著者
長谷川 修一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.488-491, 2014-10-20 (Released:2017-06-16)

世界で唯一,楽器として利用されている岩石は,香川県からで産出されるサヌカイト(讃岐岩)であろう。サヌカイトは約1350万年前に特異な瀬戸内火山活動によって地表に噴出した溶岩が冷却してできた火山岩である。マグマから急冷したにもかかわらず,火山岩によく見られる発泡による空隙がほとんどない緻密な岩石である。サヌカイトが金属音を出すのは,非常に緻密でP波伝播速度が約6,000m/sと大きいため,動弾性係数が他の岩石と比較して著しく大きいことによる。
著者
長谷川 修一
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.336-344, 2010 (Released:2013-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
1

高松クレーターは, 重力探査によって発見された伏在陥没構造で, 高松平野南部の仏生山町を中心に直径約4km, 深さ千数百mの規模と推定されている. 高松クレーターをめぐっては, 1994年から約10年間, その成因と渇水時の地下水源としての利用について論争が続いた. 高松クレーター論争は, 学会における議論により, 「夢」と「ロマン」と「渇水の切り札となる水源」として, マスメディアの報道が先行した特異な事例である. また, 高松クレーターの報道によって, 行政が水源調査を行い, 民間会社が温泉事業に投資し, 市民が地域おこしの題材とするなど, 単なる科学論争を超えた社会現象になった. 本稿では, 高松クレーターに関する論争と新聞報道を検証し, 応用地質学の市民生活に貢献のあり方を考察した. 高松クレーターでは, 日本初の隕石衝突孔なら, 地底湖があればと市民に期待をいだかせる報道に対して応用地質学の論理展開を軸に表層地質, 物理探査およびボーリング試料の分析・試験データに基づき繰り返し反論・説明することによって, 一方的な科学情報による地元の混乱と科学者や技術者の信用失墜を未然に防止することができた.
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 高井 啓介 月本 昭男 高橋 英海 菊地 達也 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 小堀 馨子 鎌田 繁 中西 恭子 土居 由美 嶋田 英晴 志田 雅宏 櫻井 丈 小野 塚拓造 山野 貴彦 アヴィアム モルデハイ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ユダヤ教の歴史を調べていくと、のちに出現する二つの一神教、キリスト教とイスラーム、を生み出す基盤になっていることがわかる。宗教学の歴史は信仰を基盤とする西欧のキリスト教を宗教の一般モデルとしたため、このモデルから外れる諸要素は関心から外れた。しかし、イスラームとラビ・ユダヤ教はそれぞれ、シャリーアとハラハーを特徴とする啓示法の宗教であり、預言者に啓示された神の意志は、日常生活の行動様式を詳細に規定している。これら一神教の二つの異なる類型がともに古代ユダヤ社会に起源を有することを示して、一神教の歴史全体を動態的に理解する道筋を示すことは、人類の宗教史を考察する上で文明史的意義を持つものである。
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 上村 静 高井 啓介 月本 昭男 土居 由美 勝又 悦子 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 高久 恭子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度の主たる実績は、以下の三つに分けられる。第1に、2017年8月に、イスラエルのテル・レヘシュ遺跡で、シナゴーグの全容を解明する発掘調査を実施した。これによって、本シナゴーグは、モーセ五書の巻物を置く台座と思われた石は、天井を支える支柱の礎石であることが判明し、全体は簡素な矩形の部屋に過ぎないことが明らかとなった。ここから、シナゴーグの用途を、安息日のトーラー朗読にのみ限定して考える必要がないものと想定された。第2に、出土した西暦1世紀のシナゴーグの発見がもたらす意義に関して、同時代的、宗教史的、比較宗教学的視点から、研究成果を持ち寄って、公開シンポジウムを実施した。シンポジウムの全体テーマは、「イスラエル新出土シナゴーグから 一神教の宗教史を見直す」である。( 2018年3月2日(金) 13時-18時 東京大学本郷キャンパス 法文1号館 113教室。)第3に、シナゴーグがユダヤ社会において果たした役割の変遷を、古代から中世にかけて考察するシンポジウムを実施した。シンポジウムの全体テーマは「ユダヤ共同体とその指導者たち -古代から中世へ-」である。(2018年1月21日(日)13:00-18:00 東京大学本郷キャンパス法文1号館113教室。)カイロで発見されたゲニザ文書から推定される、中世旧カイロ市(フスタート)のシナゴーグと共同体の関係について、イスラエル人の専門家の知見を得られたことは、歴史的変遷を明らかにするうえで非常に有益であった。
著者
矢田部 龍一 八木 則男 佐藤 修治 長谷川 修一
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.42-49_1, 1997-09-15 (Released:2011-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

