著者
宮崎 友里 重松 潤 大井 瞳 笹森 千佳歩 山田 美紗子 高階 光梨 国里 愛彦 井上 真里 竹林 由武 宋 龍平 中島 俊 堀越 勝 久我 弘典
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-017, (Released:2022-10-05)
参考文献数
36

インフォームド・コンセント(Informed Consent: IC)は、心理療法を提供する際にセラピストが道徳的な義務として行うことが必須とされている。一方で、心理療法のICでは多くの場合、心理療法を実施する期間や費用の設定に関する形式的なIC取得が多い。また、心理療法におけるICは、セラピストの治療関係の重要性をよりよく理解するのに役立つといった側面や、心理的な支援のプロセスにおいて大きなバイアスとなる可能性があるなど、心理療法に与える影響について指摘されているが、わが国でそれらを概観した研究はない。そこで本稿では、心理療法におけるICの現状や研究動向について述べたのち、IC取得が困難な場合の対応や国内施設における心理療法のIC取得に関する現状を報告し、心理療法のICの理解を深めることを目的とする。
著者
高階 光梨 鈴木 ひかり 白塚 龍太郎 大橋 佳奈 宮下 太陽 横光 健吾
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-10, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
16

近年、多くのスマートフォン用アプリケーション・プログラムが抑うつ症状を呈する者や抑うつの予防のために開発され、日常生活場面での情報提供、支援、介入の機会を提供している。本研究は、うつ病に対する心理学的支援を目的としたアプリに関する日本の現状を明らかにすることであった。アプリケーションストアでダウンロード可能なうつ病や抑うつ症状を対象としたアプリは47個であった。ダウンロード可能なアプリについてApp Evaluation Model、アプリの主たる目的、テクノロジーコンポーネント、および治療を目的としたアプリに含まれる認知行動療法の要素について評価を行った結果、概してエビデンスに基づいており、安全で、使用者が期待するサービスを提供しているアプリはほとんど開発されていないことが示唆された。本研究はわが国において利用できるうつ病を対象としたアプリの最初のレビューであり、その枠組み作りに役立つであろう。
著者
神野 真帆 渡辺 和広 中野 裕紀 高階 光梨 伊藤 弘人 大平 哲也 野村 恭子 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-024, (Released:2023-06-08)
参考文献数
20

情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を活用したメンタルヘルスケアサービスが注目されている。予防効果が評価されているアプリケーションがある一方,エビデンスが不確かなものも乱立している。エビデンスの構築とともに,必要な対象に,適切なツールを届ける社会実装が求められている。 ICTを用いたヘルスケアサービスについて,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン構築やサービス利用者による適切な選択のための基盤整備のための研究支援が始まっている。エビデンス構築および社会実装の側面からは,想定利用者の実生活での情報をモニタリングして不安・抑うつを予防するアプリケーションを,深層学習モデルを用いて開発している試みや,原子力発電所事故の被災地で,ニーズ調査,セキュリティの検討,ニーズに合わせたアプリケーションの設計,そのアプリケーションの試験運用といった形で,住民の安心・安全向上を目指したアプリケーションを開発している事例がある。諸外国では,ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの実装を進めるために,サービス提供者が適切なアプリケーションを紹介する際やサービス利用者が選択する際に指針となるアプリケーションを包括的に評価するモデルが提案されている。わが国では,そのようなモデルを実用化した評価項目を使って,利用者のニーズに合わせた適切なアプリケーションを紹介する試みが行われようとしている。 ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスのエビデンスの構築にあたっては,利用者のニーズや実際のデータに基づく開発とその評価が行われようとしている。一方で,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン(とくに評価手法や指標など)が十分に確立していないことは課題となっている。ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの社会実装を進めるためには,構築されたエビデンスを含め,ヘルスケアサービスの評価と選択ができる仕組みづくりの必要がある。
著者
横光 健吾 高階 光梨 山本 哲也
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-043, (Released:2022-05-20)
参考文献数
27

認知行動療法は、さまざまな臨床心理学的問題に対する心理療法の中心的存在として、問題解決に挑み続けてきている。本論文では、遠隔心理実践の統合モデルを紹介するなかで、①遠隔心理支援の概要、および遠隔心理実践における認知行動療法の位置づけ、②支援者の関わりが少ない支援の中で重要となる要素、および活用事例、③ICTツールを用いた認知行動療法の普及に向けた課題、を整理することを通して、遠隔心理支援に関する支援者のリテラシーの向上に寄与したい。
著者
神野 真帆 渡辺 和広 中野 裕紀 高階 光梨 伊藤 弘人 大平 哲也 野村 恭子 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.465-473, 2023-08-15 (Released:2023-08-29)
参考文献数
20

情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を活用したメンタルヘルスケアサービスが注目されている。予防効果が評価されているアプリケーションがある一方,エビデンスが不確かなものも乱立している。エビデンスの構築とともに,必要な対象に,適切なツールを届ける社会実装が求められている。 ICTを用いたヘルスケアサービスについて,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン構築やサービス利用者による適切な選択のための基盤整備のための研究支援が始まっている。エビデンス構築および社会実装の側面からは,想定利用者の実生活での情報をモニタリングして不安・抑うつを予防するアプリケーションを,深層学習モデルを用いて開発している試みや,原子力発電所事故の被災地で,ニーズ調査,セキュリティの検討,ニーズに合わせたアプリケーションの設計,そのアプリケーションの試験運用といった形で,住民の安心・安全向上を目指したアプリケーションを開発している事例がある。諸外国では,ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの実装を進めるために,サービス提供者が適切なアプリケーションを紹介する際やサービス利用者が選択する際に指針となるアプリケーションを包括的に評価するモデルが提案されている。わが国では,そのようなモデルを実用化した評価項目を使って,利用者のニーズに合わせた適切なアプリケーションを紹介する試みが行われようとしている。 ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスのエビデンスの構築にあたっては,利用者のニーズや実際のデータに基づく開発とその評価が行われようとしている。一方で,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン(とくに評価手法や指標など)が十分に確立していないことは課題となっている。ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの社会実装を進めるためには,構築されたエビデンスを含め,ヘルスケアサービスの評価と選択ができる仕組みづくりの必要がある。