著者
松本 勅 寺沢 宗典 田和 宗徳 山川 緑 西川 弘恭 森本 武利
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.17-25, 1990-04-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
20

寒冷刺激に対する足趾の反応の特性を明らかにするため, 男性25名の左第一趾と示指の同時氷水浸漬時の寒冷血管反応を測定し, 比較検討した.同室温 (25~26℃) にもかかわらず, 浸漬前皮膚温は示指で4.5℃, 第一趾で9℃の個体差があり, 第一趾皮膚温は示指のそれに比べて有意な低値を示した.浸漬後の第一趾の皮膚温下降の時定数は示指の1.8倍で有意に大きく, 上昇発現時間は有意に長く, 浸漬中平均皮膚温は有意に低い値を示した.浸漬前皮膚温が等しいグループ間の比較においても指趾の反応には有意な差が認められた.浸漬前の足底深温部は手掌深部温に比して有意に低く, 浸漬中は共に有意な下降を示した.浸漬終了20分後に手掌深部温は速やかに回復を示したが, 足底深部温は測定終了までには回復しなかった.足趾と手指の反応の差異には, 両部位の体積差 (足趾が手指の約2.2倍) に基づく組織熱容量の相違等の関与が示唆された.
著者
井上 基浩 勝見 泰和 川喜田 健司 岡田 薫 中村 辰三 松本 勅
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.130-140, 1998-06-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ラットの腰部への鍼刺激による坐骨神経の血流変化についてレーザードップラー法を用いて検討した。また、その機序を調べる目的で坐骨神経の電気刺激による坐骨神経血流の反応と、薬物投与の影響についても併せて検討した。その結果、鍼刺激時には増減さまざまな変化を認め、約半数において血圧の変化に同期した反応であった。しかし、半数においては血圧の変化と必ずしも一致しない反応を認めた。神経の電気刺激は測定側の同側と反対側で行ったが、同側では血圧の変化はみられず血流のみが増加した。この増加反応はアトロピンの投与によりやや減少した。反対側の刺激では血圧の変化と必ずしも一致しない反応を認めた。これらの結果から、鍼の刺激部位や方法によっては、血圧の変化を伴わない坐骨神経に対する血管拡張性の反応が得られる可能性が示唆された。
著者
高橋 則人 鶴 浩幸 江川 雅人 松本 勅 川喜田 健司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.706-715, 2005-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【目的】施設入所高齢者の風邪症状に及ぼす間接灸の効果を、少数例においても臨床試験が可能な単一被験者研究法 (n-of-1 デザイン) を用いて検討した。【方法】老人保健施設入所中の高齢者2名に対し、16週間にわたって試験を行なった。試験は介入期間8週と対照期間8週をランダムに割付けるn-of-1無作為化比較試験 (n-of-1RCT) デザインで行なった。介入期間の間接灸は週3回、大椎穴と左右風門穴に各3壮ずつ行なった。評価は風邪の有無および風邪症状に関する項目を4ないし5段階評価にて行なった。【結果】風邪の有無に関する項目では介入期間と対照期間との間に有意な差を認めなかった。また風邪症状に関する項目においても、介入期間と対照期間との間に有意な差を認めなかった。【考察・結語】今回の試験では間接灸の風邪症状に対する効果は認められなかった。その要因としては、治療 (刺激) 部位や刺激量の不足、および被験者の生活環境の影響、さらに今回のような風邪症状等の研究に対するn-of-1 RCTデザインの適性の問題などが考えられた。
著者
石井 努 池内 隆治 勝見 泰和 松本 勅 片山 憲史 越智 秀樹
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.244-248, 1994-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

変形性腰椎症の患者40名 (男性28名, 女性12名, 年齢42~80才, 平均61.2才) に対して運動療法とSSP療法を併用した鍼治療を行い, ペインスケール法を用いて治療効果の検討を行った。鍼治療は腎兪, 志室, 大腸兪など腰部を中心に雀啄術を行い, ほかに症状に応じて治療点を加えた。鍼治療の後に, 運動療法として Williams Exercise より, 腹筋・背筋の強化運動および背筋とハムストリングスのストレッチ運動を行わせた。そのうちの背筋の強化運動中には背筋部にSSP療法を併用した。その結果, 平均治療回数5.6回, 治療期間は35.9日であり, 治療効果はペインスケールで10から0または1に改善した著効が22.5%, 2~5に改善した有効が55.0%, 6~8に改善したやや有効が20.0%となり良好な治療成績が得られた。