本報告は四国の中央構造線に沿った道路建設に伴い発生した地すべり地の特性について検討を行ったものである。その結果, 地すべりは大半が切土に伴う崩積土のすべりであり, 規模は比較的小規模なものが多く, また, 中央構造線の断層破砕帯の地すべり地の粘性土のせん断抵抗角は小さく, 難工事となりやすいことがわかった。
著者
山崎 晴雄 佃 栄吉 奥村 晃史 衣笠 善博 岡田 篤正 中田 高 堤 浩之 長谷川 修一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.129-142, 1992-12-15
被引用文献数
6

中央構造線(MTL)は西南口本を南北に二分する主要な地質構造線である。この断層は第四紀における日本で最大級の右横ずれ活断層でもある。その活発な活動度にも拘らず, MTLに沿っては歴史地震の発生は知られていない。長期的な地震予知や災害アセスメントに有効な最近の地質時代における断層の運動史を知るため, 1988年の夏中央構造線活断層系の一部である西条市近傍の岡村断層でトレンチ発掘調査を行なった。5つの小トレンチとそれらを繋ぐ細長い溝で構成される調査トレンチでは, 更新世末から歴史時代までの5つの地層ユニットと, それらの顕著な断層変位が認められた。各ユニットの堆積時期は地層中に含まれる有機物試料の^<14>C年代と土器片の考古学的編年によって決定された。断層は2000年前〜4世紀に堆積したIIIb層を切り, 7世紀以降に堆積したIIIc層に覆われるので最終活動時期は4〜7世紀と推定された。この値は1984年に行なわれた同じ断層の発掘調査結果と一致する。また, これ以外の断層活動時期も地層の不整合や変形構造に基づいて識別された。
著者
柴田 大輔 河合 望 中町 信孝 津本 英利 長谷川 修一 青木 健 有松 唯 上野 雅由樹 久米 正吾 嶋田 英晴 下釜 和也 鈴木 恵美 高井 啓介 伊達 聖伸 辻 明日香 亀谷 学 渡井 葉子
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

現在の西アジア諸国において戦争・政争を引き起こす重要なファクターとしてイスラームの政教問題が挙げられる。西アジア政教問題の重要性は万人が認めるところだが、一方でこの問題は単なる現代情勢の一端として表層的に扱われ、しかも紋切り型の説明で片付けられることも多い。本研究は、文明が発祥した古代からイスラーム政権が欧米列強と対峙する近現代にいたる長い歴史を射程に入れ、政教問題がたどった錯綜した系譜の解明を目指した。ユダヤ・キリスト教社会、紋切り型の説明を作ってきた近現代西欧のオリエント学者たちが西アジアに向けた「眼差し」も批判的に検討したうえで、西アジア政教問題に関する新しい見取り図の提示を目指した。
著者
木下 博久 長谷川 修一 野々村 敦子 山中 稔
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.472-484, 2019-02-10 (Released:2019-12-24)
参考文献数
50
被引用文献数
1 3

