著者
黒木 由夫 山添 雅己 澤田 格 有木 茂
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.851-859, 2008-08-15

肺サーファクタントは,肺胞Ⅱ型細胞で合成され,肺胞腔に分泌される脂質蛋白質複合体で,その物理化学的表面活性作用により肺胞虚脱を防ぐことにより安定な呼吸を維持する生理活性物質である.肺は常に外界に開放しているので,肺サーファクタントによる生体防御機能は重要である.肺サーファクタント蛋白質のSP-AとSP-DはC型レクチンのコレクチンに属しており,レクチンドメインとコラーゲン様ドメインを有するハイブリッド分子で,肺における自然免疫機能を担っている.in vivoおよびin vitroの研究により,肺コレクチンによる免疫調節機能の分子機構が明らかになってきた.
著者
黒木 由夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.488-489, 2014-05-01

はじめに─コレクチンとは コレクチンは,コラーゲン様ドメインとC型レクチンドメインという特徴的な2つの構造を有しているので,ハイブリッド蛋白質といわれる.分泌型コレクチンには,肺コレクチンの肺サーファクタント蛋白質A(surfactant protein A,SP-A)とSP-D(surfactant protein D),およびマンノース結合レクチン(mannose-binding lectin,MBL)が属している.蛋白質構造上のもう1つの特徴は,多量体を形成することである.SP-AとMBLは,3量体が4~6個集合した花束様構造を,SP-Dは3量体が4個集合した十字架様構造を有する巨大分子である.
著者
佐野 仁美 黒木 由夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.8, pp.650-656, 2000-12-25 (Released:2016-10-15)
参考文献数
13

肺は気管支末端に約3億個の肺胞を有し, 呼吸という生命維持に必須な生理機能を担っている。肺サーファクタントは肺胞II型細胞で合成, 肺胞腔に分泌されて肺胞の全表面を覆う脂質-蛋白質複合体(リポ蛋白質)である。サーファクタントの機能発現には, 特異的アポ蛋白質が必須である。親水性アポ蛋白のSP-AとSP-Dは, C型レクチンのコレクチン・サブグループに属する。これらの蛋白質は気道-肺胞系における生体防御作用, 特に, 自然免疫の担い手として機能している。SP-Aは肺サーファクタントアポ蛋白質の中で最も多く存在するアポ蛋白で, 生体防御レクチンとして多彩な機能が明らかにされつつある。SP-Aは, グラム陰性菌, カリニ原虫やインフルエンザウィルス等の病原微生物に結合するとともに, マクロファージとも相互作用を有する。C1q受容体やエンドトキシン受容体(CD14)のリガンドとしても機能し, エンドトキシンにより惹起される細胞応答を制御することも明らかにされた。記憶と特異性によって感染を防御する獲得免疫と違って, 自然免疫は, 感染に対して直ちに反応して, 異物の認識と排除を行う生体防御システムである。近年, HIV感染症, エイズや悪性腫瘍時における獲得免疫の破壊による感染症が増加する中, 臨床医学においてもFirst Line Defenseとして働く自然免疫の重要性が注目されている。
著者
高橋 弘毅 黒木 由夫 白鳥 正典 千葉 弘文 工藤 和実 黒沼 幸治
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は急性肺障害でのToll様受容体(TLRs)の役割を明確にし、肺コレクチン、SP-Aによる抑制効果を臨床薬に応用する基盤的研究である。ブレオマイシン(BLM)投与SP-A ノックアウトマウスは野生型よりも死亡率が高く、肺内炎症性サイトカイン産生が増強された。BLM刺激でラット肺胞マクロファージから炎症性サイトカインが誘導され、SP-A添加で有意に抑制された。sTLR2遺伝子導入HEK293細胞では、BLM刺激でNF-kBが誘導された。BLMはsTLR2と直接結合し、それはSP-Aで阻害された。以上より、BLM誘導シグナルはTLR2依存性で、肺コレクチンはその阻害効果をもつことが示された。