著者
高橋 ユリア 下村 道子 長野 美根 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-120, 1990-02-20
被引用文献数
1

文献から抽出した郷土料理,行事食の煮物254種において,主な材料,調理終了時の煮汁の量,材料の種類の数,主な調味料,主な材料の状態およびだしの使用の有無について分類し,全国の各地域で作られている煮物の特徴を知ろうとした。分析には,数量化分析II類,III類およびクラスター分析を用いた。1.地域による煮物の特徴に,最も寄与しているのは主な材料で,クラスター〔北海道・東北,北陸〕,〔関東,関西〕,〔中国〕,〔四国〕,〔中部,九州〕,〔沖縄〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸〕では魚類が最も多く,ついで野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類であり,これらが全材料の89%を占めていた。〔関東,関西〕では,魚類と野菜類が多く,次に豆類が多かった。〔中国〕では,魚類,野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類に獣鳥肉類が加わっていた。〔四国〕では,野菜類が最も多く,ついでいも類,魚類であった。〔中部,九州〕では,魚類,獣鳥肉類が多く,野菜類が少なかった。〔沖縄〕では,獣鳥肉類が非常に多く,また海藻類,特に昆布の煮物が多かった。2.調理終了時の煮汁の多少によるクラスターは,〔北海道・東北,関西,関東,中国,九州,四国〕,〔北陸,沖縄〕,〔中部〕に類型化できた。〔北陸,沖縄〕では,煮汁のある鍋物類が少なかった。〔中部〕では,煮汁の少ない佃煮,甘露煮類が全国のなかでも最も多い地域であった。3.材料の種類の数では,クラスター〔北海道・東北,四国,中国,沖縄,九州〕,〔北陸,関東〕,〔中部〕,〔関西〕に類型化できた。〔中部〕,〔関西〕では,材料の数が少なく,これらの地域から南の方と北の方に向かって,いずれも材料の数は,増加する傾向であった。4.主な調味料については,各地域ともしょうゆで味つけした煮物が最も多かった。クラスターは〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕,〔中国,沖縄〕,〔関東〕,〔関西,四国〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕と〔中国,沖縄〕はともにしょうゆの次にみその煮物の多い地域であるが,〔中国,沖縄〕の方が塩の煮物の割合が高い。〔関東〕,〔関西,四国〕は,みその煮物が非常に少ない地域である。〔関東〕はしょうゆの次に塩の煮物が多いが,〔関西,四国〕には塩の煮物はほとんどなかった。5.主な材料が加工食品か生鮮食品かの分類では,クラスター〔北海道・東北〕,〔北陸,関東,中部〕,〔関西,九州,中国,沖縄,四国〕の3つに類型化できた〔北海道・東北〕は加工食品の使用が最も多く,これより南の地域へ向かうにつれ,加工食品の使用が減少し,生鮮食品が増加する傾向であった。6.だしの使用の有無と地域との偏相関係数は非常に低かった。だしの使用の有無と主な材料との関連についての相関は高く,魚介類を使用した煮物では,だしを使用しない傾向であり,植物性の材料を使用した煮物ではだしを使用する傾向にあった。
著者
高橋 ユリア 福田 真由美 下村 道子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.222-227, 1991-08-20
被引用文献数
2

新流通魚のテクスチャーを知ることにより,各々の魚に適した調理方法を探ることを目的とした。新流通魚13種と従来から日本人が食べている魚3種の魚肉について機器測定を行い,得られた測定値を多変量解析で分析し以下の結果を得た。1)カツオのテクスチャーに似ているものはチリマアジ,シマガツオ,アロツナスで,これらは加熱により身がしまり硬くなり,みずっぽさが少なくぱさぱさした口ざわりのものと考えられた。2)マアジのテクスチャーに似ているものはアカダラ,ホキ,ミナミダラ,オレンジラフィーで,これらは硬さ,口ざわりともにカツオとマコガレイの中間にあるものと考えられた。3)マコガレイのテクスチャーに似ているものはテラピア,ギンダラ,メルルーサでこれらの加熱魚肉は柔らかく,みずっぽく,ぱさぱさしていない口ざわりのものと考えられた。4)カツオ,マアジ,マコガレイのテクスチャーに該当しないものは3種あった。オキメダイ,シロサワラの加熱魚肉の硬さは,カツオとマアジの中間であるが,マコガレイよりもみずっぽく,ぱさぱさしていないものと考えられた。ギンブカの加熱魚肉は非常に軟らかくなるものと考えられた。5)魚肉のテクスチャーを知ることにより,各々に適した調理方法を推測できた。
著者
高橋 ユリア
出版者
大妻女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