流域スケールにおける斜面崩壊の潜在的危険度を評価することを目的として,谷密度のみを変数とする簡便な評価手法を提案し,その有効性,適用性を検討した.国土地理院発行2万5千分の1地形図及び10mDEMを用いた地形解析から谷線を抽出し,谷密度を算出した.谷線はコンターの平均曲率(H)から求め,H>0.1を閾値とすることで,谷地形としての再現性が高くなることを確認した.表層崩壊,土石流を主とする既往土砂災害を対象として,災害発生斜面の流域の谷密度と比較した結果,谷密度が高い流域ほど豪雨時に不安定となり崩壊が発生しやすい場所が多く存在すること,また,谷頭付近を発生源とする崩壊が多いなどの傾向が認められた.谷密度と崩壊頻度との関係は,0.5~1.5km2程度の流域において比較的良い相関(r=0.60~0.66)を示した.このことから,対象とする解析領域の大きさを考慮することで,本手法は表層崩壊や土石流といった斜面崩壊の危険度評価に有効な手法となり得ると考えられる.今後さらに既往災害事例との比較を重ね,また,地形地質的素因が谷密度に与える影響を考慮するなどで,様々な崩壊タイプに対する本手法の汎用性,適用性の拡大が期待される.
著者
長谷川 修一
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.336-344, 2010-02-10
参考文献数
20
被引用文献数
1

高松クレーターは, 重力探査によって発見された伏在陥没構造で, 高松平野南部の仏生山町を中心に直径約4km, 深さ千数百mの規模と推定されている. 高松クレーターをめぐっては, 1994年から約10年間, その成因と渇水時の地下水源としての利用について論争が続いた. 高松クレーター論争は, 学会における議論により, 「夢」と「ロマン」と「渇水の切り札となる水源」として, マスメディアの報道が先行した特異な事例である. また, 高松クレーターの報道によって, 行政が水源調査を行い, 民間会社が温泉事業に投資し, 市民が地域おこしの題材とするなど, 単なる科学論争を超えた社会現象になった. 本稿では, 高松クレーターに関する論争と新聞報道を検証し, 応用地質学の市民生活に貢献のあり方を考察した. 高松クレーターでは, 日本初の隕石衝突孔なら, 地底湖があればと市民に期待をいだかせる報道に対して応用地質学の論理展開を軸に表層地質, 物理探査およびボーリング試料の分析・試験データに基づき繰り返し反論・説明することによって, 一方的な科学情報による地元の混乱と科学者や技術者の信用失墜を未然に防止することができた.
著者
長谷川 修一
出版者
地下水技術協会
雑誌
地下水技術 (ISSN:09164154)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1-8, 2007-10
被引用文献数
1
著者
長谷川 修一 山中 稔 野々村 敦子 伊藤 久敏 菅原 弘樹
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東北日本の太平洋側にある松島は,松島湾とその内外にある大小260余りの島々からなる日本三景の一つである景勝地である.長谷川ほか(2008)は,松島周辺の地形,地質を検討した結果,巨大な地すべりによって形成された可能性が高いとの仮説(松島巨大地すべり説)を示した.本研究では松島巨大地すべり説を実証する目的で,東松島市宮戸島において2015年に深さ70mのオールコアボーリングを実施した。また、想定すべり面の上盤側,想定すべり面,想定すべり面の下盤側の3箇所から得たジルコンのU-Pb年代を試みたが,誤差の範囲で一致する15.2 Maを示し、地すべり説を積極的に支持する結果は得られなかった.
著者
矢田部 龍一 岡村 未対 ネトラ バンダリー 長谷川 修一 森脇 亮 鳥居 謙一
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究より得られた主な成果として, 1)ネパール国カトマンズ盆地における微動観測による地震時地盤の応答解析と2)中央ネパール低ヒマラヤ地域における地すべりマッピングとハザード解析が挙げられる。また,研究期間中に3回のセミナーを通してヒマラヤン地域を代表するネパール国の小中学校における防災教育の展開について様々な議論を行い,昨年5月にネパール政府文部省と教育局との会談を実施し,今後ネパールの小中学校における防災教育のカリキュラム化と学校を中心とした地域社会における防災教育の展開について十分に認識されてきました。防災教育と地域協力に関しても,ヒマラヤ地域を代表する南アジア地域協力連合(SAARC)を通して活動展開する目的で,各国の防災研究者や関係機関,特にSAARC防災センター(SDMC)との連携も進めており,近い将来豪雨や地震等による自然災害に対する共同研究活動や防災教育の実施が期待できる。