著者
吉田 圭一郎 岩下 広和 飯島 慈裕 岡 秀一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.516-526, 2006-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
35
被引用文献数
3 9 4

本研究では父島気象観測所で観測された78年分(戦前: 1907~1943年,占領期間: 1951~1959年,返還後: 1969~2000年)の月別気温および降水量データを用いて小笠原諸島における水文気候環境の長期的な変化を解析した.占領期間および返還後の年平均気温は戦前と比較して0.4~0.6°C 高く,年平均気温の上昇率は0.75°C/100yrであった.また,返還後の年降水量は戦前に比べて約20%減少した.修正したソーンスウェイト法により算出した月別の可能蒸発量と水収支から,年平均の水不足量(WD)が戦前に比べ返還後には増加したことがわかった.また,返還後は夏季において水不足となる月が継続する期間が長くなった.これらのことから小笠原諸島における20世紀中の水文気候環境は乾燥化の傾向にあり,特に夏季に乾燥の度合いが強まり,また長期化することにより夏季乾燥期が顕在化した.
著者
飯島 慈裕 堀 正岳 篠田 雅人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

1. はじめに <br>ユーラシア大陸での冬季寒気形成は、モンゴルにおいて家畜が多大な被害を受ける寒害(ゾド:Dzud)を引き起こす主要な自然災害要因である。12~3月にかけての低温偏差の持続が、家畜被害と直結する。寒気形成は、継続した積雪面積の拡大と上空の強い低温偏差の維持が関係し、ユーラシアでの地上の低温偏差の強化は、上空に移流してくる北極由来の強い寒気が近年の要因の一つと考えられている(Hori et al., 2011)。特に、北極海の一部であるバレンツ海の海氷急減と対応して、北極の低気圧経路が変わり、それがシベリア高気圧の北偏を促して大陸上への寒気の移流を強めるパターンが提唱されている(Inoue et al. 2012)。 <br>本研究では、2000年代以降のユーラシアでの寒気流出・形成パターンの特徴をとらえるため、再解析データを用いた寒気流出事例の抽出と、その気候場の特徴を明らかにするとともに、高層気象、地上観測データと衛星による積雪被覆データから、ユーラシア中緯度地域での寒気形成について、近年の大規模なゾド年であった2009/2010年冬季を対象として事例解析を行った。<br><br>2. データならびに方法 <br>本研究では、はじめに長期的な寒気流出状況を明らかにするため、1979~2014年の欧州中期予報センター(ECMWF)の再解析データ(ERA-interim)を用いて、北極由来の寒気流出頻度を算定した。寒気流出は、冬季(12~2月)のバレンツ海領域(30-70˚E, 70-80˚N)とユーラシア中緯度領域(40-80˚E, 30-50˚N)との地上気温の15日移動相関が有意となり、かつバレンツ海領域で気温が正偏差の場合とした。 <br>また、2009/2010年冬季でのモンゴル国ウランバートルでの高層気象データ(NOAA/NCDC Integrated Global Radiosonde Archive)とウランバートル周辺でのJAMSTECによる地上気象観測データから、上空寒気移流と逆転層発達に伴う寒気形成過程を解析した。 &nbsp;<br><br> 3. 結果 <br>1979~2014年冬季の北極由来の寒気流出イベント数の時系列によると、2000年以前は、39事例であり、頻度は最大5回、平均1.8回であった。一方、2001~2014年は46回あり、最大7回(2006年)で、平均して3.3回であった。これは、毎月1度は北極由来の寒気移流が起きる状況が近年継続して現れていることになり、その頻度が増えていることを意味している。この長期変化傾向に対応して、2000年代以降は、バレンツ海領域では冬季の気温上昇、ユーラシア中緯度領域では低下傾向が有意に現れていた。 <br>続いて、2009年12月のウランバートルでの寒気形成事例を解析した。12月10~19日にかけて、地上気温が-30℃以下となる寒気が継続している(①期間)。この事例では、9日以降上空の寒気移流と対応して地上の下向き長波放射が急減している。2009年は11月からモンゴルの積雪が拡大しており、放射冷却が進みやすい条件となった。この間、地表から対流圏下層はシベリア高気圧の発達による弱風条件が継続したこともあり、接地逆転層が安定して維持・発達し、寒気が長期間にわたって形成・維持される環境となった。一方、12月24日以降も同様に上空の強い寒気移流があった(②期間)。しかし、対流圏中層から地上まで風速が10m/s以上に達する撹乱によって逆転層の形成が阻害され、-30℃以下の寒気継続は4日間程度と短かった。 <br>以上の結果から、ユーラシア中緯度上空には、北極気候変化に関連してもたらされる強い寒気移流、下向き長波放射量の減少、広域の積雪被覆状態、高気圧発達よる撹乱の減少、によって地表面放射冷却が強まり、逆転層の形成・維持によって異常低温が継続されたと考えられる。今後は、広域積雪をもたらす大気状態と、その後の寒気形成との関係などについて、さらに解析を進める予定である。
著者
飯島 慈裕 篠田 雅人
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.716-733, 2004-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

