著者
井上 寿茂 土居 悟 高松 勇 村山 史秀 亀田 誠 岡田 正幸 林田 道昭 豊島 協一郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.82-86, 1992-09-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14

小児気管支喘息の重症化, 難治化要因のひとつとして家庭背景の問題が挙げられる. 小・中学生の外来初診喘息児379例, 並びに施設入院療法を行った喘息児103例を対象とした単親家庭の頻度は外来児で10.0% (重症児では25.7%), 入院児で18.4%であった. また入院児では両親の離婚や別居, 家族の精神神経疾患など家庭に問題を持つ喘息児の頻度は39.8%に及んだ. 不登校や怠薬, 喘息以外の心身症の合併など心理的問題を有する率は家庭に問題をもつ喘息児で53.6%で, 家庭に問題のなかった喘息児での24.2%に比べ有意に高率であった. このような心理的問題を有する児では入院期間が長期化し, 積極的に個別的心理治療が試みられていたにもかかわらず再入院の頻度が高く, 医療機関のみでの対応には限界があり, 社会的視野に立った対応策の開発の必要性を痛感した.
著者
吉田 之範 井上 壽茂 亀田 誠 西川 嘉英 高松 勇 土居 悟
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.103-107, 2004-12-25 (Released:2011-01-25)
参考文献数
11

我々は低出生体重児であることが気管支喘息に与える影響について症例対照研究により検討した。当院小児科に通院中の8歳以上の喘息患者で出生体重1500g以上25009未満の低出生体重児15名を症例群とした。各症例に対し1) 当科初診時年齢, 2) 生年月日がほぼ合致し, 3) 8歳時に喘息で当科通院していた, 4) 出生体重25009以上の児を合致順に2名ずつ抽出し, この30名を対照群とした。両群を比較した結果, 初診時の喘息重症度に差はなかったが, 8歳時の喘息重症度は症例群で有意に高かった (p<0.01) 。また, 吸入ステロイド薬の使用頻度 (症例群8名/15名, 対照群4名/30名: p<0.01) においても症例群で有意に高かった。このことから低出生体重児であることが喘息重症化に直接関わっている可能性が示唆された。
著者
髙岡 有理 亀田 誠 矢島 裕子 辻 泰輔 錦戸 知喜 吉田 之範 土居 悟
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.1009-1017, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
18

【目的】小麦アレルギーの経口免疫療法の有効性の報告はみられるが,その方法について比較した報告はない.今回筆者らは小麦の経口免疫療法の効果を摂取間隔の異なる2つの方法で前向きに検討し,その摂取頻度が与える影響を評価した.【対象】うどんの経口負荷試験陽性例で最終負荷量と最大誘発症状より乾麺重量で0.5~5gから摂取開始可能と判断した49名から同意を得て,摂取頻度により週6回以上(頻回群)と週2回(間歇群)の2群に年齢を層別化して無作為に割り付けた.摂取頻度を遵守しかつ経口免疫療法を遂行できた各群16名合計32名を今検討の対象とした.【方法】頻回群と間歇群に経口免疫療法を行い6カ月目の摂取量を評価した.【結果】6カ月後に目標量(3歳以下乾麺重量20g,4歳以上乾麺50g)以上に摂取あるいは負荷試験陰性だった割合は両群ともに75%だった.【結論】小麦アレルギーの経口免疫療法での6カ月後の目標到達率は,1週間当たりの摂取頻度を2回まで落としても毎日の摂取と比較して摂取頻度による明らかな違いがみられないことが示唆された.
著者
村山 史秀 亀田 誠 高松 勇 井上 寿茂 土居 悟 豊島 協一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.28-33, 1996
参考文献数
11
被引用文献数
9

