著者
安川 康介 野村 恭子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.315-319, 2012-08-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
9
被引用文献数
4

1)医師における性役割分担の実際について検討するため,都内某私立大学医学部同窓会に所属する医師を対象に,診療時間と家事労働時間に関する任意無記名の質問紙調査を実施した.2)週当たりの診療時間は男性の中央値が50時間,女性では40時間と女性の方が短いが,週当たりの家事労働時間は男性の中央値3時間に比べ女性は30時間であった.3)診療時間に家事労働時間を加えた労働時間は,男性医師よりも女性医師の方が長かった.4)本研究では,医師という専門職においても性別役割分担が存在していることが認められた.
著者
安川 康介 野村 恭子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.275-283, 2014-08-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
66
被引用文献数
3

近年, 女性医師の勤務継続支援に関しては活発に議論されるようになってきたが,ジェンダー平等へ向けたより包括的な議論は不十分である.本稿では,日本の医学界におけるジェンダー不平等をめぐる現況について概観し,ジェンダー平等に向けた課題について考察する.医学界のジェンダー不平等の主な原因として,性役割分業を前提とした医師の長時間・不規則な勤務体制,女性医師の家庭と仕事の二重負担,女性に対する固定観念・偏見・差別等があげられる.女性であることが,医師として不利にならない労働環境を構築するために,ジェンダー平等へ向けた取組みが必要である.
著者
神野 真帆 渡辺 和広 中野 裕紀 高階 光梨 伊藤 弘人 大平 哲也 野村 恭子 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-024, (Released:2023-06-08)
参考文献数
20

情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を活用したメンタルヘルスケアサービスが注目されている。予防効果が評価されているアプリケーションがある一方,エビデンスが不確かなものも乱立している。エビデンスの構築とともに,必要な対象に,適切なツールを届ける社会実装が求められている。 ICTを用いたヘルスケアサービスについて,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン構築やサービス利用者による適切な選択のための基盤整備のための研究支援が始まっている。エビデンス構築および社会実装の側面からは,想定利用者の実生活での情報をモニタリングして不安・抑うつを予防するアプリケーションを,深層学習モデルを用いて開発している試みや,原子力発電所事故の被災地で,ニーズ調査,セキュリティの検討,ニーズに合わせたアプリケーションの設計,そのアプリケーションの試験運用といった形で,住民の安心・安全向上を目指したアプリケーションを開発している事例がある。諸外国では,ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの実装を進めるために,サービス提供者が適切なアプリケーションを紹介する際やサービス利用者が選択する際に指針となるアプリケーションを包括的に評価するモデルが提案されている。わが国では,そのようなモデルを実用化した評価項目を使って,利用者のニーズに合わせた適切なアプリケーションを紹介する試みが行われようとしている。 ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスのエビデンスの構築にあたっては,利用者のニーズや実際のデータに基づく開発とその評価が行われようとしている。一方で,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン(とくに評価手法や指標など)が十分に確立していないことは課題となっている。ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの社会実装を進めるためには,構築されたエビデンスを含め,ヘルスケアサービスの評価と選択ができる仕組みづくりの必要がある。
著者
片岡 仁美 野村 恭子 川畑 智子 勅使川原 早苗 岩瀬 敏秀
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.365-375, 2014-10-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的:女性医師の離職と復職及び育児休業の取得について現状を明らかにし,離職に影響を及ぼす要因について解析する.方法:岡山大学卒業生および同大学臨床系講座に入局した女性医師1403名に質問票を送付した.結果:回答者(n=420,回収率29.9%)のうち離職経験者は46.6% (n=191),離職時期は卒後10年以内が92.4%(n=171)であった.離職理由は「出産・育児」が51.5%(n=98),「夫の転勤」が21.1% (n=40)であった.初回離職時82%(n=151)が復職を希望していた.考察:柔軟な勤務体制の確立や育児休業の取得できる安定した勤務環境の整備がキャリア構築に重要である.
著者
大類 真嗣 田中 英三郎 前田 正治 八木 淳子 近藤 克則 野村 恭子 伊藤 弘人 大平 哲也 井上 彰臣 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.101-110, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