八ヶ岳連峰稲子岳の凹地で1997年夏季に形成された冷気湖について,中部日本の大気状態との関係を明らかにするとともに,平野・盆地域での夜間冷却との比較から,山岳地域における夜間冷却の形成条件を検討した.7月下旬の梅雨明け直後には,凹地では秋に匹敵する強さの気温逆転を持っ冷気湖が形成された.これは中部日本が梅雨明けをもたらした大陸からの高気圧に覆われ,山岳地域では顕著な乾燥と弱風という大気状態が継続し,放射冷却が強められたためと考えられる.一方,アメダス観測データによると,中部日本の平野・盆地域では,梅雨明け直後よりも8月下旬の方が冷却の強さや冷気移流が顕著であった.この違いは,平野・盆地域では,大気状態の変化よりも地表面の乾湿状態が夜間冷却の強さに影響を与えるのに対して,山岳地域では大気の乾湿と風速が夜間冷却の強さを大きく支配するためと考えられる.
著者
飯島 慈裕 会田 健太郎 浅沼 順 石川 守 岩崎 博之 太田 岳史 小谷 亜由美 佐藤 友徳 篠田 雅人 杉浦 幸之助 朴 昊澤 檜山 哲哉 平沢 尚彦 金子 有紀 堀 雅裕 GOMBOLUUDEV Purevjav OYUNBAATAR Dambaravjaa IIJIMA Yoshihiro AIDA Kentaro ASANUMA Jun ISHIKAWA Mamoru IWASAKI Hiroyuki OHTA Takeshi KOTANI Ayumi SATO Tomonori SHINODA Masato SUGIURA Konosuke PARK Hotaek HIYAMA Tetsuya HIRASAWA Naohiko KANEKO Yuki HORI Masahiro
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要
巻号頁・発行日
no.43, pp.15-25, 2017-09

宇宙航空研究開発機構によって2014年2月に打ち上げられた全球降水観測計画(GPM: Global Precipitation Measurement)の主衛星は高緯度地域の降水量が新規に得られる。このデータの検証は,今後の寒冷圏陸域の水循環・水資源研究等への利用促進に向けた観測精度の向上を図るうえで必要不可欠である。本研究プロジェクトでは,観測研究を実施してきた国内外の機関が協働して,北東ユーラシア(主としてモンゴル・東シベリア)で既設の観測システムを改良し,他の衛星データ解析と合わせて,夏季降水(降雨),冬季降水(降積雪)およびそれらの空間分布に関する地上検証を行う。また,今後の応用研究に向けて,陸面モデル・分布型河川流出モデル,メソ気象モデルを利用した,地域規模のGPM観測データの利用可能性を検討する。
著者
太田 岳史 小谷 亜由美 伊藤 章吾 花村 美保 飯島 慈裕 マキシモフ トロフューム コノノフ アレキサンダー
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

筆者らは,1998年よりロシア・ヤクーツクの北方,約20kmに位置するスパスカヤパッド・カラマツ実験林において,渦相関法を用いた全生態系からの蒸発散量,光合成量の観測を行ってきた.植生条件は上層植生は2007年6月に展葉していた樹木が枯れ始め,下層植生は2006年~2007年よりコケモモから湿地性の草本や低木が繁茂するようになった.気象条件は,降水量は,1998年~2000年は平年並み,2001年~2004年は渇水年,2005年~2009年は豊水年,2010年~2011年は平年並みとなった.その間に,大気側の成分(放射量,気温,飽差など)はあまり大きな経年変動をしなかったのに較べて,地表下の成分(地温,土壌水分量)は明確な経年変動を示した.そして,蒸発散量,光合成量は,この地表面下の成分により変化したと考えられた.すなわち,土壌水分量と蒸発散量は関係は2007年から低下しており,土壌水分量と光合成量は1年遅れて2008年より低下した.つまり,2005年から土壌水分量は上がりはじめ,2年の時間遅れで蒸発散量を低下し,光合成量はもう1年の時間遅れが必要であった.詳しくは,講演時に発表する.
著者
小松 謙介 飯島 慈裕 金子 有紀 Dambaravjaa OYUNBAATAR
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.1003-1022, 2021 (Released:2021-08-28)
参考文献数
44
被引用文献数
1

