著者
大越 昌子 胡 景杰 石川 隆二 藤村 達人
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.125-133, 2004 (Released:2004-09-18)
参考文献数
31
被引用文献数
4 10

古代に栽培されていたイネの品種や来歴を明らかにすることを目的として,遺伝的変異を比較的よく保有していると考えられる日本の在来イネ(Oryza sativa L.)73品種について,複数のマイクロサテライトマーカーを用いた多型解析による分類を試みた.基準品種として,中国より導入した陸稲4品種および形態的・生理的形質に基づいてIndicaおよびJaponicaに分類されているアジアの在来イネ8品種を用い,多型性の大きい8種(RM1, RM20A, RM20B, RM30, RM164, RM167, RM207, RM241)のマイクロサテライトマーカーを選んで分析した.その結果,日本の在来イネはIndicaおよびJaponicaに大別され,そのうち8品種がIndicaに,残り65品種がJaponicaに属していることが明らかになった.後者に属するものはさらに3つのサブグループ,すなわち陸稲グループ(J-A),陸稲・水稲混合グループ(J-B)および水稲グループ(J-C)に分類された.このうち,グループ(J-B)は陸稲グループ(J-B 1)と水稲グループ(J-B2)の2つのグループに分類され,前者は熱帯Japonica,後者は温帯Japonicaであることが示された.陸稲の「古早生」,「福坊主」および「関取」は,温帯Japonicaの品種と同じグループ(J-B 2)に属していた.これらは水稲と近縁であることから,水稲から転用された陸稲であったと考えられる.本研究に用いた8種のマイクロサテライトマーカー(RM1, RM20A, RM20B, RM30, RM164, RM167, RM207, RM241)は,イネ,特に日本の在来種の分類・識別に有効なマーカーとなりうると考える.
著者
上條 信彦 宇田津 徹朗 高瀬 克範 田中 克典 田崎 博之 米田 穣 石川 隆二
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

東日本を中心とする遺跡出土イネ種子の形態・DNA分析、炭素窒素安定同位体比分析を通じて品種の歴史的展開の時期や内容を明らかにした。また、稲作の導入期にあたる岩木山麓の弥生時代前半期の遺跡発掘調査を実施した。その結果、東北で最古の水田跡が見つかっている砂沢遺跡において微細土壌分析による水田の形成過程および集落の南限が明らかになった。また清水森西遺跡において弥生時代前期の砂沢遺跡と中期中葉の垂柳遺跡の間の時期にあたる稲作集落が検出された。電子顕微鏡・X線CT観察による土器のイネ種子圧痕を検出した。以上よりこれまで不明瞭だった前期から中期の大規模水稲農耕への変遷モデルを作成可能となった。
著者
渋谷 綾子 石川 隆二 高島 晶彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究では,1. 古文書の分類と製紙材料の構成物としてのデンプンなどの種類・量・密度等の対象比較による紙の質的比較解析,2. DNAによる和紙の製造手法・地域・時期の分析,3. これらの分析手法を統合した「古文書科学」という研究分野としての可能性探索,という3つを軸とする。2018年度は,資料調査と混入物の分析,現生サンプルのDNA分析による紙材料の識別実験,混入物の標準的データの抽出を試みる。混入物の分析は,(1)資料調査と紙の繊維の分析,(2)混入物の分析,(3)多角的研究,(4)文書研究の4つを柱として設定する。料紙の成分特定については,分担者(石川)とともに現生の紙や原料サンプルのDNA分析を実施し,繊維や糊などの構成物の由来材料を特定する。今年度において,分析・検討を行ったのは主に次の項目である。すなわち,東京大学史料編纂所所蔵「中院一品記」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),国立歴史民俗博物館所蔵「廣橋家旧蔵記録文書典籍類」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),「松尾大社所蔵資料」および米沢市上杉博物館所蔵「上杉家文書」の顕微鏡撮影と構成物の解析(高島・渋谷),現生の紙原料サンプル(カジノキ)のDNA分析(石川・渋谷)。また,AWRANA2018(フランス,2018年5月)や日本文化財科学会第35回大会(2018年7月),第33回日本植生史学会大会(2018年11月),Workshop on Integrated Microscopy Approaches in Archaeobotany 2019(イギリス,2019年2月)では研究手法の紹介と結果の見込みについて報告し,書籍『Integrated Studies of Cultural and Research Resources』では2018年度前半までに得られた研究成果について報告した。
著者
大越 昌子 胡 景杰 石川 隆二 藤村 達人
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.125-133, 2004-09-01
参考文献数
31
被引用文献数
3 10 1

古代に栽培されていたイネの品種や来歴を明らかにすることを目的として,遺伝的変異を比較的よく保有していると考えられる日本の在来イネ(Oryza sativa L.)73品種について,複数のマイクロサテライトマーカーを用いた多型解析による分類を試みた.基準品種として,中国より導入した陸稲4品種および形態的・生理的形質に基づいてIndicaおよびJaponicaに分類されているアジアの在来イネ8品種を用い,多型性の大きい8種(RM1,RM20A,RM20B,RM30,RM164,RM167,RM207,RM241)のマイクロサテライトマーカーを選んで分析した.その結果,日本の在来イネはIndicaおよびJaponicaに大別され,そのうち8品種がIndicaに,残り65品種がJaponicaに属していることが明らかになった.後者に属するものはさらに3つのサブグループ,すなわち陸稲グループ(J-A),陸稲・水稲混合グループ(J-B)および水稲グループ(J-C)に分類された.このうち,グループ(J-B)は陸稲グループ(J-B_1)と水稲グループ(J-B_2)の2つのグループに分類され,前者は熱帯Japonica,後者は温帯Japonicaであることが示された.陸稲の「古早生」,「福坊主」および「関取」は,温帯Japonicaの品種と同じグループ(J-B_3)に属していた.これらは水稲と近縁であることから,水稲から転用された陸稲であったと考えられる.本研究に用いた8種のマイクロサテライトマーカー(RM1,RM20A,RM20B,RM30,RM164,RM167,RM207,RM241)は,イネ,特に日本の在来種の分類・識別に有効なマーカーとなりうると考える.
著者
細谷 葵 佐藤 洋一郎 槙林 啓介 田中 克典 石川 隆二 趙 志軍 楊 春 DORIAN Qfuller MICHELE Wollstonecroft
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

昨今再考がうながされている、中国におけるイネの栽培化とそれに基づく農耕社会の形成過程について、考古学(植物遺存体・人工遺物)と遺伝学の共同研究による解明をめざした。イネ栽培化期における野生植物利用の実態解明、農耕具・加工具の体系化、栽培イネの伝播経路について新しい見解を得ることができ、複数の英語・日本語論文や国際学会で発表した。また、国際シンポジウム2件(1件は共催)を開催し、国際的な研究者の意見・情報交換の場を提供するとともに、その成果の出版も行った。