- 著者
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村山 史秀
亀田 誠
高松 勇
井上 寿茂
土居 悟
豊島 協一郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本アレルギー学会
- 雑誌
- アレルギー (ISSN:00214884)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.1, pp.28-33, 1996
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
-
9
吸入療法に熟練した成人5名において, NE-U03(従来の超音波吸入器の欠点の改善が為された新携帯型超音波吸入器), 加圧式吸入器であるPari-Master, 日商式の3機種を使用して, DSCG液吸入後の尿中排出量を比較検討したところ, それぞれでの尿排出量は平均1600μg (NE-U03), 680μg (Pari-Master), 360μg(日商式)で, NE-U03が最も多く, Pari-Masterの約2倍, 日商式の約4倍であった. そこで, フローボリューム曲線検査の可能な小児喘息発作患者18例において, NE-U03とPari-Masterで気管支拡張効果に差があるかどうか比較したところ, NE-U03を使用した群で臨床症状スコアが有意に減少し, 心拍数が増加した. 呼吸機能の改善度はNE-U03の%FVC, %FEV_<1.0>, %PEF, %V^^・_<50>, %V^^・_<25>の増加率は, 平均10.3%, 19.1%, 25.5%, 32.5%, 29.3%で, Pari-Masterの10.6%, 15.9%, 24.1%, 25.4%, 21.3%と比較して, %FVC以外はいずれも改善率は大きかった. 以上の結果は, 吸入薬剤肺内沈着率は吸入器の機種によって大きく変動することを示した. しかも気管支拡張剤を使っての検討で, 沈着率の増加が気管支拡張効果を増大させる事を示唆する結果も得られ, 吸入療法の効果を科学的に評価するとき, 名目投与量(nominal dose)で論ずることは, 意味が少ないと言える. 今後吸入療法の科学的な発展の為に, 各機種について, 吸入効果に影響する特性を明らかにしていく事が必須である.