著者
山本 潤 黒田 徹
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.393-400, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
24

口腔・咽頭外傷は 6 歳以下の小児に多く,歯ブラシは主な原因器物のひとつである。2010年に当科を受診した歯ブラシ外傷は 5 例であり,全例入院し抗生剤静注を施行したが,3例で膿瘍形成し,いずれも排膿処置を要した。症例 1 では咽頭収縮筋内と思われる部位に膿瘍形成し,口蓋扁桃を摘出した扁桃窩より排膿した。同症例を含めた全 5 例に関し,文献的考察を交え報告する。過去の報告を調査すると歯ブラシ外傷では高い膿瘍形成率を示した。その原因として,歯ブラシは口唇や歯牙で防御されることなく外力が直接伝わるので深く刺入しやすく,そのブラシ部分には S. milleri group 等の口腔内細菌が大量に付着していることが考えられる。以上より歯ブラシ外傷では,通常膿瘍形成する組織間隙以外にも,膿瘍形成し得ると考えられた。また,同様のエピソードで膿瘍形成しない症例では,ブラシ部分ではなく柄を刺入しているケースも想定された。
著者
山本 潤 前田 眞治
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.172-179, 2018-06-25 (Released:2018-08-29)
参考文献数
19

右頭頂後頭葉の脳梗塞で着衣障害を呈した80歳代男性に対し,徴候の要因を検討する目的で,開眼と閉眼の2条件で着衣動作の分析を行った.開眼条件では,はじめの袖通し工程で,袖に腕を通すことができない徴候を認め,他の工程は問題なかった.一方,閉眼条件では,徴候を認めず,着衣可能であった.その他の評価から,前開き型に限定していること,はじめの袖通し工程で出現すること,人形に着せた場合も同様の徴候を認めることが明らかとなった.加えて,視覚的同定の問題ではない構成行為の障害も認めた.以上より,触・圧覚情報が乏しいはじめの袖通し工程で,視覚情報からの処理に基づく構成行為の問題に起因した徴候と推察された.
著者
岡本 健太郎 山本 潤 福田 光男 林田 健志 峰 寛明 大橋 正臣 田畑 真一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_388-I_393, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
6

著者らは,廃棄物を利用することで“ホタテ貝殻の人工礁”を開発した。貝殻礁は,貝殻の空隙に有機堆積物の捕食生物のための生息空間を作り,港内の有機汚染物質を除去するのに有効である.小型試験礁を用いて試した結果,設置後3年が経過しても浄化効果が持続することが確認された.そして,その過程は生態系モデルによって再現された.より大きな効果を得るため,大型ホタテ貝殻礁の設置を行った.蝟集生物量は減少していくが,それは貝殻礁中心部の海水交換不足のためと考えられた.そこで,通水孔を設けた“実用的ホタテ貝殻礁”を開発した.その結果,生物は中心部に集まり,その効果は証明された.
著者
山本 潤
出版者
日本独文学会
雑誌
ドイツ文学 (ISSN:24331511)
巻号頁・発行日
vol.154, pp.18-39, 2017-03-25 (Released:2018-03-31)

Wie es in der Offenbarung des Johannes repräsentativ ausgedrückt ist, gilt das apokalyptische Denken als ‚eine Strategie der Auslöschung der Geschichte‘, ‚eine Befreiung von Erinnerung‘ (Brokoff/Jakob 2002). Diejenige Dichtung, die in der Blütezeit der mittelhochdeutschen Literatur entstand und deren eschatologisch katastrophische Schlussszene, der Untergang der Heroen und ihrer Welt, in der neuzeitlichen Rezeption besonders starke Beachtung gefunden hat, ist das Nibelungenlied. Der Stoff dieses Werkes, die Stoffe aus der ‚heroic age‘ der Germanen nämlich, galt in einer noch weitgehend auf mündlicher Überlieferung basierenden Kultur als Medium, in dem die Erinnerungen an die großen Könige oder Kämpfer aufbewahrt waren, und es gelang, die dort beschriebenen Heldentaten und die Heldenethik zu verewigen. Solche Heldensagen enthalten oft den Untergang der Protagonisten, aber dieser Untergang selbst trägt auch zur Erinnerung der Heldentaten und der Heldenethik, die sich von der christlichen unterscheidet, bei. (View PDF for the rest of the abstract.)
著者
山本 雄大 山本 潤美
出版者
八戸学院大学
雑誌
八戸学院大学紀要 (ISSN:21878102)
巻号頁・発行日
no.57, pp.53-64, 2018-12-21

