポジウム「Posttranscriptional Control of Gene Expression:The Role of RNA」(7月、コロラド)、「Ribosome Biogenesis」(8月、タホ)、「Structural Aspects of Protein Synthesis」(9月、アルバニ)に参加し、最新情報の調査・討論を行った。これらの調査討論に基づき新特定領域研究の申請を準備するとともに、平成13年2月には、国外から12名の研究者を招聘して国際シンポジウム「Post-Genome World of RNA」(開催責任者:東京大学医科学研究所教授中村義一)を東京で開催し、本研究領域に関する最新の発表・討論を実施した。
著者
中村 義一 石浜 明 口野 嘉幸 饗場 弘二 横山 茂之 野本 明男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本基盤研究は、mRNAの誕生から終焉に至る動態と多元的な制御プログラムについて、国際的な調査及び研究討論を実施し、総合的な討論に基づいて重点領域研究の設定を検討する目的で企画採択されたものである。その研究実績を要約する。1.研究領域の調査結果:転写後の動的な制御プログラムは、広範囲の生物系で重要不可欠な役割を担うことが明らかになりつつあり、mRNAを骨格とする基本的な諸問題を体系的に正攻法で研究すべき時期にある。本研究の成果は、発生・分化・応答等の高次な細胞機能の解明や、RNAダイナミズムの創成、あるいは蛋白質工学やmRNA臨床工学等の次世代バイオテクノロジーの基盤となりうる。mRNA研究に関連する重点領域の推進が必要かつ急務である。2.国際研究集会における学術調査と討議:平成8年11月10〜14日、本基盤研究代表者が中心となってmRNA研究に関する国際研究集会「RNA構造の遺伝子調節機能(“Regulatory Role of RNA Structure in Gene Expression")」を開催した(日本学術振興会王子セミナー/於箱根)。本研究集会には、申請領域の第一戦で活躍する欧米の研究者約40人が参加し最新の研究成果の発表、討論、交流を行った。その機会を利用して、国際的な視点からmRNA研究の展望と研究振興の方策を議論した。3.出版企画:上記国際研究集会に関連した学術刊行物を、学術誌Biochimieの特集号としてElsevier社(仏パリ)から出版することとなり、本基盤研究代表者が監修し平成9年3月に出版の予定である。4.重点領域の設定:本基盤研究の目的をふまえて、重点領域研究「RNA動的機能の分子基盤」(領域代表・渡辺公綱、平成9〜12年)の実施が決定された。
著者
中村 義一 志村 令郎 横山 茂之 箱嶋 敏雄 嶋本 伸雄 饗場 弘二
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本総合研究(B)は、「RNAの動的機能発現」に関する重点領域研究の設定をその主要な目的として企画されたものである。しかしながら、平成4年度から新重点領域研究「RNA機能発現の新視点」が発足することに決定し、その研究内容がほとんど重複するため、当初の趣旨での本総合研究(B)班からの重点領域申請はやむなくとりやめた。その上で、本研究班の活用を計るため他の関連研究組織との連携を検討することとし、平成4年1月17ー18日に研究集会「RNA合成における分子間コミュニケ-ション」を東京において開催した。本総合研究(B)班からの5名を含めた12名が参加し、多角的に当該分野の研究を協議した結果、石浜明国立遺伝学研究所教授を代表者として、「転写装置における分子間コミュニケ-ション」を重点領域研究として申請することで合意し、申請を行なった。本総合研究課題に関する国内研究の活性化を計るために、平成3年12月に行なわれた日本分子生物学会において、シンポジウム「RNAシグナルによる翻訳制御」を開催した。国内から4人の演者に加えて、ミュンヘン大学からセレノシステイン研究で有名なA.Bo^^¨ck教授を招聘して活発なシンポジウムを行なうことができた。
著者
中村 義一 饗場 弘二 HERSHEY John BOCK August COURT Donald ISAKSSON Lei SPRINGER Mat
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

遺伝子発現の転写後調節をつかさどるRNAシグナルの構造・機能・制御タンパク質との相互作用を明かにする目的で行なった研究成果を以下に整理する。1.ペプチド鎖解離因子の研究:大腸菌では、終止コドンUGAにおける翻訳終結はペプチド鎖解離因子RF2を必要とする。我々はin vivoでRF2と相互作用している因子に関する知見を得ることを目的として高温感受性RF2変異株から6種類の復帰変異株を分離した。その内、4株が遺伝子外サプレッサー変異であった。それらは、90分(srbB)と99分(srbA)の2つのグループに分けられた。この解析に並行して、新たにトランスポゾン挿入(遺伝子破壊)によりUGAサプレッサーとなるような突然変異を分離し、tosと命名した。遺伝学的分析とDNAクローニング解析の結果、tos変異はsrbA変異と同一の遺伝子上に起きた突然変異であることが明かとなった。この結果から、tos(srbA)遺伝子は、その存在が1969年に予言されていながら何の確証も得られず放置されていたRF3蛋白質の構造遺伝子である可能性が示唆された。そこでTos蛋白質を過剰生産、精製し、in vitroペプチド鎖解離反応系で活性測定を行なった結果、RF3蛋白質の活性を完全に保持することが明かとなった。この解析により、四半世紀の謎に包まれていたRF3因子の存在、機能、構造を遺伝学的、生化学的に実証することが出来た。この成果は今後、終止コドン認識の解明にとって飛躍的な原動力となるものと自負する。2.リジルtRNA合成酵素遺伝子の研究:大腸菌は例外的に、2種類のリジルtRNA合成酵素を持ち、構成型(lysS)と誘導型(lysU)の遺伝子から合成される。その生理的な意味は依然不明であるが、我々は本研究によってlysU遺伝子の発現誘導に関してその分子機構を明かにすることができた。その結果、lysU遺伝子の発現はLrp蛋白質(Leucine-Responsive Regulatory Protein)によって転写レベルで抑制されており、ロイシンを含めた各種の誘導物質によるLrp蛋白質の不活化を介して転写誘導されることを明かにした(Mol.Microbiol.6巻[1992]表紙に採用)。さらに、lacZとの遺伝子融合法により翻訳レベルの発現制御を解析した結果、翻訳開始コドン直下に“downstream