著者
高久 恭子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題は、コンスタンティヌス一世以後のローマ帝国における親キリスト教政策を放棄して新プラトン主義を参照項に多神教系祭儀の振興を志した四世紀のローマ皇帝ユリアヌス(331/2-363年、在位361-363年)の著作にみられる宗教思想を体系的に解明し、彼が「過てる哲人王」「キリスト教の敵」と認識されるに至る経緯を同時代人の著作を分析して明らかにする。また、ユリアヌス像が初期近代に「古典の擁護者」へ、近代以降には「戴冠せるロマン主義者」へ変容を遂げる過程を観察し、その宗教史的意義を考察する。成果の一部は『ユリアヌスの信仰世界 万華鏡のなかの哲人皇帝』(慶應義塾大学出版会、2016年)に結実した。
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 上村 静 高井 啓介 月本 昭男 土居 由美 勝又 悦子 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 高久 恭子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度の主たる実績は、以下の三つに分けられる。第1に、2017年8月に、イスラエルのテル・レヘシュ遺跡で、シナゴーグの全容を解明する発掘調査を実施した。これによって、本シナゴーグは、モーセ五書の巻物を置く台座と思われた石は、天井を支える支柱の礎石であることが判明し、全体は簡素な矩形の部屋に過ぎないことが明らかとなった。ここから、シナゴーグの用途を、安息日のトーラー朗読にのみ限定して考える必要がないものと想定された。第2に、出土した西暦1世紀のシナゴーグの発見がもたらす意義に関して、同時代的、宗教史的、比較宗教学的視点から、研究成果を持ち寄って、公開シンポジウムを実施した。シンポジウムの全体テーマは、「イスラエル新出土シナゴーグから 一神教の宗教史を見直す」である。( 2018年3月2日(金) 13時-18時 東京大学本郷キャンパス 法文1号館 113教室。)第3に、シナゴーグがユダヤ社会において果たした役割の変遷を、古代から中世にかけて考察するシンポジウムを実施した。シンポジウムの全体テーマは「ユダヤ共同体とその指導者たち -古代から中世へ-」である。(2018年1月21日(日)13:00-18:00 東京大学本郷キャンパス法文1号館113教室。)カイロで発見されたゲニザ文書から推定される、中世旧カイロ市(フスタート)のシナゴーグと共同体の関係について、イスラエル人の専門家の知見を得られたことは、歴史的変遷を明らかにするうえで非常に有益であった。