著者
曽宮 正晴 黒田 俊一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.35-43, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2

核酸医薬の本格的実用化には、生体内標的へ高効率で送達する安全なナノキャリアの開発が不可欠である。これまでは主にカチオン性キャリアが核酸医薬に使用されているが、電荷に由来する細胞毒性、生体内での動態と安定性に問題があった。一方で、非カチオン性キャリアは生体適合性が高く、生体内での動態や安定性も制御しやすく好ましいが、核酸分子の効率的な内封法の開発が必要であった。本稿では、各種の非カチオン性キャリアによる核酸医薬送達技術について紹介するとともに、最近筆者らが開発した簡便で高効率な非カチオン性リポソームへのsiRNA内封法とそれを用いたsiRNA送達技術を概説する。
著者
黒田 俊一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.251-258, 2017-09-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
5

2001年に経済産業省より「大学発ベンチャー1000社計画」が発表され、2004年末には約1,000社、2005年末には約1,500社が設立された。そのなかには、創薬系ベンチャーが大きなグループを形成し、DDS技術に特化したベンチャーも数多く存在したが、現在まで存続するものは少なく、存続していても創薬事業を放棄していることが多い。また、2011年以降、大学発ベンチャー設立が再燃しているが、IT系ベンチャーが主であり、DDS技術を含めた創薬系ベンチャーは少ないままである。本稿では、筆者らが2002年に設立したDDS技術をコアとする創薬系ベンチャーの現在までの経緯を概説し、アカデミア発創薬系ベンチャー(特にDDS技術系)の起業化・事業化の課題を指摘した後、今後の発展につながる提言を行いたい。
著者
黒田 俊一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

我々は B 型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原 L タンパク質粒子が中空ナノ粒子であり、ヒト肝臓特異的に感染できる性質を有することを利用して、非ウイルス性DDS ナノキャリア「バイオナノカプセル(BNC)」を開発した。マウス静脈内に投与されたBNC は細網内皮系(RES)に富む臓器を避けつつ、標的組織まで効率よく到達することができた。本研究では、ナノ医薬品の表面をアルブミンでコートすることにより血中半減期を延長することができることから、我々は BNC 表層にある重合血清アルブミンレセプター(PAR)がマウス肝臓の RES を回避するのに有効であることを証明した。その結果は、BNC のみならず HBV が、本来 RES回避機構を有することを強く示唆していた。そこで、PAR ペプチドの表面修飾は、次世代ナノ医薬品の薬物動態および薬物力学の改善に貢献する新しい方法であるのかもしれない。