著者
岡田 吉美 中島 捷久 渋田 博 野本 明男 石浜 明 四方 英四郎
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1984

クローン化されたタバコモザイクウイルスcDNAから感染性RNAを転写する実験系が確立された。この系を用いて130Kタンパクの停止コドンとその近辺に変異が導入された結果、130Kタンパクと180Kタンパクが複製酵素であることが確かめられた。ホップわい化ウイロイド,キュウリペールフルーツウイロイドおよびブドウウイロイドの病原性と分子構造の解析を行ない、これら3種類のウイロイドは塩基配列が若干異なるが病原性は同じであることが明らかにされた。インフルエンザのRNAポリメラーゼはキャップRNA切断,プライマー依存性RNA合成,ポリA付加,誤転写修復機能などの多機能をもっていることが発見された。また血球凝集素遺伝子に部位突然変異法によって多数の変異を導入し、その抗原構造の解析とシアル酸結合部位の解析を行った。HVJの全遺伝子構造を解明すると共に、そのmRNAの合成機構と非構造Cタンパク質の機能について解析した。パラインフルエンザ3型ウイルスの病原性に関与する遺伝子についても変異株の比較で解析を行った。ポリオウイルスの感染性のcDNAクローンを利用し、各種人工変異ウイルスを作製した。それらの複製効率および神経毒性発現を含む生物学的諸性質を調べた結果、ゲノム各領域間の相互作用がウイルスの複製および遺伝情報発現に重要であることが示唆された。バクテリオファージGAおよびSPの全遺伝子構造を決定するとともに、QB,SPの活性のあるRNA複製酵素遺伝子クローンを作製した。またGA→MS2の抗原変化に関与するコートタンパク質のアミノ酸を同定した。リンゴさび果ウイロイドの全塩基配列を決定した。その配列は今までに構造が明らかにされているどのウイロイドとも類縁関係はなく、新しい種類のウイロイドであることが明らかにされた。
著者
野本 明男 岡田 吉美 豊島 久真男 吉倉 廣 永井 美之 石浜 明 豊田 春香 永田 恭介 水本 清久
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本年度は、重点領域研究「RNAレプリコン」のとりまとめを行った。平成7年6月12日に北里大学において、第1回総括班会議を開催し、とりまとめに関する話し合いが行われた。この会議では、これまでのとりまとめ方法のみならず、今後のRNAレプリコン研究発展を目指した本年度の活動が話し合われた。その結果、「RNA情報のフロンティア」と題する一般公開シンポジウムを11月28、29日の両日、日経ホールにて開催することが決定した。このシンポジウムは重点研究「エイズの病態と制御に関する基礎研究」(代表・永井美之)との合同シンポジウムとし、RNA情報の多元的制御メカニズムを紹介、さらにRNA研究の重要性と面白さを一般にアピールすることであった。例年のように、各種RNAレプリコン単位のミニシンポジウムも開催することが決定され、植物のRNAレプリコン会議(世話人・渡辺雄一郎)およびレトロウイルス複製会議(世話人・岩本愛吉)が、それぞれ岡山大学資源生物研究所(平成7年10月30日)および東京大学医科学研究所(平成8年1月20日)において開催された。さらに、この領域の若手を世話人(永田恭介、小林信之、中西義信)とした公開シンポジウム「ウイルスを利用する人類の知恵-アポトーシス制御、ウイルスベクター、遺伝子治療」を平成8年2月6日に東京大学山上会館で開催した。いずれのシンポジウムでも多くの参加者が集まり、熱のこもった討論が行われた。本年度の最後には、ニュースレター最終版を発行し、来年度の前半に領域代表者による研究報告書の作成が行われることが決定されている。
著者
永井 美之 水本 清久 石浜 明 田代 真人 永田 恭介 野本 明男
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1993

ウイルスの体内伝播機構や臓器向性、宿主域などを決定する機構をウイルスと宿主相互の特異的分子認識の立場から解析する「ウイルス病原性の分子基盤」という新視点からの研究グループを組織し、重点領域研究を申請する準備活動を行った。具体的には、シンポジウム「ウイルス遺伝子機能研究の新展開」(平成5年12月7〜8日、重点領域研究RNAレプリコンとの共催)を開催、わが国における当該分野の研究の現状を分析し今後の発展のさせ方について討議した。また班会議(同年8月28日、11月8日)、活動者会議(同年9月11日、12月1日、12月25日)においては、国際専門誌におけるわが国研究機関の論文発表状況の調査、シンポジウムの総括、なども行い、重点領域研究申請へと集約した。その結果、ウイルス複製の各過程に必須の生体側分子を分離・同定し、これら分子の生体内での組織分布を明らかにすることにより個体への種および組織特異的なウイルス感染の分子メカニズムを追求すること、すなわち、ウイルス複製と病原性発現機構を分子の水準で確立すべき機が熟していること、またそのことが同時に新しい生体分子の発見や既知生体分子の新機能の発見をも約束することを強く認識した。このように本領域が活気あふれる領域であるとの再確認の上に立ち、「ウイルス感染を決定する生体機能」を平成7年度発足重点領域研究として申請する運びとなった。尚、本総合研究の研究代表者永井美之が、同じく平成7年発足の「エイズ重点」申請代表者に強く推されている状況についても種々討議した。その結果、「エイズ重点」は永井が領域申請代表者を務めることとし、「ウイルス感染を決定する生体機能」は重点領域研究「RNAレプリコン」(平成4年〜6年度、代表 野本明男)の継承と飛躍の意味を込めて野本が担当することとした。
著者
中村 義一 石浜 明 口野 嘉幸 饗場 弘二 横山 茂之 野本 明男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本基盤研究は、mRNAの誕生から終焉に至る動態と多元的な制御プログラムについて、国際的な調査及び研究討論を実施し、総合的な討論に基づいて重点領域研究の設定を検討する目的で企画採択されたものである。その研究実績を要約する。1.研究領域の調査結果:転写後の動的な制御プログラムは、広範囲の生物系で重要不可欠な役割を担うことが明らかになりつつあり、mRNAを骨格とする基本的な諸問題を体系的に正攻法で研究すべき時期にある。本研究の成果は、発生・分化・応答等の高次な細胞機能の解明や、RNAダイナミズムの創成、あるいは蛋白質工学やmRNA臨床工学等の次世代バイオテクノロジーの基盤となりうる。mRNA研究に関連する重点領域の推進が必要かつ急務である。2.国際研究集会における学術調査と討議:平成8年11月10〜14日、本基盤研究代表者が中心となってmRNA研究に関する国際研究集会「RNA構造の遺伝子調節機能(“Regulatory Role of RNA Structure in Gene Expression")」を開催した(日本学術振興会王子セミナー/於箱根)。本研究集会には、申請領域の第一戦で活躍する欧米の研究者約40人が参加し最新の研究成果の発表、討論、交流を行った。その機会を利用して、国際的な視点からmRNA研究の展望と研究振興の方策を議論した。3.出版企画:上記国際研究集会に関連した学術刊行物を、学術誌Biochimieの特集号としてElsevier社(仏パリ)から出版することとなり、本基盤研究代表者が監修し平成9年3月に出版の予定である。4.重点領域の設定:本基盤研究の目的をふまえて、重点領域研究「RNA動的機能の分子基盤」(領域代表・渡辺公綱、平成9〜12年)の実施が決定された。