著者
林 淳 岡田 正彦 梅田 千尋
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近世には4回の改暦が幕府を中心におこなわれ、暦が全国に流通した。9世紀の改暦以来、長い空白があり、1685年貞享改暦をなされた。貞享改暦が企画された背景には、渋川春海の復古的な国家観があった。渋川によれば、神武天皇が古暦を作成したが、それが失われて、その後に中国暦が伝来した。中国暦をそのまま日本で使うことは、中国の文化的な属国になることを意味するという。貞享改暦以降、暦が全国統一されて、流通したことによって、暦の知識をふまえた暦占・易占が出版というかたちで民衆世界に広がった。また仏教天文学は、暦学の進展にともない近世後半に宗派をこえた思想運動になった。
著者
梅田 千尋
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.06, pp.137-154, 2010-03-26

近年、中世寺院史料論は大きく進展し、とくに東大寺・東寺に関する研究は、中世史上の重要な論点を提起してきた。一方これらの史料群に含まれる近世史料は多くの場合研究の対象外とされ、中近世史の断絶という問題も生じている。本稿では、中世・近世史料が混在する権門寺院(旧仏教系大寺院)の一つである興福寺史料の整理と目録編成の事例をとりあげ、構造的把握の方法と若干の見通しを述べる。興福寺は、中世以降の複雑な寺院組織のため一元的な史料管理が行われにくく、さらに明治維新期の寺院組織解体によって史料の分散が進んだ結果、現在は20以上の所蔵機関に関連史料が分散している。本稿では、先行研究を手がかりに現段階での興福寺関連史料の伝来・所蔵関係を明らかにし、文書群の全体像把握を試みた。その上で、興福寺一乗院坊官二条家史料(京都大学総合博物館蔵「一乗院文書」)の調査に即して、寺院組織という観点から文書群の構造的分析のための試案を提示した。さらに、「一乗院文書」の事例によって導き出された構造分析が、他の文書群にも適用しうることを指摘した。以上の考察を通じて、各史料群の調査において、できるだけ興福寺関連資料群全体の関連を念頭に置き、相互参照可能なフォンド・サブフォンドの設定を行うことを提案した。Historical records accumulated in whole Kofuku-ji temple (興福寺) since Nara period have drained off at the era of Meiji Restoration, then museums, libraries and universities most of the records are scattered over more than 23 organizations. In this situation, it is difficult to determine even the exact volumes of the whole Kohuku-ji temple records. This article surveys present condition of records and examines how to reconstruct lost structure of records generated by Kohlku-ji. Among these Kofilku-ji records, so called "Ichijoin-documents” (一乗院文書) kept in Kyoto university museum (京都大学総合博物館) has rich documents about early modern temple administrator Nijo family (二条家). Through archival research on this "Ichijoin-documents”, I try to develop a methodology to figure out archival system of Kofuku-ji and governance system of the temple. For example, "Ichijoin-documents” Ford includes amount of books about Daigyoji (大行事), a sort of operating officer Analyzing this kind of documents, we can find distinctive style documents made by Daigyoji. Then, comparing style of documents to another Fords of Kofuku-ji records, relation among the records can be apprehensible.
著者
西田 かほる 井上 智勝 岩城 卓二 梅田 千尋 志村 洋 中川 すがね 幡鎌 一弘 東谷 智 山崎 善弘 引野 亨輔 松本 和明
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

夷信仰の拠点である西宮神社(現兵庫県西宮市)が所蔵する江戸時代の日記や神社文書、宮司家文書を翻刻することにより、西宮神社の活動と神社に付属する宗教者の実態を明らかにすることができた。同時に、全国の夷社人関係の史料を調査することにより、その地域分布と差異を明確にすることができた。このほか、西宮神社が所蔵する近代の日誌のデジタル撮影を行うことによって、今後の研究の体制を整えた。
著者
梅田 千尋
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
近世の天皇・朝廷研究 (ISSN:18834302)
巻号頁・発行日
no.3, pp.3-15, 2010-03-01

平成21年度 学習院大学人文科学研究所共同研究プロジェクト 近世朝幕研究の基盤形成(近世の天皇・朝廷研究 第3回大会成果報告集)
著者
母利 美和 秋元 せき 岩城 卓二 梅田 千尋 笹部 昌利
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近世中後期の上方地域支配において、譜代藩である淀稲葉家が果たした役割について、基礎的研究を進めるため、旧藩士家に伝存する古文書を中心に史料調査・収集をおこなった。そのため、淀藩稲葉家および旧藩士家に関する史料の全体像把握をおこなうとともに、新たに旧淀藩士の上月家文書2180点、高野瀬家文書257点、竹林家文書257点の調査と全史料の目録化をおこなった。これらの成果により、藩政機構の基礎構造、家臣団の軍制・家格・職制の関係分析をおこない、淀藩の負担する京都火消・京都警衛などの幕府軍役の実態などを明らかにした。