著者
高谷 康太郎 中村 尚
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.31-42, 2007-03-23

シベリア高気圧の季節内長周期変動及び年々変動の力学を明らかにする。シベリア高気圧の季節内変動の増幅過程には、ブロッキング高気圧の形成が対流圏上層に見られ、それらは2つの典型的なタイプに類別される。両タイプとも、シベリア高気圧の増幅には、対流圏上層のブロッキングを伴う循環偏差と、シベリア高気圧に伴う地表付近の循環偏差との相互作用が重要であることが渦位反転法によって示される。年々変動に関しても、対流圏上層にはやはり2つの典型的な循環変動のパターンが観測されること、さらにそれらの循環変動が惑星波活動の変調として解釈できることが示される。
著者
猪上 淳 飯島 慈裕 高谷 康太郎 堀 正岳 榎本 剛 中野渡 拓也 大島 和裕 小守 信正
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

北極の温暖化増幅に関して、低気圧活動の役割に着目した観測的・数値的研究を実施した。(1)シベリア域の低気圧活動の変動は、水蒸気輸送過程を通じて水循環・河川流量の変動に影響を与えるとともに、夏季北極海上の海氷を減少させる特有の気圧配置を左右する要素であること、(2)冬季バレンツ海やベーリング海の低気圧活動の変化は、近年の北極温暖化および海氷減少に影響する一方で、中緯度での厳冬を引き起こし、その予測には中緯度海洋の変動が鍵であること、(3)北極海航路上の強風や海氷の移流を精度よく予測するには、高層気象観測網の強化が必要であること、などを明らかにした。
著者
中村 尚 本田 明治 高谷 康太郎
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.5-12, 2007-03-23

オホーツク海は大河が注ぐ中緯度の浅海で、その西方と北方をアジア大陸が囲むという地理学的特徴を有する。これを反映し、夏季には加熱される大陸との間に顕著な地表傾度が形成され、冬季にはその気温傾度は反転し、最南に位置する大規模海氷域となる。これら特徴的な地表の熱的状況とその変動が、半球規模の大気循環変動と如何に関連するかという観点から、冬季海氷域の経年変動が大規模な大気循環変動に及ぼし得る影響、並びに夏季の冷涼なオホーツク海高気圧の形成について、データの力学診断と数値モデリングに基づき解説する。
著者
本田 明治 山根 省三 高谷 康太郎 中村 尚
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

:「冷える海洋-暖まる大陸」パターン、いわゆるCOWLパターンの空間構造の特徴やその力学的メカニズムの解明に取り組んだ。再解析データを用いた解析でCOWLは対流圏循環場ではアリューシャン・アイスランド低気圧シーソーに続いて2番目に卓越するモードとして抽出され、長期的なユーラシア及び北米大陸上の昇温傾向に伴って近年の両低気圧の強化傾向を伴っていることが確認された。一方近年の北半球雪氷圏の急変に伴ってCOWLの変動特性にも影響が現れていることが分かった。
著者
高谷 康太郎
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

冬季東アジアモンスーンの経年変動に伴う偏西風変動には大まかに二つのパターンがあることを明らかにした。これらのパターンは冬季モンスーンの変動を考える際の「基本」となるものである。また、北日本の冬季気候に大きな影響を与える北極振動の時間発展の力学も明らかにした。さらに、熱帯海水温と冬季気候の関係を精密に解析し、今まであまり注目されてこなかった事実を明らかにした。これらの成果により、冬季東アジアモンスーンの経年変動の力学の理解および予測可能性の精度向上に貢献することができたと考えられる。