大震災の支援に当たった専門家による研究成果と経験に基づき,災害時のメンタルヘルスと自殺予防に資する留意点についてまとめた。支援の対象と支援方法の重点は,被災からの時期・段階によって変化する。とくに被災による避難時と避難指示解除時はともに留意が必要である。対象のセグメンテーションを行い,必要な支援を必要なタイミングで届ける必要がある。真に支援が必要な対象やテーマは表出されない場合があることに留意する。震災後に生まれた子どもや母親の被害,高齢者の認知症リスクも増えることが観察されている。被災者だけではなく,その支援を行う自治体職員や保健医療福祉職員のメンタルヘルスにも配慮する必要がある。避難地区だけでなく避難指示解除地区においても自殺率が高いという知見も得られている。教育や就労支援,社会的役割やサポートまで,総合的・長期的な支援が必要で,保健医療関係者だけではない分野横断的なネットワークの構築が平時から必要である。危機的な状況であるほど,なじんだ手段しか使えない。平時からの教育・訓練・ネットワーク化で被害の緩和を図っていく必要がある。
著者
五島 史行 野村 恭子 中尾 睦宏 瀬戸 泰
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.148-156, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1

はじめに : めまいの多くは末梢前庭障害によるものであり, 一時的な症状で改善することが多い. しかし, 一部では症状が遷延化する. 本研究では, 3カ月以上にわたりめまい症状が遷延している難治性めまい患者における重症度に影響している要因について検討した.  対象と方法 : 都内単一医療施設耳鼻咽喉科外来にて3カ月以上一般的治療を行ったにもかかわらず, めまい症状が遷延した患者のうち, 2012年4~11月の間に入院による積極的な治療を希望した難治性末梢性めまい210例 (女性75%, 平均年齢65歳) を対象とした. 検討した項目は性別, 年齢, 就労の有無 (無職/就労), 最終学歴 (短期大学以下/大学以上), 心理尺度である. 心理尺度には, (a) 身体感覚に対する破局的思考尺度 (Somatosensory Catastrophizing Scale : SSCS), (b) 身体感覚増幅尺度 (Somatosensory Amplification Scale), (c) 身体症状評価 (Medical Symptom Checklist), (d) 自己評定式抑うつ尺度 (Self-rating Depression Scale : SDS) のそれぞれについて自記式質問紙を用いて尋ねた. めまいの頻度が週に1回以上をめまい重度群, それ未満をめまい軽度群と定義し, それぞれの因子との関連を統計学的に検討した.  結果 : めまい軽度群に比べて, めまい重度群は有意に若く (p=0.001), 就労しており (p=0.001), 最終学歴は大学以上であった (p=0.013). また, 心理尺度のSSCS (p<0.0001) ならびにSDS (p=0.049) の平均点はめまい重度群が軽度群よりも有意に高かった. めまいの重症度に影響する因子を検討するロジスティック回帰分析では説明変数としてSSCSの合計値を投入したモデル1とSSCSの各因子の値を投入したモデル2を行い, 就労していない場合に比べ就労しているとめまいは約3倍重症化しやすく (モデル1 OR 3.47, 95%CI : 1.51~8.00;モデル2 OR 3.18, 95%CI : 1.36~7.45), モデル1にてSSCSの合計点が1点上昇するごとにめまいは3% (95%CI : 1.01~1.05) 重症に傾きやすい傾向を, モデル2にてSSCSの第二因子 (生活上の支障) が1点上昇するごとにめまいは11%重症化に転じる傾向 (OR 1.11, 95%CI : 1.03~1.19) を認めた.  考察 : 難治性めまいにおいて身体感覚に対する破局的思考は重症度に影響を与えていることが明らかとなり, 認知の歪みの影響を受ける病態であることが示唆された. その他の背景因子の中では, めまい重度群では就労しているものが多く, 今後の検討事項に外的な要因として職場での人間関係やサポートなどの社会的環境因子が考えられた.
著者
太田 智子 松崎 浩之 児玉 浩子 寺田 宙 野村 恭子 太田 裕二 王 暁水 飯田 素代 日比野 有希
出版者
公益財団法人日本分析センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

東京電力福島第一原子力発電所事故後、国民の間に放射性物質への不安が広がった。中でも放射性ヨウ素については甲状腺がんとの因果関係が心配され、特に感受性の高い乳児についての影響が懸念されている。本研究では乳児の主たる栄養源の母乳を対象に、数種類存在する放射性ヨウ素のうち半減期が最も長いヨウ素129(1570万年)の分析を実施した。母乳は脂肪分が多いため分析することが難しく、母乳中のヨウ素129を分析した例はない。今回、母乳中のヨウ素を分析する手法を確立し、健康な母親から採取した母乳中のヨウ素129を分析しバックグラウンドを把握すると共に、データを基に乳児の母乳摂取による内部被ばく線量評価を試みた。
著者
堀江 早喜 竹内 真純 山岡 和枝 野原 理子 蓮沼 直子 冲永 寛子 野村 恭子
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.264-270, 2015 (Released:2015-09-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

