著者
杉本 智俊 月本 昭男 越後 屋朗 牧野 久実 佐藤 育子 佐藤 孝雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

エン・ゲヴ遺跡(イスラエル)の発掘調査によって印章などの宗教遺物を検出し、古代イスラエルおよびそれに隣接する諸国家の成立に新ヒッタイト文化の影響が見られることを指摘した。また、この印章や「生命の木」の図像、ユダ式柱状土偶などの宗教遺物の分析を行い、それらの示す宗教的画期から、古代イスラエル王国にカナンの多神教が単純に継続されていたわけでないことを明らかにした。さらに、2011年8月には、国際カンファレンスを主催し、古代西アジアにおける多神教の代表的女神アスタルテがイスラエルとその周辺世界でどのように異なって理解されていたのかを議論した。
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 高井 啓介 月本 昭男 高橋 英海 菊地 達也 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 小堀 馨子 鎌田 繁 中西 恭子 土居 由美 嶋田 英晴 志田 雅宏 櫻井 丈 小野 塚拓造 山野 貴彦 アヴィアム モルデハイ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ユダヤ教の歴史を調べていくと、のちに出現する二つの一神教、キリスト教とイスラーム、を生み出す基盤になっていることがわかる。宗教学の歴史は信仰を基盤とする西欧のキリスト教を宗教の一般モデルとしたため、このモデルから外れる諸要素は関心から外れた。しかし、イスラームとラビ・ユダヤ教はそれぞれ、シャリーアとハラハーを特徴とする啓示法の宗教であり、預言者に啓示された神の意志は、日常生活の行動様式を詳細に規定している。これら一神教の二つの異なる類型がともに古代ユダヤ社会に起源を有することを示して、一神教の歴史全体を動態的に理解する道筋を示すことは、人類の宗教史を考察する上で文明史的意義を持つものである。
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 上村 静 高井 啓介 月本 昭男 土居 由美 勝又 悦子 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 高久 恭子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度の主たる実績は、以下の三つに分けられる。第1に、2017年8月に、イスラエルのテル・レヘシュ遺跡で、シナゴーグの全容を解明する発掘調査を実施した。これによって、本シナゴーグは、モーセ五書の巻物を置く台座と思われた石は、天井を支える支柱の礎石であることが判明し、全体は簡素な矩形の部屋に過ぎないことが明らかとなった。ここから、シナゴーグの用途を、安息日のトーラー朗読にのみ限定して考える必要がないものと想定された。第2に、出土した西暦1世紀のシナゴーグの発見がもたらす意義に関して、同時代的、宗教史的、比較宗教学的視点から、研究成果を持ち寄って、公開シンポジウムを実施した。シンポジウムの全体テーマは、「イスラエル新出土シナゴーグから 一神教の宗教史を見直す」である。( 2018年3月2日(金) 13時-18時 東京大学本郷キャンパス 法文1号館 113教室。)第3に、シナゴーグがユダヤ社会において果たした役割の変遷を、古代から中世にかけて考察するシンポジウムを実施した。シンポジウムの全体テーマは「ユダヤ共同体とその指導者たち -古代から中世へ-」である。(2018年1月21日(日)13:00-18:00 東京大学本郷キャンパス法文1号館113教室。)カイロで発見されたゲニザ文書から推定される、中世旧カイロ市(フスタート)のシナゴーグと共同体の関係について、イスラエル人の専門家の知見を得られたことは、歴史的変遷を明らかにするうえで非常に有益であった。
著者
牧野 久実
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The Journal of Kamakura Women’s University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.73-80, 2019-01

本稿は、伝統的な大木桶の建造に和船建造の技術、特に板の擦り合わせ技術が用いられたという仮説(牧野 2017)を検証する論考である。板の擦り合わせ技術に重要な材料となるのは槇の檎皮を縄状にした槇肌であるが、今回日本で唯一醤油大桶の製造を手掛ける職人に聞き取り調査を行い、かつては槇肌を用いていたことを確認した。 これまで竹釘のみで材を合わせ、漏れ出る醤油で材が膨らむことで合わせ目が閉じるということが定説だったが、今回得られた証言は醤油桶の建造のみならず、かつての槇肌の利用や製造に関してより広範囲に調べる必要を示唆する重要な証言と言える。これに関連して、槇肌の利用に関する現存資料や史料を整理した。
著者
月本 昭男 置田 雅昭 山我 哲雄 市川 裕 杉本 智俊 牧野 久実 桑原 久男 置田 雅昭 市川 裕 桑原 久男
出版者
立教大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

現在のイスラエル国ガリラヤ地方にあるテル・レヘシュ遺跡にて、5次にわたる考古学調査を行った。これによって、同地域における青銅器時代から鉄器時代にかけて見られる都市の発達とその文化的特性を明らかにすることができた。またアマルナ文書をはじめとする文献研究においては、上記テル・レヘシュが前2千年紀後半のエジプト碑文に言及されるアナハラトと同定されることが明らかになった。またこれまで発信地が不明であったアマルナ書簡237~239番がテル・レヘシュから発信された可能性が高いことを突き止めた。