著者
石本 雄真 久川 真帆 齊藤 誠一 上長 然 則定 百合子 日潟 淳子 森口 竜平
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.125-133, 2009-06-10

本研究は,青年期女子の友人関係のあり方と心理的適応や学校適応の関連を検討することを目的とした。友人関係のあり方を心理的距離と同調性といった2側面から捉え,学校段階ごとに心理的適応,学校適応との関連を検討した。女子中学生96名,女子高校生122名を対象に友人との心理的距離,同調性,心理的適応,学校適応について測定した。その結果,表面的な友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに不適応的であることが示された。心理的距離は近く,同調性の低い友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに良好であることが示された。心理的距離は近く,同調性の高い密着した友人関係をとる者は,中学生では概して適応的であった。一方,高校生で密着した友人関係をとる者は,学校適応においては適応的であるものの,心理的適応に関しては不適応的な結果も示した。これらの結果から,同じ青年期であっても学校段階ごとに友人関係のあり方が持つ意味が異なるということが明らかになった。高校生においては,心理的距離は近くとも同調的ではない友人関係を持つことが心理的適応にとって重要であることが示唆された。
著者
桜井 泰憲 齊藤 誠一 BOWER John R. 山本 潤
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,スルメイカを対象として,気象の寒冷・温暖レジームシフト,アリューシャン低気圧の発達に影響される冬季季節風の強さ,海面気温などによって変化する本種の再生産・加入海域の表層暖水と季節混合層深度の季節・経年的変化が,再生産-加入過程を通して,どのように資源変動へと影響しているのかを明らかにすることを目的としている.申請年度3年間の成果は以下の通りである.人工授精により得たふ化幼生を用いて,各発育段階の幼生の鉛直方向への遊泳行動を精査した.その結果,発育ステージ31以降の幼生だけが,水温18-23℃の条件下で垂直上昇遊泳し,特に19.5-23℃の狭い水温範囲で最も活発に遊泳することを確認した.そこで,スルメイカの新しい再生産仮説として,「スルメイカの再生産可能海域は,水深が100m〜500mの陸棚から斜面上の表層暖水内であり,その水温が18〜23℃,特に19.5-23℃で,中層に水温躍層が発達する海域」を提案できた.この新再生産仮説に基づいて,2000-2005年の冬生まれ群の再生産海域である東シナ海の冬季の再生産可能海域を抽出した.その結果,黒潮流軸より大陸側の東シナ海に南西に伸びた細長くて狭い陸棚斜面域と薩南海域が,スルメイカの産卵からふ化幼生の生残に最も適した海域であることが明らかにできた.さらに,ネット採集したふ化直後の1mm未満の幼生は,九州南東の黒潮内側の複雑な渦流域の表層に集積することが判明した.特に,薩南海域では黒潮の前線波動による集積と本州沿岸への受動的輸送の可能性を見出した.また,新再生産仮説に基づいて,1970-80年代の寒冷レジーム期における冬の再生産海域は著しく縮小もしくは消滅し,1980年代後半からは陸棚斜面に沿って形成されることが明らかにできた.これにより,より精度の高い気候変化に応答する再生産機構の成否の解明に,新たな研究展開の道ができた.