Objectives: This study aims to develop a scale of “women-doctor-friendly working conditions in a hospital setting”. Methods: A task team consisting of relevant people including a medical doctor and a hospital personnel identified 36 items related to women-doctor-friendly working conditions. From December in 2012 to January in 2013, we sent a self-administered questionnaire to 807 full-time employees including faculty members and medical doctors who worked for a university-affiliated hospital. We asked them to score the extent to which they think it is necessary for women doctors to balance between work and gender role responsibilities on the basis of the Likert scale. We carried out a factor analysis and computed Cronbach’s alpha to develop a scale and investigated its construct validity and reliability. Results: Of the 807 employees, 291 returned the questionnaires (response rate, 36.1%). The item-total correlation (between an individual item score and the total score) coefficient was in the range from 0.44 to 0.68. In factor analysis, we deleted six items, and five factors were extracted on the basis of the least likelihood method with the oblique Promax rotation. The factors were termed “gender equality action in an organization”, “the compliance of care leave in both sexes and parental leave in men”, “balance between life events and work”, “childcare support at the workplace”, and “flexible employment status”. The Cronbach’s alpha values of all the factors and the total items were 0.82–0.89 and 0.93, respectively, suggesting that the scale we developed has high reliability. Conclusions: The result indicated that the scale of women-doctor-friendly working conditions consisting of five factors with 30 items is highly validated and reliable.
著者
神野 真帆 渡辺 和広 中野 裕紀 高階 光梨 伊藤 弘人 大平 哲也 野村 恭子 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.465-473, 2023-08-15 (Released:2023-08-29)
参考文献数
20

情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を活用したメンタルヘルスケアサービスが注目されている。予防効果が評価されているアプリケーションがある一方,エビデンスが不確かなものも乱立している。エビデンスの構築とともに,必要な対象に,適切なツールを届ける社会実装が求められている。 ICTを用いたヘルスケアサービスについて,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン構築やサービス利用者による適切な選択のための基盤整備のための研究支援が始まっている。エビデンス構築および社会実装の側面からは,想定利用者の実生活での情報をモニタリングして不安・抑うつを予防するアプリケーションを,深層学習モデルを用いて開発している試みや,原子力発電所事故の被災地で,ニーズ調査,セキュリティの検討,ニーズに合わせたアプリケーションの設計,そのアプリケーションの試験運用といった形で,住民の安心・安全向上を目指したアプリケーションを開発している事例がある。諸外国では,ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの実装を進めるために,サービス提供者が適切なアプリケーションを紹介する際やサービス利用者が選択する際に指針となるアプリケーションを包括的に評価するモデルが提案されている。わが国では,そのようなモデルを実用化した評価項目を使って,利用者のニーズに合わせた適切なアプリケーションを紹介する試みが行われようとしている。 ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスのエビデンスの構築にあたっては,利用者のニーズや実際のデータに基づく開発とその評価が行われようとしている。一方で,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン(とくに評価手法や指標など)が十分に確立していないことは課題となっている。ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの社会実装を進めるためには,構築されたエビデンスを含め,ヘルスケアサービスの評価と選択ができる仕組みづくりの必要がある。
著者
野村 恭子 松島 みどり 佐々木 那津 川上 憲人 前田 正治 伊藤 弘人 大平 哲也 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.647-654, 2022-09-15 (Released:2022-09-10)
参考文献数
26

本稿では第80回日本公衆衛生学会総会において,「ウィズコロナ社会のメンタルヘルスの課題と対策」をテーマとしたシンポジウムに登壇した,大学生,妊産婦,一般労働者,医療従事者を対象にコロナ禍のメンタルヘルス対策の実践および研究を行っている公衆衛生専門家により,それぞれの分野における知見・課題・対策を報告する。コロナ禍におけるメンタルヘルスへの影響を各世代,各フィールドへの広がりを概観するとともに,ウィズコロナ時代でどのような対策が求められているのか,問題点を抽出,整理し,公衆衛生学的な対策につなげていくための基礎資料としたい。
著者
廣川 空美 森口 次郎 脊尾 大雅 野村 洋子 野村 恭子 大平 哲也 伊藤 弘人 井上 彰臣 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.311-319, 2021-05-15 (Released:2021-06-03)
参考文献数
17