本稿では,複雑な地形の一方で気象観測網が疎であるモンゴルにおいて,Global Satellite Mapping of Precipitation (GSMaP) によって作成された夏季降水量の推定値の不確実性に注目した。まず、モンゴルの気候・水文気象評価に関連して、全球降水観測ミッション(GPM)の観測情報を含む様々な降水量モニタリングプロダクトの特性の違いを検討するため、複数の降水プロダクトで報告されているモンゴル領域内の夏季平均降水量を比較した。プロダクトの経年変動は同程度だったが、記録された降水量は各プロダクトで異なっていた。雨量計補正が施されたプロダクトでは降水量が最も少なく、衛星のみのGSMaP_MVKでは降水量が最も多くなった。続いて、2016年7月にGPM主衛星がとらえたウランバートル近郊での強雨イベント事例を用いて、降水プロダクトの詳細な比較を行った。この事例では、山間部での雨量計補正が施されたGSMaP_Gaugeと雨量計補正が施されていないGSMaP_MVK の推定値が、アルゴリズムのバージョン6と7で大きく異なった。領域気象モデル(WRF)による数値実験、GPM主衛星の観測、地上雨量計の観測との相互比較によって、GSMaP_Gaugeは、GSMaP_MVKの有する大きな誤差を効果的に緩和することが示された。GSMaP_MVK の大きな誤差の原因は、アルゴリズムのバージョン7の雨量推定にあると考えられた。しかし、GSMaP_Gauge による山岳上での降水量の推定値は、地上降水観測網が存在しない局所的な降水量データの欠落により、降水量補正が持つ潜在的な過小評価の影響を受けている可能性がある。これらの知見は,GSMaPアルゴリズムのさらなる改良に参考になるとことが期待される。
著者
飯島 慈裕 石川 守 ジャンバルジャフ ヤムキン
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF HYDOROLOGICAL SCIENCES
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.119-130, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

モンゴル北部の山岳地域は,北向き斜面にカラマツからなる森林,南向き斜面には草原が広がる植生の漸移帯(エコトーン)をなしている。この森林-草原斜面は,永久凍土・季節凍土の分布と重なり,明瞭な水循環過程のコントラストを示す。本研究は,ヘンテイ山脈トーレ川上流域で2004 年から開始した森林・草原斜面での各種水文気象の観測結果から,植物生長開始と生長期間の蒸散量の季節変化に影響する凍土-水文気象条件の対応関係の解明を目的としている。森林斜面からの蒸散量は,6 月~ 7 月上旬の雨量が7 月の土壌水分量を規定し,その年の蒸散量の最大値と良い対応関係が認められた。また,カラマツの開葉は消雪とその後の凍土活動層の融解との関係が深く,生育開始の早遅も蒸散活動の年々変動に影響している。この森林では,降雨の時期に加えて,消雪時期と凍土融解(活動層発達)時期の早遅が組み合わさることで,植物生長と蒸散量の季節変化と変動量が影響を受けていることが示された。2006 年夏季の流域水収支から,森林は草原に比べ蒸発散量が約半分に抑えられ,活動層内の土壌水分量と合わせて,河川流量に対応した水資源を確保している様子が明らかとなった。すなわち,モンゴル山岳地域の凍土-森林の共存関係は,流域水資源の維持に重要な役割を果たすと考えられる。
著者
飯島 慈裕 門田 勤 大畑 哲夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2007年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.108, 2007 (Released:2007-04-29)

