著者
北風 政史 真田 昌爾 浅沼 博司 野出 孝一 南野 哲男 高島 成二 中篠 光章 篠崎 芳郎 盛 英三 葛谷 恒彦 堀 正二
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-111, 2000-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
24

先行する短時間心筋虚血 (ischemic preconditioning) は, 長時間虚血により生じる心筋壊死サイズを縮小する.本研究では, 麻酔開胸イヌを用いそのメカニズムを検討した.その結果, 1) ischemic preconditioningによる心筋梗塞サイズ縮小効果には, アデノシン産生酵素活性化が関与する, 2) protein kinase C活性化に加えてATP感受性K+チャネル開口がアデノシン産生酵素活性化に関与する, 3) 細胞膜・ミトコンドリアに存在するATP感受性K+チヤネルが独立して相加的にischemic preconditioningに関与する, ことが明らかになった.以上の結果より, ischemic preconditioningによる心筋保護作用にはアデノシンーアデノシン産生酵素・protein kinase C・ATP感受性K+チャネル開口が連関している可能性が示された.
著者
高島 成二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.69-75, 2004 (Released:2004-07-26)
参考文献数
5
被引用文献数
2

循環器領域においてアンジオテンシンIIは重要な役割を担うことが知られている.特に強い生理作用とあわせてシグナル阻害薬が高血圧や心不全の治療に使用されていることからその作用メカニズムを知ることは循環器疾患を考える上で重要である.心筋細胞におけるアンジオテンシンIIの役割はそのGタンパク共役型受容体を介すると考えられており,その結果として心筋細胞の肥大をきたす.しかし,タンパク合成を必要とする肥大反応にG共役型受容体を介する比較的一時的で敏速な細胞シグナルが関与することは特異的なシグナル経路の存在を示唆する.私はアンジオテンシンIIによる心筋肥大シグナルにEGFファミリーに属するHB-EGFという増殖因子が関与することを明らかにした.HB-EGF(heparine binding EGF-like Growth Factor)はG共役型受容体の刺激により細胞膜からメタロプロテアーゼにより分解して遊離され,心筋細胞の肥大を引き起こすことが明らかになった.さらにこのHB-EGFの細胞膜からの遊離が起こらない遺伝子改変マウスを作成すると,このマウスは生後4週ぐらいから徐々に心筋細胞の変性·脱落をきたし,心不全により早期に死亡した.これらの事実はHB-EGFが心筋細胞の肥大をきたすのみならず心筋細胞の代謝·維持に重要な働きを担うことを示唆する.AngiotensinIIなどの刺激によるシグナルはHB-EGFを介していかなる心筋細胞代謝を司るかを概説し,新しい心不全治療の可能性を検討する.