メンタルヘルス不調者のサポートのために,地域職域連携が謳われているが,実行性のある取り組みは少ない。とくに小規模事業場は課題が多く,地域と職域との密接な連携による対策が求められる。地域で実践されている好事例や認識されている課題を挙げ,メンタルヘルス対策の連携の阻害要因を整理し,実行性のある連携方法を提案することを目指したシンポジウムを開催した。 産業保健総合支援センターを核にした地域専門医療機関との連携による事例では,地域の専門医療機関の情報提供とその有効活用の工夫が示された。地域における産業保健を支援する医療リソースの把握と事業場への情報提供は産業保健総合支援センターが貢献できる領域である。 京都府では,医師会や行政が,地域の産業医,精神科医,人事労務担当者等関係者間で,連携目的に応じた定期的な会合や研究会を開催しており,多様な「顔の見える」多職種連携が展開され,関係者間で発生する課題や不満も含めて議論されている。 社会保険労務士として企業のネットワークを,障害者雇用に活用している事例では,地元の事業活動の核となる金融機関や就労移行支援事業所等と連携して,有病者や障害者のインターンを中小企業で受け入れるプロジェクトが展開されている。フルタイムの雇用にこだわらず,事業場のニーズと有病者の就業可能性をすり合わせる仕組みは,メンタルヘルス不調者の復職などに応用できる可能性がある。 相模原市では,評価指標を設定しPDCAを回しながら零細企業を対象とする支援を行っている。具体的には,市の地域・職域連携推進連絡会において,中小事業所のメンタルヘルス対策を含めた健康づくりの推進を目的に,事業所を訪問し,健康経営グッドプラクティスを収集して,他の中小事業所の事業主へ周知する取り組みを行っている。 連携の阻害要因には,職場から労働者の家族等に連絡が取りにくい点,メンタルヘルス不調者が産業保健のケアの対象から漏れたときの支援の維持方法,保健師等専門職がいない職場でメンタルヘルスを進める工夫,サービスを展開するマンパワーの不足が挙げられた。職域と地域の連携のギャップを埋めるためには,保健師や臨床医を含む関係者による,それぞれのメリットを求めた連絡会や勉強会等の顔の見える関係づくりは有用で,小規模事業場へのアプローチは健康問題全般の支援にメンタルヘルスを組み込む形で行うことが受け入れやすいと考えられた。
著者
竹内 武昭 中尾 睦宏 野村 恭子 錦谷 まりこ 矢野 栄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.103-110, 2007-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
21
被引用文献数
4

ストレス自覚度や社会生活指標が,筋骨格系症状に及ぼす影響を評価するため,日本の国民統計データの解析を都道府県単位で行った.国民生活基礎調査,人口動態統計,厚生労働省衛生業務報告に基づき,1995年と2001年におけるストレス自覚度と19の社会生活指標の計20変数を抽出し,腰痛,関節痛,肩こりの有訴率との関連を調べた.因子分析の結果,19の社会生活指標は,「都市化」「加齢と生活の規則性」「個人化」の3因子に分類されたが,ストレス自覚度は,「都市化」因子に属する社会生活指標8変数と有意な相関があった.重回帰分析により,そうした「都市化」因子の影響を調整しても,ストレス自覚度は,腰痛(1995年と2001年)・関節痛(2001年のみ)・肩こり(1995年と2001年)と有意な関連が認められた.ストレス自覚度は,「都市化」因子と密接なつながりがあったが,その交絡要因の影響を調整しても,筋骨格系症状の有訴率に関連していることが示唆された.
著者
長澤 徹 野村 恭子 竹之下 真一 平池 春子 土谷 明子 大久保 孝義 冲永 寛子
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.18033, 2019 (Released:2019-06-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1

Objectives: In academia, harassment may often occur and remain unrevealed in Japan, which discourages young researchers from pursuing their career. It is necessary to estimate and improve the perception of “academic harassment” among university faculties. Therefore, in this study, we aim to develop a scale of perception of academic harassment.Methods: Prior to a quantitative survey, a task team consisting of medical doctors, researchers, nurses, hospital workers, and managers in general affairs division identified 36 items related to academic harassment. In February 2016, we sent a self-administered questionnaire to 1,126 academic faculty members who worked in a medical university located in Tokyo, Japan. We instructed them to score the extent to which they consider each item as related to academic harassment based on a Likert scale. We carried out maximum likelihood factor analyses with promax rotation and computed Cronbach’s alpha to develop a scale and investigate the reliability of the scale.Results: In total, 377 returned the questionnaires (response rate, 33.5%; male, 73.8%). In factor analyses, we removed 17 items owing to low factor loadings, and four factors were eventually extracted. The first factor was termed “Harassment in organization (7 items)” because it included conditions of forcing a particular person to work on chores or lectures for students that may prevent one’s academic research outputs. The second factor was termed “Violence and denying personal character (4 items)”. The third factor was termed “Research misconduct (5 items)” including conditions of excluding a particular person from the coauthor list of research outputs or pressuring a person to fabricate, falsify, or plagiarize research outputs. The fourth factor was termed “Research interference (3 items)” including a condition of interference with conference attendance. Cronbach’s alpha values of these four factors ranged from 0.83 to 0.91, suggesting that the scale had high reliability. The means of these factors did not differ according to gender but were higher in participants aged 50 or older than in younger participants.Conclusions: The results suggest that the scale of perception on academic harassment consisting of four factors with 19 items is valid and reliable to some extent.
著者
野村 恭子 中尾 睦宏 竹内 武昭 藤沼 康樹
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.619-625, 2005
参考文献数
20
被引用文献数
1

