著者
池田 道正 叶 季文 貫名 学
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.p849-852, 1989-01
被引用文献数
1

【要旨】本論文はニンギョウタケ子実体のメタノール抽出から得られる脂溶性区分に含まれている植物生長阻害物質の化学的研究結果をまとめたものである.本区分の分画・精製で得た植物生長阻害活性を有する二種の化合物について,種々のスペクトル分析と化学反応によって化学構造の解析を行い,これらがネオグリフォリンおよびグリフォリンであることを明らかにした.ネオグリフォリンはハクサイ発芽種子のその後の根の生長を, 50PPMの濃度でコントロール区の根長に比べ50%阻害した.一方,グリフォリンは100PPMの濃度でネオグリフォリンと同程度の阻害を引き起こした.
著者
高樹 英明
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.p215-307, 1979-02
被引用文献数
1

【緒言(抄)】ニンニクの栽培は南は沖縄から北は北海道に至るまで広く行われているが,たいてい秋植え初夏~夏どりの普通栽培で行われている.他の作型としては,暖地の一部で冷蔵種球を秋植えして早春~春どりする種球冷蔵早出し栽培と,極早生の品種を秋植えして1月中旬からトンネルをかけて春どりするトンネル早熟栽培とが行われている.種球冷蔵早出し栽培はニンニクの球形成が冬の低温経過によって誘起されるという性質を利用したもので,島田・庄崎(1954)がこの作型の成立可能性を明らかにし,山田(1959a,1959b,1963),幸地・松江(1959)およびその他の研究により実用化されたものである.(中略)ところで,ニンニクは以上の作型により,初夏から夏にかけては新鮮な球が多く供給されるが,秋から早春までの聞は収穫がない.(中略)冬から早春の端境期に新鮮な球を多量に供給するためには,現在はまだ問題がある種球冷蔵早出し栽培法の技術的改善をはかり,栽培面積の拡大をうながすことや,この作型の前進化を進めることがまず考えられるが,その他に収穫球の良品質を長く維持する貯蔵法の開発や新たな作型の開発,例えばタマネギで行われている春纏え秋どり栽培のような作型の開発を行うことも考えるべきであろう.しかしこれらの作型開発を進めるにあたっての基礎となるニンニク球の休眠の生理生態や球形成の生理生態はまだ十分明らかにされていない.本研究は上記の作型開発および球の貯蔵の基礎となる理論を明らかにする目的で行ったもので,ニンニクの発育(球形成・休眠)を進める最適および限界の外的条件を明らかにしニンニクの生活環の展開と外的および内的条件との関係を解明しようとした.さらに,温度,日長操作による球形成・休眠の人為的制御法を探求した.そして,これらの実験結果と本研究以外の筆者の研究成果とに基づいて種球冷蔵早出し栽培等の栽培改善の処方を考察するとともに収穫時の球の良品質性を長期間維持する貯蔵法や春植え秋どり栽培の可能性について検討した.
著者
田沢 一二 阿部 利徳 笹原 健夫
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.395-401, 1997-01

【摘要】一般にアスパラガス(Asparagus officinalis L.)では雄株の方が雌株より生産性が良いことが知られている.このことは同じ雌雄異株植物である山菜のシオデ(Smilax old hami Miq.)でも経験的に認められている.本研究は,雌雄異株植物であるアスパラガスとシオデにおけるアイソザイムパターンの差異を調べ雌雄の判定ができるかどうかの基礎的知見を得ようとしたものである.幼植物の茎葉部から抽出用の緩衝液で粗タンパク質を抽出した後2種類の電気泳動によってタンパク質を分離し,その後それぞれの活性染色を行って差異を調べた.ネティブポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後に,エステラーゼ,リンゴ酸脱水素酵素,酸性ホスファターゼ,およびグルコース6-リン酸脱水素の活性染色を行った結果,アスパラガスおよびシオデの雌雄間で差異が認められた.等電点電気泳動後に各種酵素の活性染色を行った結果では,エステラーゼおよび酸性ホスファターゼにおいて,雌雄間で差異が認められた.以上のことから,これらアイソザイムは雌雄異株植物であるアスパラガスおよびシオデの雌雄識別の基礎資料になると推察される.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, 1954-11

