著者
高樹 英明
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.p215-307, 1979-02
被引用文献数
1

【緒言(抄)】ニンニクの栽培は南は沖縄から北は北海道に至るまで広く行われているが,たいてい秋植え初夏~夏どりの普通栽培で行われている.他の作型としては,暖地の一部で冷蔵種球を秋植えして早春~春どりする種球冷蔵早出し栽培と,極早生の品種を秋植えして1月中旬からトンネルをかけて春どりするトンネル早熟栽培とが行われている.種球冷蔵早出し栽培はニンニクの球形成が冬の低温経過によって誘起されるという性質を利用したもので,島田・庄崎(1954)がこの作型の成立可能性を明らかにし,山田(1959a,1959b,1963),幸地・松江(1959)およびその他の研究により実用化されたものである.(中略)ところで,ニンニクは以上の作型により,初夏から夏にかけては新鮮な球が多く供給されるが,秋から早春までの聞は収穫がない.(中略)冬から早春の端境期に新鮮な球を多量に供給するためには,現在はまだ問題がある種球冷蔵早出し栽培法の技術的改善をはかり,栽培面積の拡大をうながすことや,この作型の前進化を進めることがまず考えられるが,その他に収穫球の良品質を長く維持する貯蔵法の開発や新たな作型の開発,例えばタマネギで行われている春纏え秋どり栽培のような作型の開発を行うことも考えるべきであろう.しかしこれらの作型開発を進めるにあたっての基礎となるニンニク球の休眠の生理生態や球形成の生理生態はまだ十分明らかにされていない.本研究は上記の作型開発および球の貯蔵の基礎となる理論を明らかにする目的で行ったもので,ニンニクの発育(球形成・休眠)を進める最適および限界の外的条件を明らかにしニンニクの生活環の展開と外的および内的条件との関係を解明しようとした.さらに,温度,日長操作による球形成・休眠の人為的制御法を探求した.そして,これらの実験結果と本研究以外の筆者の研究成果とに基づいて種球冷蔵早出し栽培等の栽培改善の処方を考察するとともに収穫時の球の良品質性を長期間維持する貯蔵法や春植え秋どり栽培の可能性について検討した.
著者
高樹 英明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.416-423, 2001-07-15
参考文献数
20
被引用文献数
2 8

山菜アマドコロP. odoratum Druce var. pluriflorum Ohwiの種子の発芽様式, 休眠型, 休眠打破に関して検討した.収穫後まもない種子を10月に播種して戸外で育てた場合, 翌夏になって発芽(発根)したが, 芽の地表への出現と展葉が見られたのは翌々春の4月であった.発芽が起こるためには種子が前もって低温湿潤処理される必要があったので, 種子休眠(幼根休眠)の存在が認められたが, その休眠は5℃, 60日間処理でほぼ完全に打破された.また, 種子への5mMエテホン処理は幼根休眠打破の弱い効果を示した.幼根休眠打破後の発芽適温は17∿25℃であった.種子の低温処理を, 種子を取り出す前の果実に対して行うより, 取り出した種子に対して行うほうが, 発芽促進効果が大きかった.果実から取り出した種子を低温湿潤処理前に1週間程度風乾させても発芽に影響はみられなかった.幼根休眠打破処理後, 発芽適温下に置いた種子の発芽とその後の生長活動は90日後には停滞した.これは幼芽が休眠(上胚軸休眠)に入ったためと考えられる.幼芽が生長を再開してシュートが地表に現れ, 緑葉を展開するためには再度低温経過を必要としたので, アマドコロ種子の休眠型はBartonとSchroeder(1942)が報告したdouble dormancyに似ていた.アマドコロの上胚軸休眠打破後の地表へのシュートの抽出適温は17∿29℃であった.シュートの地表への抽出は, 幼根休眠打破後の温暖期間(21℃)と上胚軸休眠打破のための5℃処理期間の長さに大きく影響され, どちらかの期間を120日とし, 他方を90日にした場合に, シュートの地表への抽出が比較的早く, また高い率で起こった.
著者
高樹 英明 青葉 高
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.565-572, 1985-01-21

【緒言】チューリップ'GoldenHarvest'は,Multiflowered系統のものを除く他の大多数の品種と同様に,通常1茎に1花しかつけないが,年によって大球では花茎が上部で2~5本に分枝して,それぞれの分校の頂端に花をつける個体がかなり生ずる.この分枝現象は枝咲きといわれ,オランダではみられないが,わが国では問題になっている.枝咲きの発生が夏の涼しいオランダでみられないこと,また,わが国でも発生率が年によりかなり変動することなどから,環境要因とくに夏の高温・多湿が枝咲き発生に大きな影響を及ぼしているのではないかと従来からいわれてきた.著者の1人青葉は,枝咲きの誘起には掘り上げ期までの地温・気温や掘り上げ直後の条件の影響が大きく,貯蔵初期の高温条件がこれらに相加されて枝咲きを誘起するらしいことを前報で示した.本報では,校咲き発生を助長する要因とされている球根の大きいことや球根の高温貯蔵に関して,それらの要因の影響がどのような場合にあらわれやすいのかについて検討した.また,植物生長調節物質と枝咲き発生との関係や球根生産栽培での施肥条件と生産球の枝咲き発生との関係などについても検討した.本報はこれらの検討により'GoldenHarvest'の枝咲き発生に影響を及ぼす要因の種類とそれらの作用様式とを明らかにしようとしたものである.