著者
古瀬 暢達 鶴 浩幸 角谷 英治
出版者
一般社団法人 日本統合医療学会
雑誌
日本統合医療学会誌 (ISSN:24355372)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.12-23, 2020-05-20 (Released:2021-05-20)
参考文献数
61

目的 : 「眼疲労および眼精疲労に対する鍼治療」 に関する研究の現状を調査すること。方法 : 医中誌WebおよびPubMedを用いて、関連する研究と症例報告を収集し、本分野における研究の現状について分析した (2019年7月検索) 。結果 : 42文献が収集された。内訳は、ランダム化比較試験が4件、準ランダム化比較試験が6件、比較研究が6件、比較対照群のない研究が13件、症例報告が13件であり、システマティックレビューは報告されていなかった。2010年代の文献数が24文献であり、それ以前と比べて大幅に増加していた。介入・治療は、鍼の種類、通電、刺鍼手技、刺鍼深度、配穴、治療理論、負荷の設定などさまざまな要素の組み合わせで行われていた。収集された多くの文献で、眼疲労または眼精疲労に鍼治療が有効であることが示唆されていた。考察・結論 : 今後、本分野における質の高い研究がさらに蓄積され、より高いレベルのエビデンスが提示されることが望まれる。
著者
福野 梓 鶴 浩幸 生島 美紀 山田 潤
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.628-635, 2006-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
15

【目的】置鍼刺激は仮性近視や眼精疲労の改善に有用であり、毛様体筋緊張低下、縮瞳、脈絡膜血流増加などの作用を有する。今回、置鍼刺激が網膜感度閾値に及ぼす影響について検討した。【方法】屈折異常以外に眼科的疾患を有しない健康成人11例11眼 (平均年齢27.8歳±7.1、平均±標準偏差) を対象とした。鍼刺激は仰臥位にて両側の合谷、太陽、上晴明穴に10分間の置鍼術を行った。鍼刺激前後における網膜感度閾値をハンフリー視野計のBlue on Yellow視野プログラムを用いて測定し、感度低下の際に指標となるMean deviation (MD) 値と中心窩閾値とについて比較検討した。また、視野測定時間の変化を評価した。同一症例における10分間の安静仰臥位を対照とし同検討を行った。【結果】鍼刺激前後、安静前後におけるMD値や中心窩閾値に変化はなく、両群間にも有意な差は検出できなかった。しかし、安静仰臥位後の視野測定時間は有意に延長したが (14.9±20.1秒, p<0.05) 、鍼刺激後では有意な変化がみられず、逆に3.6±56.9秒短縮した。測定時間が5秒以上短縮した被験者は鍼刺激群に有意に多かった (p<0.05) 。【考察】健康成人に対する鍼刺激ではハンフリー視野計で検出できる程度の網膜感度閾値変化はみられなかった。測定時間延長には感度測定時のばらつきに対する閾値再測定や固視不良が密接に関連しており、鍼刺激による網膜感度の維持、眼精疲労の減少、集中力の持続などが示唆された。
著者
高橋 則人 鶴 浩幸 江川 雅人 松本 勅 川喜田 健司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.706-715, 2005-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【目的】施設入所高齢者の風邪症状に及ぼす間接灸の効果を、少数例においても臨床試験が可能な単一被験者研究法 (n-of-1 デザイン) を用いて検討した。【方法】老人保健施設入所中の高齢者2名に対し、16週間にわたって試験を行なった。試験は介入期間8週と対照期間8週をランダムに割付けるn-of-1無作為化比較試験 (n-of-1RCT) デザインで行なった。介入期間の間接灸は週3回、大椎穴と左右風門穴に各3壮ずつ行なった。評価は風邪の有無および風邪症状に関する項目を4ないし5段階評価にて行なった。【結果】風邪の有無に関する項目では介入期間と対照期間との間に有意な差を認めなかった。また風邪症状に関する項目においても、介入期間と対照期間との間に有意な差を認めなかった。【考察・結語】今回の試験では間接灸の風邪症状に対する効果は認められなかった。その要因としては、治療 (刺激) 部位や刺激量の不足、および被験者の生活環境の影響、さらに今回のような風邪症状等の研究に対するn-of-1 RCTデザインの適性の問題などが考えられた。
著者
安藤 文紀 鶴 浩幸 北小路 博司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.308-318, 2020 (Released:2021-10-28)
参考文献数
27

【目的】先進国の鍼の利用や制度を調査し、我が国で鍼が発展する課題を検討する。 【方法】米国・韓国・日本について、pubmed.gov、scholar.google.com、google.comで acupuncture 、regulation、educationなどのキーワードを用いて英語文献と日本語文献を検索した。 【結果】日本の年間鍼灸受療率は減少傾向にあるが、米国の鍼受療者の割合は増加し、韓国は鍼灸を最も利用していた。米国では47州とコロンビア特別区で鍼の法規制が有り、43州と特別区で鍼を医師の業務範囲としていた。2020年から連邦政府は高齢者の医療保険制度で鍼の費用を補償するようになった。韓国では伝統医学である韓医学の制度が法制定され、韓医師が鍼を含む韓医学の保険診療を行っていた。米国では医師1万人が鍼の講習を受け、医師の鍼の学会会員は1,300名以上、2018年の鍼免許保有者は37,886人。2016年の韓医師は23,845人。米国連邦政府は医療保険の適用のため、鍼施術者に鍼の修士課程修了以上の学歴を求め、13州と特別区で医師が鍼を実施するには200時間以上の教育が必要。韓国では高卒後6~7年等の教育により韓医師を育成し、国家試験後4年間の専門医研修プログラムにより鍼灸科専門医を養成している。 【考察・結語】前報を含め調査した6か国の内、医療施設での医行為として鍼を提供しない制度は日本だけであった。海外に比べ日本は医療としての鍼の情報が少なく、国民から鍼が医療として認知されないことが、鍼受療率低下傾向の一因と考えられる。日本の鍼が発展するには次の4つを検討することは重要と考える。1. 医療施設でも鍼を提供し、国民に鍼が医療として認知されること。2. 医療施設で鍼が提供される未来に向けてのはり師の対応。3. 医療施設での鍼の役割。4. 医師・はり師のはり教育。