- 著者
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黄 順姫
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, pp.39-65, 2021-07-07 (Released:2023-04-08)
- 参考文献数
- 14
本論文は,個人が取得した学歴を投資の視点からとらえ,日本と韓国において学歴を社会の構造と個人の実践の文脈で相対的に比較分析を行った。本研究の結果は,社会構造的,文化的,心理学的な時限において学歴の機能が両方の社会で重要な類似性と相違を表している。研究の結果,以下の知見が得られた。第一に,学歴インフレ,デジタル社会で,学歴は両方の社会で,取得者の社会経済的な地位が降下する可能性を最小化し防いでくれることである。学歴のこのような作用を,社会的「地位降下防衛機能」と称することにする。 第二に,日本と韓国の教育制度・システムはそれぞれ固有の特徴がある。その社会的背景には,日本と韓国の社会で社会階層,不平等,教育機会の関係について固有の文化が存在しているのである。日本の高校教育では,偏差値の格差による学校別トラックシステムが存在し,同じ学校には学力の類似した生徒たちがいる。そのため,日本の高校は学校別トラックがあり,また,庇護移動,敗者復活の困難,集団主義の特性がある。韓国の高校教育では,日本のような偏差値によるトラックシステムがなく,同じ学校には学力の分布で明確な差異を見せる多様な生徒がいる。そのため,韓国の高校は,生徒の偏差値の多様性,トーナメントの競争移動,敗者復活,個人主義の特性がある。 第三に,日本と韓国の社会的,文化的特性が女子生徒の大学進学率,及び4年制か2年制の高等教育機関への進学パターンに影響を及ぼしている。 第四に,日本と韓国の高校では,将来について不安を抱いている生徒が約7割で多いのが共通している。日本では,生徒は格差トラックの同じ学校のなかで学歴の分布が類似しているので大学入試への激しい競争は低く,学業への不安を感じることは低い。むしろ,学内での人間関係における不安のほうが相対的に大きい。韓国では,学校別トラックがなく,ほとんどの生徒が大学進学を目指すため,大学入試による激しい競争による不安が相対的に高い。 日本と韓国の教育社会学者は,投資としての学歴の視点から多様で持続的な研究と政策提言が必要であろう。