吸入療法に熟練した成人5名において, NE-U03(従来の超音波吸入器の欠点の改善が為された新携帯型超音波吸入器), 加圧式吸入器であるPari-Master, 日商式の3機種を使用して, DSCG液吸入後の尿中排出量を比較検討したところ, それぞれでの尿排出量は平均1600μg (NE-U03), 680μg (Pari-Master), 360μg(日商式)で, NE-U03が最も多く, Pari-Masterの約2倍, 日商式の約4倍であった. そこで, フローボリューム曲線検査の可能な小児喘息発作患者18例において, NE-U03とPari-Masterで気管支拡張効果に差があるかどうか比較したところ, NE-U03を使用した群で臨床症状スコアが有意に減少し, 心拍数が増加した. 呼吸機能の改善度はNE-U03の%FVC, %FEV_<1.0>, %PEF, %V^^・_<50>, %V^^・_<25>の増加率は, 平均10.3%, 19.1%, 25.5%, 32.5%, 29.3%で, Pari-Masterの10.6%, 15.9%, 24.1%, 25.4%, 21.3%と比較して, %FVC以外はいずれも改善率は大きかった. 以上の結果は, 吸入薬剤肺内沈着率は吸入器の機種によって大きく変動することを示した. しかも気管支拡張剤を使っての検討で, 沈着率の増加が気管支拡張効果を増大させる事を示唆する結果も得られ, 吸入療法の効果を科学的に評価するとき, 名目投与量(nominal dose)で論ずることは, 意味が少ないと言える. 今後吸入療法の科学的な発展の為に, 各機種について, 吸入効果に影響する特性を明らかにしていく事が必須である.
著者
井上 寿茂 高松 勇 村山 史秀 亀田 誠 土居 悟 豊島 協一郎
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.102-108, 1994

気管支喘息の急性増悪に対するイプラトロピウム吸入液の効果を検討するため2~5歳の年少児23例と8~14歳の年長児18例を対象とし無作為にサルブタモール+イプラトロピウム群とサルブタモール単独群に分けてネブライザー吸入を行い, 光井のスコア (スコア), パルスオキシメーターによる酸素飽和度 (SpO<sub>2</sub>), 1秒量の予測値に対する百分率 (%FEV<sub>1</sub>) の変動を吸入前, 吸入後15分, 60分に経時的に検討した.<br>年少児, 年長児ともスコアは15分後から著明に改善し, イプラトロピウム併用による効果の差は認めなかった. SpO<sub>2</sub>は年少児ではサルブタモール単独群に比ベイプラトロピウム併用群で有意な改善を示したのに対し, 年長児ではイプラトロピウム併用による差は認められなかった. %FEV<sub>1</sub>は年長児のみ検討しスコアと同様15分後から著明に改善したが, イプラトロピウム併用による差はみられなかった. 以上より, 気管支喘息の急性増悪時, イプラトロピウム吸入液をサルブタモール吸入液と併用することにより年少児では効果の増強を期待できるが, 年長児では効果の増強を期待できないことが示された.
著者
林田 道昭 土居 悟 井上 寿茂 高松 勇 豊島 協一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-8, 1993-01-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
3

DSCG吸入やテオフィリンRTC療法でコントロールできない6歳以上の慢性中〜重症喘息児78例に対し, 平均4.2±2.4年 (0.5〜10年) 間BDI療法を行った。有効性は1年後61.1%, 3年後89.5%と経年的に増加した。5年以上の長期投与で身長や副腎皮質機能 (早朝コーチゾール, rapid ACTHテスト) への抑制はみられなかった。しかし, 小児への安全性は, まだ確立されたとはいえない。さらに, 無効例や導入初期の喘息悪化による死亡例がみられ, 更なる治療法の開発が必要である。
著者
豊原 憲子 山本 聡 長谷 範子 土居 悟 岡田 正幸
出版者
大阪府環境農林水産総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

難治性小児気管支喘息による入院児童に対し、種まき-栽培-収穫-摂食の行程を中心とした園芸プログラムを実施した結果、活動による呼吸機能の低下は認められず、栽培体験と児童個人への管理責任の設定と栽培した植物を自宅家族に持ち帰ることが植物へのこだわりを高めて自主的行動を誘導した。このプログラムにより一症例で顕著なストレス軽減が認められ、病棟内での行動の改善と退院につながるなど、プログラムによる精神的安定と退院の時期に関連性があった。プログラムを提供する庭園内での児童の行動解析から、下草が繁茂して見通しの悪い植生が行動の制限要因となった。
著者
林田 道昭 土居 悟 井上 寿茂 高松 勇 豊島 協一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-8, 1993
被引用文献数
8

DSCG吸入やテオフィリンRTC療法でコントロールできない6歳以上の慢性中〜重症喘息児78例に対し, 平均4.2±2.4年 (0.5〜10年) 間BDI療法を行った。有効性は1年後61.1%, 3年後89.5%と経年的に増加した。5年以上の長期投与で身長や副腎皮質機能 (早朝コーチゾール, rapid ACTHテスト) への抑制はみられなかった。しかし, 小児への安全性は, まだ確立されたとはいえない。さらに, 無効例や導入初期の喘息悪化による死亡例がみられ, 更なる治療法の開発が必要である。