本研究の目的は,日本社会において配偶者も恋人もいないシングルへの否定的ステレオタイプを検討することである。研究1ではGreitemeyer(2009)の追試を行い,シングルのターゲットが、パートナーのいるターゲットよりも,パーソナリティ,生活満足感,身体的魅力を否定的な評価を受けることを明らかにした。さらに,研究2ではシングリズムを生み出す心理過程について検討した。本研究では,結婚願望信念がシングルに対する否定的評価を導くと仮説を立てた。その結果,結婚願望信念を強く抱く人ほどシングルの外向性を否定的に評価した。
著者
山本 潤 西山 伊佐 井上 嘉 横山 浩
出版者
日本液晶学会
雑誌
日本液晶学会討論会講演予稿集
巻号頁・発行日
no.2004, pp.270-271, 2004-09-26

We have found the new types of photonic liquid crystal, SmBP_<Iso> Phase, which shows the uniform isotropic iridescent color strongly dependent on the concentration, chirality and temperature for the first time. SmBP_<Iso> has both the finite local order parameter of the helix of the orientation and the smectic layer simultaneously, but spontaneously achieves complete isotropic nature in optical wave-length without any discontinuity in mesoscopic length scales. It was confirmed by visco-elastic measurement that the SmBP_<Iso> should be originated from the anomalous softening of the smectic layers due to the freezing effect on the molecular fluctuation induced by the introduction of the connection of the molecules. We expected that the random distribution of the distinct helix in 3-dimensional space can be stabilized by the apparent elastic long-range interaction "field" produced by the deformation of the smectic order. We have also first recognized two different types of thermodynamic phase transitions among SmBP phases, order-disorder transition for the spatial arrangement of the helix and the transition of the connectivity of smectic layers, which are attributed to the transition of the spatial distribution of the both orders, not belong to the order parameters themselves.
著者
山本 潤二 村上 斉 砥出 勝雄 味岡 廣房 三宅 秀和
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement5, pp.149-158, 1988-10-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

新しいセフェム系抗生物質であるTHR-221の中枢神経系への影響をマウス, ラット, ウサギ, ネコおよびイヌを用いて検討した。THR-221 1500mg/kg, i. v. までの投与において, マウスの自発運動量, hexobarbital睡眠, 電撃・pentylenetetrazolけいれん, 協調運動, 酢酸stretchingおよびラットの正常体温, 条件回避反応に対して影響は認められなかった。また同用量の投与において, ウサギの自発脳波, 音・光刺激反応およびネコの脊髄反射に対しても影響は認められず, イヌにおいて1500mg/kg, i. v. でのみ軽度の嘔吐が観察されただけであった。以上の結果から, THR-221の中枢作用は弱いことが分り, THR-221は中枢神経系への影響が少ない抗生物質であると考えられる。
著者
山本 潤 西山 伊佐 横山 浩
出版者
一般社団法人 日本液晶学会
雑誌
日本液晶学会討論会講演予稿集 2003年 日本液晶学会討論会 (ISSN:18803490)
巻号頁・発行日
pp.283-284, 2003-10-14 (Released:2017-01-10)

