著者
橋本 亮太 安田 由華 大井 一高 福本 素由己 山森 英長 武田 雅俊
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.69-75, 2010 (Released:2017-02-16)
参考文献数
17

自閉性障害やアスペルガー障害などの広汎性発達障害は,対人的相互作用の質的な障害,コミ ュニケーションの質的な障害,限定された反復的で常同的な行動・興味・活動などによって特徴づけられるものである。広汎性発達障害は,遺伝因子と環境因子との相互作用が重要な役割を果たしている多因子疾患と考えられている。しかし,広汎性発達障害の一卵性双生児における一致率は,60-90 %といわれており,統合失調症の約 50 %と比較して遺伝因子が強く,その遺伝率は,90 %とされている。遺伝因子の研究では,自閉症スペクトラム障害関連症候群,連鎖解析,関連解析,染色体異常と CNV(コピー数変異)解析,遺伝子発現解析,中間表現型解析がなされており,これらの解析技術の進歩が著しい。 その結果,2003 年にX染色体上にある Neuroligin3 と Neuroligin4 遺伝子が自閉症の原因遺伝子として報告され,続いて 2006 年に 22 番染色体上の SHANK3 遺伝子が報告された。さらに,新たにできたDNA の変異のうち CNV(copy number variant)と呼ばれるゲノムの一部の領域の欠失や重複が,孤発性の自閉症では多いことが報告された。2008 年には,この CNV の全ゲノムサーチにより,2 番染色体の Neurexin 遺伝子が関連することが見出され,興味深いことに,Neuroligin と相互作用することから注目を浴びている。これらの遺伝子群は,すべてシナプスにて機能する分子であり,広汎性発達障害では,シナプス機能の障害があることが示唆される。本稿では,広汎性発達障害の遺伝子研究の歴史と最新の知見に加えて,今後の方向性について概説したい。
著者
橋本 亮太 安田 由華 大井 一高 福本 素由己 山森 英長 新谷 紀人 橋本 均 馬場 明道 武田 雅俊
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.2, pp.79-82, 2011 (Released:2011-02-10)
参考文献数
5

精神疾患によって失われる普通の健康な生活は,他のすべての疾患と比較して最も大きいことが知られており,社会的経済的な影響は重大である.精神疾患の代表である統合失調症の治療薬である抗精神病薬はその効果が偶然見出された薬剤の発展型であるが,これらを用いると20~30%の患者さんが普通の生活を送ることができるものの,40~60%が生活全体に重篤な障害をきたし,10%が最終的に自殺に至る.そこで統合失調症の病態に基づいた新たな治療薬の開発が望まれており,分子遺伝学と中間表現型を用いて,統合失調症のリスク遺伝子群を見出す研究が進められている.これらのリスク遺伝子群に基づいた治療薬の開発研究が始まっており,今後の成果が期待される.
著者
橋本 亮太 安田 由華 大井 一高 福本 素由己 山森 英長 新谷 紀人 橋本 均 馬場 明道 武田 雅俊
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理學雜誌 = Folia pharmacologica Japonica (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.2, pp.79-82, 2011-02-01
被引用文献数
1

精神疾患によって失われる普通の健康な生活は,他のすべての疾患と比較して最も大きいことが知られており,社会的経済的な影響は重大である.精神疾患の代表である統合失調症の治療薬である抗精神病薬はその効果が偶然見出された薬剤の発展型であるが,これらを用いると20~30%の患者さんが普通の生活を送ることができるものの,40~60%が生活全体に重篤な障害をきたし,10%が最終的に自殺に至る.そこで統合失調症の病態に基づいた新たな治療薬の開発が望まれており,分子遺伝学と中間表現型を用いて,統合失調症のリスク遺伝子群を見出す研究が進められている.これらのリスク遺伝子群に基づいた治療薬の開発研究が始まっており,今後の成果が期待される.
著者
橋本 亮太 大井 一高 山森 英長 安田 由華 福本 素由己 藤本 美智子 梅田 知美 武田 雅俊
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.63-67, 2013 (Released:2017-02-16)
参考文献数
4

遺伝要因が強い統合失調症ではリスク遺伝子を発見するための研究が盛んになされているが,主観的な診断基準や遺伝的な多様性があるため,それを見出すことは困難な状態にある。そこで,中間表現型という概念が統合失調症のリスク遺伝子を見出し,その病態メカニズムを同定するための手法として注目されている。筆者は,統合失調症をはじめ,気分障害,発達障害,健常者のゲノムサンプル付きの中間表現型データベースを構築しており,これらを用いた研究を推進している。本研究においては,免疫応答における主要な転写因子NFκβの構成因子であるRELA遺伝子と統合失調症の関連を検討した。RELA遺伝子の3つのSNPが統合失調症と関連し,特に男性において強いが認められた。最も関連の強いSNP は RELA遺伝子のプロモーター領域のアンドロゲン受容体の結合モチーフを欠如させるものであり,この統合失調症のリスクSNP が RELA遺伝子の発現の低さと関連した。その上このリスクSNPは統合失調症患者におけるプレパルス抑制障害(PPI)とも関連した。これらの結果は,RELA遺伝子の機能的なSNPをリスク多型として同定したため,病態解明に向けて大きな意義があると思われる。このような臨床研究によって精神疾患の分子病態に迫ることは,生物学的精神医学の1つの方向性として,重要であると考えられる。
著者
桃田 茉子 浅野 良輔 永谷 文代 宮川 広実 中西 真理子 安田 由華 柴田 真理子 橋本 亮太 毛利 育子 谷池 雅子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16215, (Released:2017-09-30)
参考文献数
39
被引用文献数
3

This study sought to examine the reliability and validity of the Japanese version of the Behavior Rating Inventory of Executive Function (J-BRIEF). In this study, BRIEF was administered to evaluate executive function in everyday life in 91 subjects with autism spectrum disorder (ASD; ages 12–15; 72 boys) and 2,230 community samples (CS; ages 12–15; 1,083 boys). For this purpose, we applied categorical confirmatory factor analysis, which revealed that the scale was composed of two factors and eight subscales of the high test-retest stability. Reliability was confirmed using an external criterion (ADHD-Rating scale: ADHD-RS). Receiver operating characteristic analysis revealed an optimal cut-off of 118.5 (sensitivity = 0.811, specificity = 0.828). This study confirmed the reliability and the validity of J-BRIEF.
著者
岩瀬 真生 石井 良平 高橋 秀俊 武田 雅俊 橋本 亮太 橋本 亮太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。