- 著者
-
高井 寿文
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.8, pp.523-543, 2004-07-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 46
- 被引用文献数
-
2
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本研究では日系ブラジル人を事例とし,在日外国人が日本の都市空間においてナヴィゲーションする際の手掛かりや,居住年数の経過に伴う認知地図の発達様式を,日本人と比較しながら明らかにする.方向感覚質問紙簡易版の因子分析から,日系ブラジル人のナヴィゲーション能力に関わる重要な因子は,ランドマークの記憶や利用であることが明らかになった.経路図の分析では,日系ブラジル人は,ローマ字や商標で表される店舗をランドマークとして認知していることがわかった.居住年数にかかわらず,自宅周辺図の描画範囲は日本人に比べて狭く,手描き地図の形態はルートマップ型であった.以上より,言語環境や日伯の住居表示方法の違いといった文化的背景や,日本独特の景観や都市構造に対する非親和性が,日系ブラジル人の日本の都市空間におけるナヴィゲーションの手掛かりに影響し,認知地図の発達を阻害する要因となることが明らかになった.