I.はじめに モンゴル北部は,北(森林)から南(草原)に植生が漸移する北方林の南限地域である.また,その山岳地域では,南向き斜面に草原,北向き斜面に森林が差別的に分布している.この特徴的な植物分布に対応して,森林斜面には地下に永久凍土が分布する一方,草原斜面には永久凍土が認められず,その結果,南北斜面で蒸発散・流出特性が異なる可能性など,水文気候環境の違いが示唆されている. 本研究では,この特徴的な植生景観を示す地域での水循環過程を解明する一環として,北向き森林斜面と南向き草原斜面を対象に,森林の樹液流測定と,草原・林床での総合気象観測から蒸発散量の推定を行なった.また,それぞれの斜面について,蒸発散量の季節変化と水文気象条件,ならびに植物生長・フェノロジーとの対応関係を検討した. II.研究地域と観測方法 本研究の観測地点は,モンゴル国の首都ウランバートルの東北東約50kmに位置する,Tuul川上流のShijir川流域内の南北斜面である.観測サイトは,南向き草原斜面(標高1,670m)と,北向き森林斜面 (カラマツ(Larix sibirica Ledeb)が優占;標高1,640m)である. 草原斜面では,総合気象観測データから熱収支計算(bulk法)によって蒸発散量を推定した.また,20cm深までの土壌水分量・降水量を観測した.草の生長は,入力・反射光合成有効放射量の比を緑被の指標として用い,超音波積雪深計の出力を夏季の草丈に変換した. 森林斜面では,林床での総合気象観測データから同様に蒸発散量を推定した.また,Granier法による樹液流測定(カラマツ12個体)を行い,50x50mの樹木調査結果から辺材面積の合計を推定し,平均樹液流速と総辺材面積の積によって樹木からの蒸散量を推定した.これらの和を森林からの蒸発散量とした.同時に,カラマツ4個体に対し,デンドロメータで直径方向の幹生長量測定を行なった.林床での長波放射量の比を樹木の展葉・落葉の指標とした. III.結果 図1に2006年の草原・森林斜面での蒸発散量と水文気候条件,植物生長の季節変化を示す.4~9月の降水量は227mmであり,5~8月は断続的に降水があった.土壌水分量はどちらの斜面も4月下旬の消雪から6月中旬まで高い状態が続き,8月中旬から9月下旬にかけて降水量の減少に対応して乾燥が進行した. 植物生長の季節変化は草原・森林斜面で違いがみられた.草原では5月上旬から展葉が始まり,7月初めに緑被が最大となった.草丈の生長は6月中旬から7月上旬までの短期間で急速に進んだ.草の枯れ(草丈の減少)は8月上旬から始まった.一方,森林では,5月中旬からカラマツの展葉が開始し,6月下旬には展葉が終了した.展葉の終了時期から幹生長が進行し,一貫した生長が8月上旬まで継続した.カラマツの落葉は8月下旬から現われ始めた. 草原での蒸発散量は展葉と共に増加し,生育最盛期(7月)に4mm day-1を越す期間が継続した.蒸発散量の可能蒸発量に対する割合は,7月に約80%であった.森林からの蒸発散量は草原に比べて春の増加時期がやや遅れ,量も約半分(最大2mm day-1)であった.カラマツの生育最盛期(7月~8月中旬)には,林床からの蒸発散は57%,樹木からの蒸散は43%であった.枯れや紅葉・落葉に伴う蒸発散量の減少は草原で8月中旬以降急速に進むのに対して,森林では緩やかに減少する違いがみられた. 以上から,森林-草原斜面の蒸発散量変動は,植物活動の季節変化と降水量,土壌水分量変動とよく対応していた.森林からの蒸発散量は草原に比べて半分程度であり,森林草原の南北斜面は蒸発散量の差を通じて水収支も大きく異なっていると考えられる.
著者
吉田 圭一郎 飯島 慈裕 岡 秀一
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.29, pp.1-6, 2005

植生や生態系に関する研究に比べ、小笠原諸島における気象観測研究は少ない。本稿では小笠原諸島を対象とした気象観測やデータ解析の研究成果をレビューし、今後の課題について述べた。小笠原諸島は水文気候学的に乾燥域と湿潤域の境界に位置していた。近年は気候の乾燥化が顕著であり、その植生に対する影響が危惧されている。島嶼スケールを対象とした気象観測研究では、水平分布と比べて、気候の鉛直分布に関するものはほとんど行われていない。今後は雲霧帯のような植生分布に影響する気候の鉛直分布を詳細に観測していく必要がある。
著者
猪上 淳 飯島 慈裕 高谷 康太郎 堀 正岳 榎本 剛 中野渡 拓也 大島 和裕 小守 信正
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

北極の温暖化増幅に関して、低気圧活動の役割に着目した観測的・数値的研究を実施した。(1)シベリア域の低気圧活動の変動は、水蒸気輸送過程を通じて水循環・河川流量の変動に影響を与えるとともに、夏季北極海上の海氷を減少させる特有の気圧配置を左右する要素であること、(2)冬季バレンツ海やベーリング海の低気圧活動の変化は、近年の北極温暖化および海氷減少に影響する一方で、中緯度での厳冬を引き起こし、その予測には中緯度海洋の変動が鍵であること、(3)北極海航路上の強風や海氷の移流を精度よく予測するには、高層気象観測網の強化が必要であること、などを明らかにした。
著者
飯島 慈裕
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

近年、東シベリアにおいて、気候の急速な湿潤化が進行している。本研究は、現地観測の展開によって、永久凍土地域の土壌水分量が増加し、同時に地温上昇・表層部の永久凍土融解(活動層厚増加)が顕著に進行し、さらに植生・地形の変化がもたらされた一連の凍土荒廃の物理・生態的プロセスを明らかにした。さらに、衛星データ解析から湿潤化による凍土環境荒廃状況について、その時空間分布の地図化手法の開発と検証を行った。