著者
駒木 文保
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.185-204, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
44

統計的推測の問題を予測の立場からとらえる予測分布の理論について考える.真の分布から予測分布へのKullback–Leiblerダイバージェンスで予測分布の性能を評価すると,多次元正規モデルや多次元Poissonモデルにおいては,Bayes推定の問題がBayes予測の問題の極限として定式化できる.Bayes推定を利用するには事前分布の選択が重要になるため,無情報事前分布あるいは縮小事前分布についての多くの研究がなされている.予測と推定の関係に着目することにより,Bayes推定についての様々な知見をBayes予測に応用すること,Bayes予測の立場からBayes推定について新たな理解をすることが可能になる.このような予測と推定の関係について,特に多次元のPoisson分布を例にとり説明する.
著者
竹村 彰通 駒木 文保 清 智也
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

Vladimir VovkとGlenn Shafer によるゲーム論的確率論は以下の著書でその基礎が与えられた.Glenn Shafer and Vladimir Vovk. Probability and Finance:It's Only a Game! Wiley, New York, 2001そこでは,Skepticとよばれる賭をする人と,Realityとよばれる賭の結果を定める人の,二人のプレーヤーの間のゲームを設定することにより,ゲームの結果として確率が定まることが示されている.注目すべきは,測度論無しに,大数の強法則,中心極限定理,重複対数の法則,さらに数理ファイナンスにおける価格付けの諸公式,などが証明される点にある.竹村は,竹内啓,公文雅之との共同研究を通じて,ゲーム論的確率論に関する新たな結果を得ている.これらはtechnical reportとして発表されていたが,研究発表に示すように国際雑誌に刊行の段階となっている.また竹村はShafer氏およびVovk氏とも共同研究を進めており,以下の研究成果を得た."The game-theoretic martingales behind the zero-one laws", by Akimichi Takemura, Vladimir Vovk and Glenn Shafer. Techinical Report METR 08-18, March 2008.この研究では,測度論の諸仮定をおくことなく,コルモゴロフの0-1法則などの0-1法則の一般的な形をゲーム論的枠組で示している.
著者
駒木 文保
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.612-619, 2000-06-25
被引用文献数
1

統計モデルを利用した予測分布の構成に関連するいくつかの統計的な問題について考察する.広く利用されているplug-in型の予測分布が, モデルに属さない予測分布によって漸近的に優越されることを示し, 次にベイズ予測分布の漸近的な表現について説明する.ガウス時系列のスペクトル推定の問題についても同様の理論が構成できることについて触れる.また, 条件付き相互情報量に基づく無情報事前分布や, 縮小型事前分布に基づく予測分布の構成について論じる.