- 著者
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安藤 敏
高橋 千晶
幾見 京子
増田 彩子
清水 俊雄
- 出版者
- 日本育種学会
- 雑誌
- 育種学雑誌 (ISSN:05363683)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.3, pp.195-201, 1997
アルファルファ雄性不稔系統(CMS)のオルガネラの遺伝情報を栽培品種に導入するため非対称融合法の検討を行い,その結果,安定して雑種カルスを得る方法を確立した。栽培品種のプロトプラストはヨードアセトアミド(IOA)で処理し,CMSのプロトプラストにはX線を照射したのち電気融合法で非対称融合を行った。栽培品種のプロトプラストはアガロース包埋法で培養した場合,6mMのIOAで処理することでほとんど不活化できた。CMSのプロトプラストのコロニー形成を抑えるには900Gy以上のX線照射量が必要で,他の植物と比べ高いことが明らかとなった。融合処理した細胞はアガロース包埋法で培養したが,この時,培養の最初からナース細胞を加えず,アガロースのまわりにKaoの液体培地のみを加えることにより,不定胚を形成するカルス(embryogenic callus:EC)の出現が確認できた。両親の植物体から全DNAを抽出し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行いRFLP(制限酵素断片長多型)を調査した結果,制限酵素XhoIとプローブatpAの組合せで両者を明確に区別できることを見いだした。IOA濃度として3mMと6mM,X線照射量として1350 Gyと2250 Gy,アガロースのまわりに添加する培地としてKP培地とKC培地を選び,それぞれの組み合わせで融合処理と培養を行い,カルス形成,EC形成,植物体の再生およびmtDNAのタイプ毎のカルスの出現割合に及ぼす影響を調べた。その結果,IOAは低濃度(3mM)の方がカルス数,EC数,再生植物体数が多かったが,栽培品種型のエスケープカルスを抑えるためには高濃度(6mM)が必要だった。X線照射量は2250 Gyの方がカルス形成の頻度が高かった。CMSのプロトプラストに2250 Gyという高い量のX線を照射する条件では,核ゲノムだけでなくオルガネラゲノムが破壊されることが懸念されたが,mtDNAの分析からCMS特有のバンドが確認され,この条件が許容されると判断された。細胞質雑種と考えられるカルスの出現割合,及びECや再生植物体数から考えると,IOA 6mMとX線照射量2250 Gyの組み合わせが最もよいと考えられた。MtDNA分析で雑種型と判断されたカルスについてmalate dehydrogenase(MD)のアイソザイム分析を行った結果,CMS特有のバンドをもたず核が栽培品種型であるサイブリッドと考えられるものが得られた。再生植物体についてもmtDNA分析を行ったが,全て栽培品種と同じ型を示し,雄性不稔の形質は導入されていないものと判断された。