うつ状態の26歳男性にparoxetine 10mgを4カ月間投薬後, 家庭的・経済的理由により三環系抗うつ薬へ変更した.Paroxetine中止3〜4日後より衝動性, 易刺激性, 激越などが出現したが, うつ状態のコントロール不良が前景に立っていたため, SSRI退薬症候群の診断が困難であつた.患者は突然の症状に動揺し, 診察予約を無断キャンセルするなどその後の治療経過に難渋した.海外の疫学研究では, 同症候群は早期に自己寛解する経過良好の疾患群で, 希死念慮や投薬量について因果関係は検討されていなかつた.SSRIの投薬を中断する場合には, たとえ最低量の中断においても, 患者に予期される症状を十分に説明することが, 円滑な治療の継続のため重要であると考えられた.
著者
福井 次矢 高橋 理 徳田 安春 大出 幸子 野村 恭子 矢野 栄二 青木 誠 木村 琢磨 川南 勝彦 遠藤 弘良 水嶋 春朔 篠崎 英夫
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2681-2694, 2007-12-10
被引用文献数
5 4

平成16年度に開始された新医師臨床研修制度が研修終了時の研修医の臨床能力にどのような影響をもたらしたのかを調査する目的でアンケート調査を行った.旧制度下の研修医(平成15年3月の2年次研修医)に比べて新制度下の研修医(平成18年3月の2年次研修医)は,調査対象となった幅広い臨床能力の修得状況(自己評価)が全般的に著しく向上し,以前認められていたような大学病院の研修医と研修病院の研修医との差がほとんど認められなくなった.また,調査対象となった82の症状·病態·疾患と4種類の医療記録すべてについて,旧制度下の研修医に比べて新制度下の研修医の経験症例数·記載件数が有意に多かった.新医師臨床研修制度による研修医の幅広い臨床能力修得という目的は達成される方向にあることが示唆された.<br>
著者
中尾 睦宏 野村 恭子 竹内 武昭 山地 清久 矢野 栄二
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1037-1042, 2006-12-01
被引用文献数
1

本研究では,帝京大学病院の外来データベースを用いて,ベンゾジアゼピン系薬剤(BZP)の科別処方状況を,選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI)ならびにセロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害薬(SNRI)と対比させながら,比較検討した.帝京大学病院の診療科を内科,外科,神経内科,精神科,その他の科の5群に分け,各科のBZPとSSRI・SNRIとの処方割合(B/S比)を計算した.病院全体の年間処方は644,444件であったが,うちBZPが11.9%,SSRIが1.6%,SNRIが2.3%であった.BZP処方の中では,内科群が26.8%を占めていた.内科群のB/S比は13.0と最大で,外科群7.6,神経内科群4.8,精神科群2.5と続いた.うつ患者の多くが内科を受診するという文献報告もあり,特に内科領域で,BZPからSSRIやSNRIへの処方切り替え可能な症例が多くいるかもしれない.
著者
野村 恭子 中尾 陸宏 竹内 武昭 山地 清久 佐藤 幹也 矢野 栄二
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.41-47, 2007-01-01

帝京大学医学部附属病院を受診し何らかの投薬を受けたすべての外来通院患者34,422名を対象に,ベンゾジアゼピン(BZP)系薬物の処方期間について調査を行った.コンピューター・オーダリング・システムから性別,年齢,BZP,診療科(内科系,外科系,精神科・心療内科系,その他)を抽出し,患者単位のデータベースを作成した(2002年7月から2003年6月).その結果,BZPを処方された患者は5,959名(17%)であったが,投薬期間が4カ月以上の群(長期処方群4,470名)と3カ月以内の群(短期処方群1489名)の臨床学的特徴を比較したところ,長期処方群では短期処方群に比べて男性が多く,年齢が高く,また診療科では内科系とその他の科で長期処方が多い傾向にあった(いずれもp<0.05).BZP系薬物は長期連用で健康障害を与えることが知られており,その処方につき大学病院での教育プログラムが重要である.