Chiral TWIN molecules are consists of two equivalent monomer liquid crystal molecules connected by hydrocarbon spacers. In case that the spacer length is just twice as side-chain length of the monomer, the mixture of chiral twin/monomer system has complete spatial commensurability. We have found for the first time that the mixing of the small amount of the TWIN molecules strongly destabilize the smectic phase of the monomer and induce new types of TGB modulated phases, because the TWIN molecules strongly freeze the fluctuation motions of the monomer molecules, which is the origin of the excluded volume interaction to stabilize the smectic layers themselves. Spatial commensurability and strong lateral attractive interaction play important roles to the fluctuation freezing effect. We have investigated the chiral twin/monomer by polarizing microscope, X-ray diffraction, viscoelastic measurement and dynamic light scattering.
著者
小林 親司 高西 陽一 山本 潤
出版者
一般社団法人 日本液晶学会
雑誌
日本液晶学会討論会講演予稿集 2009年 日本液晶学会討論会 (ISSN:18803490)
巻号頁・発行日
pp.193, 2009 (Released:2011-04-01)

液晶におけるフォトニック効果は自発的に構造が作られる点や外部からの刺激によって物理的性質に変調が得られる点において興味深く、研究が盛んである。本研究では水に数パーセントの界面活性剤を添加した2成分系の膨潤リオトロピックラメラ相をフォトニックデバイスとしての応用を目標に研究を行っている。ラメラ相の中でも数百nmに亘る周期構造は限られた試料にしか現れず、この周期構造を安定化することが本研究の要点である。
著者
前田 佳一 山本 潤 江口 大輔 桂 元嗣 木戸 繭子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本プロジェクトは文学作品において固有名が有する機能について、中世から現代までのドイツ語圏文学における人名、地名を対象に、個々の作品のケーススタディを通じて検証した。その際には、とりわけ<神話化>ならびに<錯覚形成>という機能に着目した。結論として、文学的固有名には<産出性>、<虚構性>、<否定性>という三つの契機が認められることが明らかとなった。
著者
桜井 泰憲 齊藤 誠一 BOWER John R. 山本 潤
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,スルメイカを対象として,気象の寒冷・温暖レジームシフト,アリューシャン低気圧の発達に影響される冬季季節風の強さ,海面気温などによって変化する本種の再生産・加入海域の表層暖水と季節混合層深度の季節・経年的変化が,再生産-加入過程を通して,どのように資源変動へと影響しているのかを明らかにすることを目的としている.申請年度3年間の成果は以下の通りである.人工授精により得たふ化幼生を用いて,各発育段階の幼生の鉛直方向への遊泳行動を精査した.その結果,発育ステージ31以降の幼生だけが,水温18-23℃の条件下で垂直上昇遊泳し,特に19.5-23℃の狭い水温範囲で最も活発に遊泳することを確認した.そこで,スルメイカの新しい再生産仮説として,「スルメイカの再生産可能海域は,水深が100m〜500mの陸棚から斜面上の表層暖水内であり,その水温が18〜23℃,特に19.5-23℃で,中層に水温躍層が発達する海域」を提案できた.この新再生産仮説に基づいて,2000-2005年の冬生まれ群の再生産海域である東シナ海の冬季の再生産可能海域を抽出した.その結果,黒潮流軸より大陸側の東シナ海に南西に伸びた細長くて狭い陸棚斜面域と薩南海域が,スルメイカの産卵からふ化幼生の生残に最も適した海域であることが明らかにできた.さらに,ネット採集したふ化直後の1mm未満の幼生は,九州南東の黒潮内側の複雑な渦流域の表層に集積することが判明した.特に,薩南海域では黒潮の前線波動による集積と本州沿岸への受動的輸送の可能性を見出した.また,新再生産仮説に基づいて,1970-80年代の寒冷レジーム期における冬の再生産海域は著しく縮小もしくは消滅し,1980年代後半からは陸棚斜面に沿って形成されることが明らかにできた.これにより,より精度の高い気候変化に応答する再生産機構の成否の解明に,新たな研究展開の道ができた.