【緒言】 イナゴRice HopperはイネOryzasativa L.その他の作物害虫として東亜諸地域に広く分布しており、その防除などについてもかなり沢山の報告がある。しかしこの害虫の寄生蜂に関する研究は、応用昆虫学的見地からみて一層興味深いものがある。そしてイナゴ卵に寄生する寄生蜂については、ハネナガイナゴOxya velox F ABRICIUS の卵に寄生するScelio oxya GIRAULT (RAMACHANDRA 1921)やChinese grass hopper、Oxya chinensis THUM.の卵に寄生するScelio pembertoni TIMBERLAKE(PEMBERTON 1932)などの報告がみられるが、本邦においては卵寄生蜂の発生は全く知られず、したがってこの寄生蜂に関する研究は全く行われていない。たまたま1953年8月山形県庄内地方において、この卵寄生蜂が発見され、しかも新種であることが判明したので、筆者は主とじてこれが生態について研究を行っている。ここに現在まで調査した結果の一部を取麗めて報告したいと思う。本稿を草するに当り、絶えず御懇篤なる御指導と御鞭撞をいただく、本学阿部嚢博士に深謝の意を表すると共に、寄生蜂の同定及び文献については東京農工大学石井悌博士、北海道大学渡辺千向博士、農林省農業技術研究所加藤静夫技官にその多くを負い、また東北大学加藤陸奥雄博士、農業技術研究所深谷昌次博士並びに同所の各技官からは数多くの御ー教示をいただいたので、ここに深謝の意を表する。なお年平均気象図作製に当つては、 本学気象研究室から資料をおかりしたのでお礼を申し上けたい。
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.245-255, 1968-01

前報において水田に近接した雑草地は,いわゆる水田害虫の生息の場として水田とは密接不可分の関係があり,これら水田と雑草地相互間の虫の移動をつきとめることは,生態学的にも興味深いばかりでなく,害虫防除の面からも是非必要であることを強調した.そして先の1960年と1963年の調査結果から,水田では農薬散布の影響が強くあらわれ,雑草地にくらべて単純な群集構造を示しているが,農薬の散布回数や種類などによって年によって変化があることを推論し,さらに水田と雑草地の間を行き来する2,3のある種害虫では,水田への農薬投入によって水田での個体数は減少するが,時を同じくして雑草地では個体数に増加の傾向が認められ,加えて農薬効果の薄らいだ後は水田と雑草地とでは上とは全く反対の現象のおこることを指摘しておいた.本報では1965年と1966年における調査結果を述べ,先の結果と併せて吟味してみたいと思う.本稿を草するに当り, 日頃ご指導ご鞭撞をいただく阿部襄教授に感謝の意を表する.また調査水田の管理資料は附属農場の五十嵐弘教官からおかりしたので, ここに記してお礼を申し上げる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, 1958-03

両卵寄生蜂とも単為生殖を行ないうるが,このような場合には雄ばかりのprogenyを産出する(第1表及び第2表).しかし野外自然状態下ではかかる単為生殖は極めて稀な場合にしか起らず,野外で採集,あるいは目撃される雄のほとんどは交尾した雌の不授精卵が発育したものと考えられる.卵寄生蜂の分布地域として,両卵寄生蜂の棲息する山形県庄内地方,ムライクロタマゴバチだけ発見された新潟県高田市附近(第2報参照)のほか,新たに著者の調査により,両卯寄生蜂が山形県新庄市,秋田県鹿角郡花輪町附近に,またツルオカクロタマコバチが岩手県盛岡市附近にも分布することが確認された.なお,両卵寄生蜂とも第1令幼虫で越冬するが,生活環については詳しく後報する予定である.
著者
苫名 孝
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, 1956-03

【緒言】 大根のすいり現象については,従来多くの業績があり生態的,組織解剖的な面で得る所多大であるが,体内成分の点では定量的な成績を見出し難いうらみがあった.著者はさきに,根菜類に及ぼす肥料三要素の影響について報ずる所があったが,その一端として体内含量とす発現との関係を調査し,更に窒素含量の消長についてはようやく詳細に検討を試みた.なお,地上部茎葉との関係を明らかにする必要から,その手がかりとして浸透圧に就いても若干の測定を行った.