目的 摂食障害者の毛髪中含有微量元素の変動、特異的な食概念・食行動、健常者の食概念との比較、家族環境との関係、食によるストレス情報伝達方法などについて今までに研究してきた。今回は摂食障害者の「調理」という観点から「食」と「ストレス」のかかわり方を分析する事を目的とした(日本家政学会第55回大会発表.2003.5.24.お茶の水女子大学)。方法 摂食障害者60名に食概念とストレスについて、調理を中心にアンケートおよび聞き取り調査を行った。また、調理が好きであると回答した摂食障害者のなかから、調査協力を得られた20組の母親および家族に、摂食障害者から受ける調理・食・ストレスとの関係についてのアンケートおよび聞き取り調査を行った。さらに、過食症女子短大生の手記95件(1992年7月〜11月)、拒食症の娘を子供に持つ母親の手記15件(1995年〜1999年)から、調理・食・ストレスに関係する表記を抽出し分析を行った。この両者についても聞き取り調査を行った。結果 摂食障害者60名中46名が調理をすると答えた。この46名中32名が調理をすることが好きであると答えた。好きな理由として、食べる事はしないが味見による満足感、家族への強制摂食要求、自分の調理したものを相手が食べる事の支配感、調理は誰にも邪魔されない時間・空間、自分の思い通りにできるなどであった。しかし、作った料理を強制的に大量に摂食させられる母親、家族にとっては食べる事もストレスであり、また食べない事も摂食障害者のストレスの原因となり、この事が自分達のストレスへとつながっていた。摂食障害者は調理条件へのこだわりも強く、自分自身のストレスにもなっていた。
著者
下村 道子 高橋 ユリア 渡辺 雄二 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.87-94, 1988-06-20
被引用文献数
1

郷土料理,行事食の中の汁物の特徴を検討するひとつの方法として,クラスター分析を行った。汁物は「週刊朝日百科・世界の食べもの」日本編から選びだし,だし汁の主な材料,実の主な材料,主な調味料,汁の実の量の各項目について,地域別の類型化を試みた。分析過程において,非類似度の定義および距離の更新によってクラスターの形態は変化するが,それぞれのクラスターの融合過程を検討し,各要因と関連づけていく方法をとった。それによって以下の結果が得られた。だし汁の主な材料については,クラスター〔北海道・東北,九州〕,〔関東,中国,四国〕,〔北陸,中部,関西〕,〔沖縄〕に類型化できた。〔北海道・東北,九州〕は,さまざまなだし汁の材料を使用しており,かつ,だし汁を使用しないものも多かった。〔関東,中国,四国〕は,だし汁を使用しないものが多かった。〔北陸,中部,関西〕は,昆布だしが多かった。〔沖縄〕は,獣鳥肉類が多かった。実の主な材料については,クラスター〔北海道・東北,関西,九州〕,〔関東,中国,四国〕,〔北陸,中部〕,〔沖縄〕に類型化できた。〔北海道・東北,関西,九州〕は,魚介類と野菜類が多かった。〔関東,中国,四国〕は,魚介類が多かった。〔北陸,中部〕は,魚介類と豆類が多かった。〔沖縄〕は,獣鳥肉類が多かった。主な調味料については,クラスター〔北海道・東北,関東,中部〕,〔中国,九州〕,〔北陸,関西,四国〕,〔沖縄〕に類型化できた。〔北海道・東北,関東,中部〕はみそと塩が多かった。〔中国,九州〕は,みそとしょうゆが多かった。〔北陸,関西,四国〕は,みそが多かった。〔沖縄〕は,塩が多かった。汁の実の量については,クラスター〔北海道・東北,沖縄〕,〔四国,九州〕,〔北陸〕,〔関東,中国〕,〔関西〕,〔中部〕に類型化できた。〔北海道・東北,沖縄〕は,量が多かった。〔四国,九州〕は,量の多い汁と少ない汁の割合が高かった。〔北陸〕は,量の中位の汁が多かった。〔関東,中国〕は,量の中位の汁と多い汁の割合が高かった。〔関西〕は,量の中位の汁と少ない汁の割合が高かった。〔中部〕は量が少なかった。総合的にみると,関西,中部,北陸地域の汁物は,昆布だしが多く,汁の実の量が少ない。これらの地域から遠くなるに従い,汁の実の旨味を利用したり,さまざまなだしの材料を使った汁物が増す傾向にあり,汁の実の量も多くなった。全国的に汁の実は魚介類が多かった。調味料は全国的にみそが多いが,関西,北陸地域を境にして,みそとしょうゆが多い中国,九州地域と,みそと塩の多い中部,関東,北海道・東北地域に区別された。ただし,沖縄は独特であり,だし汁および実の材料に獣鳥肉類が多く,調味料には塩が多かった。