著者
星 健太郎 加納 貞彦 高橋 敬隆 金田 茂 品川 準輝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.42, pp.91-96, 2006-05-11

携帯通信ネットワークでは,固定通信とは発想を異にしたユーザ誘導型トラフィック制御が注目を浴びている.ネットワークの輻輳(例えば花火大会の)時に,ユーザ端末に輻輳であることを表示するとともに,ユーザに通信しやすい場所を推奨する空間分散型制御・時間をずらして通信を促す時間分散型制御・音声からメールに代替メディアを提示するトラフィック縮退型制御が提案されている.しかしながら,ユーザの視点からこれらの制御を評価した検討は殆ど行なわれていない.本稿では,AHP(解析的階層過程)を用いてアンケート調査結果を分析することにより,ユーザ誘導型トラフィック制御に対するオピニオン評価手法を確立している.まずインターネットを介してユーザが容易に回答可能なwebサイトを構築している.次に,AHPの常套手段である一対比較行列計算ならびにその行列に対する固有値問題を解くことにより,ユーザ個々が抱く制御に対する不満度を定量化している.更に,回答結果の無為矛盾性を表すCI(整合度)値を閾値として使い,矛盾ある結果を出したアンケート回答者を除外することを提案する.アンケート回答者全体の意思を表す言わば集団一対比較行列の各成分は閾値をクリアしたユーザに対する一対比較行列該当成分の幾何平均を採ることにより作成している.このようにして得られた集団一対比較行列の最大固有値に対する固有ベクトルを求めることにより,集団意見としての不満度を定量化することに成功している.最後に,どのユーザ誘導型トラフィック制御に対するユーザ不満度が最大化するかが具体的・定量的に明らかになる.
著者
高橋 幸雄 牧本 直樹 滝根 哲哉 高橋 敬隆 宮沢 政清 大野 勝久
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

情報通信ネットワークの新しい性能評価法に関して、基本的な研究および応用的な研究を行った。研究自体は個人あるいは少人数のグループベースで行い、月1回の月例会と年1回のシンポジウムの場で情報交換と研究成果の検討を行った。情報通信ネットワークは急速に変容しており、研究の内容も当初予定していたものとは多少違う方向で行わざるを得なかった。研究計画であげたテーマは次の4つであり、それぞれの研究の進展状況は以下の通りである。1. 入力過程の研究 長期依存性(long-range dependence)のある入力過程の研究と複数の入力がある待ち行列の解析が中心であった。そのなかで特筆すべきひとつの結果は、バッファの溢れ率に着目した場合、長期依存的であるかどうかよりも、ピーク時の入力過程の挙動が本質的であることが示されたことである。2. 極限的状況の研究 マルコフ性あるいは大偏差値理論を用いて、客数分布の裾が幾何的に減少することがかなり広い範囲のケースについて証明された。3. 混雑伝播の研究 ネットワークの多様性のため、研究が進展しなかった。4. コントロールの研究 ATMネットワークを中心に多くの研究がなされ、いくつもの新しい考え方が提案された。とくに移動体通信に関するものや料金によるコントロールの研究が始まり、新たな研究の芽が生まれた。