著者
渋谷 綾子 石川 隆二 高島 晶彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究では,1. 古文書の分類と製紙材料の構成物としてのデンプンなどの種類・量・密度等の対象比較による紙の質的比較解析,2. DNAによる和紙の製造手法・地域・時期の分析,3. これらの分析手法を統合した「古文書科学」という研究分野としての可能性探索,という3つを軸とする。2018年度は,資料調査と混入物の分析,現生サンプルのDNA分析による紙材料の識別実験,混入物の標準的データの抽出を試みる。混入物の分析は,(1)資料調査と紙の繊維の分析,(2)混入物の分析,(3)多角的研究,(4)文書研究の4つを柱として設定する。料紙の成分特定については,分担者(石川)とともに現生の紙や原料サンプルのDNA分析を実施し,繊維や糊などの構成物の由来材料を特定する。今年度において,分析・検討を行ったのは主に次の項目である。すなわち,東京大学史料編纂所所蔵「中院一品記」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),国立歴史民俗博物館所蔵「廣橋家旧蔵記録文書典籍類」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),「松尾大社所蔵資料」および米沢市上杉博物館所蔵「上杉家文書」の顕微鏡撮影と構成物の解析(高島・渋谷),現生の紙原料サンプル(カジノキ)のDNA分析(石川・渋谷)。また,AWRANA2018(フランス,2018年5月)や日本文化財科学会第35回大会(2018年7月),第33回日本植生史学会大会(2018年11月),Workshop on Integrated Microscopy Approaches in Archaeobotany 2019(イギリス,2019年2月)では研究手法の紹介と結果の見込みについて報告し,書籍『Integrated Studies of Cultural and Research Resources』では2018年度前半までに得られた研究成果について報告した。